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経済や対外戦略と並ぶ「膨張中國」の象徴は軍事力。人民解放軍は著々と戦力を拡充している。南シナ海や東シナ海などの紛爭をにらみ、増額分の多くが??諄I軍などの最新鋭裝備に充てられている。寫真は人民解放軍。
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経済や対外戦略と並ぶ「膨張中國」の象徴は軍事力。人民解放軍は著々と戦力を拡充している。 中國の國防費は1989年から過去25年間で、リーマンショック後の2010年以外は常に2ケタ増のすさまじい増強ぶり。14年の國防予算は前年実績比12.2%増の8082億元(約約16兆円)と初めて8千億元の大臺に乗った。03年の1907億元から11年で4倍以上に膨らんだことになる。國防費の公表額は引き続き米國に次ぐ世界2位。日本の防衛(wèi)関係費は、14年度予算案で総額4兆8848億円と13年度予算と比べ2.8%、1310億円増えたが、中國は日本の3倍以上に達する。南シナ海や東シナ海などの紛爭をにらみ、増額分の多くが海空両軍などの最新鋭裝備に充てられている。
【その他の寫真】
中國の國防費には兵器の開発費用や他國からの兵器調(diào)達費用などは含まれていないため、実際の軍事費関連費は公表額の2?3倍というのが通説だ。米國の2014會計年度(13年10月?14年9月)の國防予算(戦費は除く)は前年を下回る約5266億ドル(約60兆円)。深刻な財政難を背景に毎年圧縮されている。今後も國防予算の縮減を余儀なくされる見通しで、米中両國の國防予算が數(shù)年後には逆転する可能性さえ否定できない。
◆マッハ5以上の極超音速滑空ミサイル
現(xiàn)在の米中の軍事力比較では、圧倒的に米軍が優(yōu)位にあるが、技術(shù)的な優(yōu)位は低下傾向にある。 中國はマッハ5以上で飛行する極超音速滑空ミサイルを開発、劣勢な核兵力を補う切り札になると位置付けている。中國はこのミサイルを搭載できる原子力潛水艦を開発し就航している。東シナ海は淺いので探知されやすく潛水艦の活動には向かないが、南シナ海は深いので、港からすぐに深海に潛ることができ、十分活用が可能だ。
中國人民解放軍では従來陸海軍が重視されてきたが、中國指導(dǎo)部が空軍を予算面で重視する姿勢を示し、空軍は勢いづいている。ソマリア沖での海賊対処やリムパック(環(huán)太平洋共同軍事演習(xí))などにより他國軍との交流を通じて習(xí)熟度が高い海軍と違って、空軍パイロットの操縦技量は低く、國際的に交流の機會が少ないので常識を知らず、操縦士養(yǎng)成訓(xùn)練も戦闘機の増加に伴っていない。海上自衛(wèi)隊艦船へのレーダー照射(13年2月)や自衛(wèi)隊機への異常接近(14年5月)などはパイロットが獨斷でやったと思われる。空軍重視の姿勢を示したのも、空軍を不満の狀態(tài)に置くのは危険との認(rèn)識があったためとみられている。
◆習(xí)主席、人民解放軍を掌握
習(xí)近平國家主席は人民解放軍の制服組トップだった徐才厚(江沢民派)を「反腐敗」の象徴として黨籍はく奪処分にした一方、江沢民元國家主席の影響を受けた者すべての粛清は不問に付した。象徴的な人物を叩くことによって他の者に忠誠を誓わせ、習(xí)主席は人民解放軍を掌握したのである。
日本と中國の戦力は単純には比較できないが、數(shù)字だけでみると歴然。自衛(wèi)隊員の約23萬人に対し、人民解放軍は10倍の約230萬人。戦闘機は日本の約260機に対し中國は565機と2倍超。艦艇も日本の140隻の8倍もの1090隻を保有。潛水艦は日本の16隻に対し中國63隻。陸上でも、戦車は日本の640両に対し中國は8200両。質(zhì)はともかく數(shù)の上では勝負(fù)にならない。
