2016年4月4日、現(xiàn)代アメリカ政治が専門の渡辺將人北海道大學(xué)準(zhǔn)教授が「米國大統(tǒng)領(lǐng)選挙」をテーマに日本記者クラブで講演した。ヒラリー?クリントン候補(bǔ)について、大統(tǒng)領(lǐng)選の構(gòu)図が「エスタブリッシュ対アウトサイダー」の図式になる中で、「苦戦している」と指摘。その背景として、夫のビル?クリントン大統(tǒng)領(lǐng)時(shí)代の北米自由貿(mào)易協(xié)定（NAFTA）や共和黨政権下のイラク戦爭など歴代政権の政策に対する、國民の反発が強(qiáng)く、「ヒラリー氏の豊富な実績と経験が裏目に出ている」と語った。渡辺氏は2000年の上院議員選挙で、ヒラリー?クリントン陣営の選挙スタッフとして働いた経験があり、実証的な選挙分析に定評がある。発言要旨は次の通り。

今回の米大統(tǒng)領(lǐng)選挙の特徴の一つは不動産王トランプ共和黨候補(bǔ)の躍進(jìn)だが、もう一つ指摘しなければならないのは、ヒラリー?クリントン民主黨候補(bǔ)の意外な苦戦である。

子どもの権利やフェミニズムを擁護(hù)する人権派弁護(hù)士、ファーストレディー、連邦上院議員、國務(wù)長官など、初代大統(tǒng)領(lǐng)のジョージ?ワシントン以來と言われる豊富な実績と経験が強(qiáng)みになるはずだが、むしろ裏目に出ている。

大統(tǒng)領(lǐng)選を勝ち抜くために必要な要素は、「玉」＝候補(bǔ)者の資質(zhì)、「風(fēng)」＝政治経済外交情勢の流れ、「技」＝選挙キャンペーン――の3點(diǎn)だが、このうちクリントン氏に欠けているのは「風(fēng)」だ。

「YES?WE?CAN」を合言葉に初のアフリカ系大統(tǒng)領(lǐng)としてオバマ氏が初當(dāng)選した時(shí)ほどには初の女性大統(tǒng)領(lǐng)への期待は盛り上がっていない。マイノリティ大統(tǒng)領(lǐng)は既に誕生し、アピール材料にならず、「內(nèi)向き」な外交トレンドが支持され、クリントン氏が得意とする「価値観外交」「人権外交」への國民の理解も低い。

イラク戦爭に賛成し、巨額の戦費(fèi)を浪費(fèi)、多くの米兵犠牲者を出した歴代政権は、多數(shù)の國民の反発を招いた。世論は米兵に犠牲が出る大規(guī)模地上軍展開に反対している。オバマ大統(tǒng)領(lǐng)の政策から距離を置けば支持を失うし、引き継げば獨(dú)自性を打ち出せない。醫(yī)療保険制度改革やLGBT（両性愛者）の権利促進(jìn)などクリントン氏の得意分野もオバマ政権中に推進(jìn)された?！革L(fēng)」が吹かない中でクリントン陣営はいまだに有権者への確たるアピール材料を打ち出せないでいる。

サンダース氏の出馬で、対比構(gòu)図がエスタブリッシュ対アウトサイダーの図式になったこともマイナス要因。夫のビル?クリントン時(shí)代の1993年に調(diào)印されたNAFTA（ 米國、カナダ?メキシコ3カ國による域內(nèi)貿(mào)易自由化取り決め）によって、米國労働者の職が奪われたと批判されている。NAFTAへの否定的な國民感情が、反TPP（太平洋連攜協(xié)定）の感情にもつながっている。労働組合、環(huán)境保護(hù)団體、消費(fèi)者団體がTPP反対運(yùn)動を展開する中、サンダース候補(bǔ)への支持の抑止を狙い、TPPに対し否定的な見解に転じた。しかし、國民の多くは過去20年間以上にわたり、NAFTAでは労働約束が反故にされたと批判、「TPPではもう騙されない」という感情にさらされている。共和黨のトランプ、クルーズ両候補(bǔ)もTPPに反対しており、苦しい立場にさらされている。

今回の大統(tǒng)領(lǐng)予備選では、これまで予備選に無関心だった無黨派層が多數(shù)參加している點(diǎn)が大きな特徴。これら新規(guī)參入層の支持は、共和黨ではトランプ候補(bǔ)に、民主黨ではサンダース候補(bǔ)に寄せられた。その背景には、ビル?クリントン元大統(tǒng)領(lǐng)に代表される穏健派「ニュー?デモクラット」の勢力減退と「新たな中道リベラル」の臺頭がある。

「新たな中道リベラル」には、（1）サンダース候補(bǔ)の支持者に代表される「アウトサイダーな左派勢力」、（2）労働組合や環(huán)境団體などに代表される「リベラル派のエスタブリッシュメント」、（3）ロビイストやニュー?デモクラットなどの「企業(yè)系の民主黨支持者」の3つの流れがある。クリントン氏はオバマ大統(tǒng)領(lǐng)やサンダース氏との相違を打ち出しつつ、すべての勢力から支持を得ねばならならないが、思うように支持を得られていない。米國政治を牛耳ってきたエスタブリッシュメントに対する大衆(zhòng)の反発は根強(qiáng)く、その象徴と見られがちな點(diǎn)もクリントン氏にとってはマイナス材料となっている。（八牧浩行）

■筆者プロフィール：八牧浩行

1971年時(shí)事通信社入社。 編集局経済部記者、ロンドン特派員、経済部長、常務(wù)取締役編集局長等を歴任。この間、財(cái)界、大蔵省、日銀キャップを務(wù)めたほか、歐州、米國、アフリカ、中東、アジア諸國を取材。英國?サッチャー首相、中國?李鵬首相をはじめ多くの首脳と會見。東京都日中友好協(xié)會特任顧問。時(shí)事総合研究所客員研究員。著?共著に「中國危機(jī)ー巨大化するチャイナリスクに備えよ」「寡占支配」「外國為替ハンドブック」など。趣味はマラソン（フルマラソン12回完走＝東京マラソン4回）、ヴァイオリン演奏。