2016年4月30日、長崎県対馬市の寺から韓國人グループが盜んだ仏像の返還問題が新たな局面に入った。「かつて所蔵していたが、略奪された」と主張する韓國の寺がこのほど、韓國政府を相手取り、仏像の引き渡しを求め提訴。3年前、盜品の返還を韓國の裁判所が拒むという前代未聞の経緯をたどった事態(tài)の解決は、さらに遠(yuǎn)のいた。

盜まれたのは、対馬市の海神神社の國指定重要文化財(cái)「銅造如來立像」と観音寺の県指定有形文化財(cái)「観世音菩薩坐像」の2體。12年10月に盜難が発覚。翌13年1月に韓國警察當(dāng)局が竊盜団を摘発して2體を回収した。このうち、「銅造如來立像」は紆余（うよ）曲折を経て、15年7月、対馬市に戻った。

しかし、「観世音菩薩坐像」については「過去、日本に不當(dāng)に略奪された」と主張する韓國中部?瑞山の浮石寺が日本への返還差し止めを請求。13年2月、大田地裁が差し止めを認(rèn)める仮処分を決定した。

今回、大田地裁に新たな訴訟を起こしたのも浮石寺。韓國メディアによると、「仏像が日本に渡った経緯を調(diào)べた結(jié)果、14世紀(jì)に略奪された可能性が高いことが分かった」などとして、大田の國立文化財(cái)研究所に保管されている仏像の引き渡しを求めている。

韓國の法律では、差し止めの仮処分は執(zhí)行から3年間、本訴訟が起こされなければ、政府が仮処分の取り消しを申請できる。日韓関係の修復(fù)を進(jìn)める韓國政府は仏像の返還を視野に入れているとされ、提訴は返還を阻止する狙いとみられる。

「観世音菩薩坐像」について、観音寺は朝鮮半島でつくられたとしながらも、朝鮮國王から贈(zèng)られた衣や交易でもたらされた渡來仏が対馬に數(shù)多く存在するなどと指摘?！竵栂瘠享n國との友好関係の証」であり、観音寺が數(shù)百年にわたり本尊として祭ってきたことを強(qiáng)調(diào)して所有権を主張し、日韓両國の寺の言い分は真っ向から対立している。

盜難被害に遭った仏像の返還は、日韓関係に刺さった「トゲ」の一つ。返還を差し止めた大田地裁の異例の判斷は、12年8月の李明博（イ?ミョンバク）大統(tǒng)領(lǐng)（當(dāng)時(shí)）による竹島（韓國名?獨(dú)島）上陸や天皇陛下への謝罪要求発言、13年3月の樸槿恵（パク?クネ）大統(tǒng)領(lǐng)の「（日本と韓國の）加害者と被害者という歴史的立場は1000年の歴史が流れても変わることはない」発言などと重なって、日本國內(nèi)で韓國への不信感を高める要因にもなった。

聯(lián)合ニュースによると、韓國文化財(cái)庁はこのほど、仏像に関して「中世に日本に略奪されたと斷定するのは難しい」との調(diào)査結(jié)果を出した。日本政府は仏像の返還を韓國政府に求め続けている。返還に向けた環(huán)境は整いつつあったが、その是非が司法の場に再度、持ち込まれたことで早期実現(xiàn)は困難になった。（編集/日向）