増強された中國軍事費の大半は海軍に充てられている。質(zhì)量ともに年々拡充され艦艇1090隻のうち、最も戦略性の高い駆逐艦?フリゲートが約80隻に上る。海軍兵員は約25萬5000人で、海兵隊も約1萬人に達する。
歐米?日本の先進國が財政難に陥る中で、中國の軍事力増強は際立っている。清朝初期までの「栄光」と、アヘン戦爭以來百數(shù)年余りの列強に蹂躙された「屈辱」の歴史がトラウマとなっている?!溉酩ふ撙贤搐つ郡嗽猡Α埂袱坤榻U済力に見合う強い國防力を保持しなければならない」という理屈で軍事力増強にまい進しているのだ。軍事力増大批判には対し、中國政府幹部は「自國防衛(wèi)のための軍事力であり、かつての歐米諸國や日本のような対外侵略には使わない」と抗弁している。
◆中國、南シナ海の実効支配を著々強化
近年の中國の戦略的海洋進出は実に不気味だ。中國は尖閣諸島のある東シナ海だけでなく、南シナ海でも領(lǐng)海、排他的経済水域(EEZ)をめぐり、フィリピン、ベトナムなどと係爭中だ。中國はまず漁船を出漁させ、これを保護する名目などで漁業(yè)監(jiān)視船や巡視船、軍艦を投入し、実効支配を広げてきた。中國は20年までに巡視船を5百隻以上へ倍増、一部を東シナ海に回す方針。さらに南沙(英語名スプラトリー)諸島に、戦略拠點として戦略的自治體「三沙市」を設(shè)立、市長を選出して実効支配強化に乗り出した。
こうした中、中國が西沙諸島で最大の永興島の周辺を埋め立て、1年4カ月あまりで同島の面積を4割も広げたことが最近判明した。永興島は中國の海南島沖約350キロメートル、ベトナム沖約400キロメートルにある南シナ海で最大級の島で、中國が1970年代から実効支配を続けている。中國は永興島を「南シナ海における軍事、海洋政策の中心」と位置づけ、既に中國軍兵士や漁民など千人あまりが居住しているとみられる。
中國は現(xiàn)在、フィリピンなども領(lǐng)有権を主張する南シナ海の南沙諸島の永暑礁でも開発を推進。埋め立てて滑走路向けの用地を造成しており、フィリピンが反発している。中國の習(xí)近平國家主席は「領(lǐng)有権を巡る周辺國との摩擦は話し合いで解決する」と再三強調(diào)しているが、実際には「核心的利益」とする南シナ海海域での実効支配を強化している。
中國の海洋進出は、この地域で船舶の航行はもちろん領(lǐng)土や資源の帰屬を含む地域秩序をめぐる論議で主導(dǎo)権を握ることを目的にしている。中國はその手段として水上艦艇、潛水艦、戦闘機、爆撃機、巡航ミサイル、弾道ミサイル、対艦弾道ミサイル(ASBM)などを増強あるいは開発。自國の周辺に「第一列島線」と「第二列島線」という二つの防衛(wèi)ラインを設(shè)けて、南シナ海、東シナ海、黃海を聖域化しようとしているのだ。
◆軍事よりも環(huán)境?福祉対策に注力を
中國では環(huán)境?福祉問題をはじめとする課題が山積しており、巨額資金を軍事費に充てるより、その解決策に回す方が得策だろう。習(xí)主席も言明しているように、領(lǐng)土問題は関係國との話し合いで解決し、共同開発などを推進するべきだ。中國の平和的な臺頭が望まれる。(八牧浩行)
■筆者プロフィール:八牧浩行
1971年時事通信社入社。 編集局経済部記者、ロンドン特派員、経済部長、常務(wù)取締役編集局長等を歴任。この間、財界、大蔵省、日銀キャップを務(wù)めたほか、歐州、米國、アフリカ、中東、アジア諸國を取材。英國?サッチャー首相、中國?李鵬首相をはじめ多くの首脳と會見。東京都日中友好協(xié)會特任顧問。時事総合研究所客員研究員。著?共著に「中國危機ー巨大化するチャイナリスクに備えよ」「寡占支配」「外國為替ハンドブック」など。趣味はマラソン(フルマラソン12回完走=東京マラソン4回)、ヴァイオリン演奏。
八牧浩行
2014/12/31
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