八牧浩行 2016年5月5日(木) 9時20分
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4日、米大統(tǒng)領選の共和黨候補指名爭いは、不動産王ドナルド?トランプ氏の指名獲得が確実になった。トランプ氏は暴言を繰り返し、米大統(tǒng)領には似つかわしくないキャラクターとされるが、米國民は何故このような人物に熱狂するのか?寫真はホワイトハウス。
2016年5月4日、米大統(tǒng)領選の共和黨候補指名爭いは、不動産王ドナルド?トランプ氏の指名獲得が確実になった。トランプ氏は、「メキシコ國境に壁を作って移民を締め出せ」「イスラム教徒の入國を禁止せよ」「日本や中國を叩きのめす」などと暴言を繰り返している。米大統(tǒng)領には似つかわしくないキャラクターとされるが、米國民は何故このような人物に熱狂するのか?
『反知性主義:アメリカが生んだ「熱病」の正體』を刊行した森本あんり國際基督教大學教授は、米政治には転換期に「反知性主義」が登場する伝統(tǒng)があると指摘。トランプ人気は「米國內外での指導力に陰りが見える中で、何も変えられない政治エリートに対する大衆(zhòng)の反発の表れ」と分析した。
森本氏によると、古くは、ドル紙幣に肖像として使われ、今でも人気の高い19世紀前半のジャクソン大統(tǒng)領が「反知性主義」の代表格。戦後もアイゼンハワー大統(tǒng)領、レーガン大統(tǒng)領、ジョージ?ブッシュ大統(tǒng)領など、大衆(zhòng)の支持を得たいわば政治素人が、「主流派」の知的エリートを下して政治をリセットする歴史が繰り返されてきた。知性そのものではなく、知性と権力との結びつきへの反発や、知的特権階級への「異議申し立て」とも言える。また誰もが平等にゼロから出発して自分の力で成功する「アメリカン?ドリーム」への回帰と見ることもできる。
トランプ人気は「この世の成功は神の祝福の証し」という米國獨特のキリスト教の論理にも裏打ちされている。(1)神は従う者を祝福する、(2)自分は成功している、(3)従って自分は神に認められている―という単純な「三段論法」に依拠している。それ故に自力で富と名聲を築いたトランプ氏のような人物がキリスト教保守派の支持も得られている。キリスト教の伝道集會のような大統(tǒng)領予備選の形式も、トランプ氏への熱狂につながっている、と言う。
一方、民主黨の大統(tǒng)領選びはヒラリー?クリントン候補が有力だが、サンダース氏の前に意外に苦戦。現(xiàn)代アメリカ政治が専門の渡辺將人北海道大學準教授によると、大統(tǒng)領選がトランプ氏とクリントン氏の爭いになった場合、「アウトサイダー対エスタブリッシュ」の図式になり、トランプ氏が善戦する可能性があると言う。その背景として、夫のビル?クリントン大統(tǒng)領時代の北米自由貿(mào)易協(xié)定(NAFTA)や共和黨政権下のイラク戦爭など歴代政権の政策に対する、國民の反発が強く、「ヒラリー氏の豊富な実績と経験が裏目に出る」と見る。
米國政治を牛耳ってきたエスタブリッシュメントに対する大衆(zhòng)の反発は根強く、その象徴と見られがちな點もクリントン氏にとってはマイナス材料となっているようだ。
トランプ氏は外交でも経済でも「米國第一」の原則を掲げている。米國の利益にならない海外の米軍を縮小。日米安保條約は「不公平だ」として、在日米軍の駐留経費で日本の負擔を大幅に増やさなければ撤収すると表明している。一方で中國、ロシアとの関係改善を唱え、外交安全保障政策の転換を志向、米國伝統(tǒng)の「一國主義」に回帰しているようだ。米國利益至上主義で內向きの考え方は、環(huán)太平洋連攜協(xié)定(TPP)をはじめとする自由貿(mào)易協(xié)定を敵視する反グローバル主義や保護貿(mào)易主義へ向かう可能性が高い。
政治の素人だったジャクソン大統(tǒng)領は、19世紀の連邦國家形成期に諸改革に取り組み、成功した。映畫俳優(yōu)だったレーガン大統(tǒng)領は當初政策手腕を危懼する聲も多かったが、優(yōu)れたブレーンの聲を聞き入れ、実績を殘した。國際情勢が一段と複雑化し、米國経済が衰退している現(xiàn)代で、同様の成功は保証されない。
トランプ氏が本選で當選し大統(tǒng)領になれば世界最大の軍事大國の最高司令官になるが、軍と衝突する恐れもある。著名なブレーンもおらず、思いつきで過激発言を繰り返しているように見えるトランプ氏。「大統(tǒng)領になれば現(xiàn)実的な政策に転じる」と予想する聲も一部にあるが、異端の大統(tǒng)領候補から目が離せない。(八牧浩行)
■筆者プロフィール:八牧浩行
1971年時事通信社入社。 編集局経済部記者、ロンドン特派員、経済部長、常務取締役編集局長等を歴任。この間、財界、大蔵省、日銀キャップを務めたほか、歐州、米國、アフリカ、中東、アジア諸國を取材。英國?サッチャー首相、中國?李鵬首相をはじめ多くの首脳と會見。東京都日中友好協(xié)會特任顧問。時事総合研究所客員研究員。著?共著に「中國危機ー巨大化するチャイナリスクに備えよ」「寡占支配」「外國為替ハンドブック」など。趣味はマラソン(フルマラソン12回完走=東京マラソン4回)、ヴァイオリン演奏。
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