<英國EU離脫>サッチャー首相やダイアナ妃の熱い思い、今は昔=民族、國境を超越する「ユートピア」の行方は?

八牧浩行    2016年6月26日(日) 9時0分

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英國民投票で、歐州連合(EU)からの離脫を求める票が過半數(shù)を占めた。爭いのない共同體を目指してきたEUにとって、初めて経験する加盟國の離脫。この出來事が“理想國家”“実験國家”づくりの挫折につながらないよう望みたい。寫真はロンドン。

「歐州統(tǒng)合」は最大の試練に直面した。英國の國民投票で、歐州連合(EU)からの離脫を求める票が過半數(shù)を占めた。第2次世界大戦後、6カ國で出発し28カ國まで拡大を続けてきたEUにとって、初めて経験する加盟國の離脫。英國にはEU內(nèi)にとどまり、自由と多様性を重んじる“理想連合”を主導してほしかっただけに殘念だ。1980年から85年まで通信社のロンドン特派員を務め、歐州各地を取材した日々のことが想い出される。

ダイアナ妃の微笑み

當時、私が當時のサッチャー首相を取材した際、「日本の優(yōu)秀な技術を?qū)毪工毪长趣摔瑜戤b業(yè)を再生したい」と熱っぽく語っていたのが印象に殘っている。実際、「鉄の女」と呼ばれた持ち前の強い意志で、日産自動車、トヨタ、ホンダやNEC、ソニー、松下電器産業(yè)(現(xiàn)パナソニック)など多くの日本企業(yè)工場を誘致した。日本企業(yè)も歐州共通市場への輸出関稅「ゼロ」が魅力だったのは言うまでもない。

「日本的な家族主義的な経営こそ産業(yè)再生のカギ」というのがサッチャー首相の口癖。英國企業(yè)でも、従業(yè)員の「誕生會」や家族ぐるみの「運動會」が開かれたりした。英國の労使は対立が激しかったから日本の労使協(xié)調(diào)生産システムに憧れたのだろう。

日産自動車をはじめ工場の著工式や開所式を現(xiàn)地に行って數(shù)多く取材したが、どのセレモニーでもエリザベス女王をはじめとする王室の賓客が參列、テープカットした。英國ぐるみの熱の入れようだった。

ソニーのウェールズ?カラーテレビ第2工場の開所式では、今は亡きダイアナ妃がソニーの帽子を被って「王室?guī)诟嫠工趣筏茞蹕嗓蛘瘠辘蓼い皮い?。私の橫に立っていたダイアナ妃は大きな碧い眼で微笑みかけ、些細な問いかけにも気さくに答えていたことを思い出す。エジンバラ公フィリップ殿下(エリザベス女王の夫君)はロンドン市內(nèi)でのパーティで私が日本人とわかると聲をかけてくれ、「日本は素晴らしい國。イギリスにない管理システム、技術を持っている。かつての日英同盟の精神で協(xié)力していきたい」と穏やかな口調(diào)で話した。

當時、日本の大手銀行、証券、企業(yè)のロンドン支店?事務所は年々規(guī)模を拡大。未進出だった地方銀行?中堅企業(yè)などが新規(guī)に開設したので、毎週のように都心の豪華ホテルで「オープン記念パーティ」が開催されていた。地元紙から「東洋の新興國の怒濤の進出」(地元紙)と揶揄されたほどである。ロンドンの繁華街ピカデリーサーカス界隈のブランド店や有名ゴルフ場が日本企業(yè)グループの傘下に入ったのもこのころである。

日本をはじめ世界各國から英國への投資が活発なのはEUに加盟が前提となっている。日本の英國進出企業(yè)は現(xiàn)在1000社以上。いずれも共通市場が狙いだ。

◆原點は戦爭のない地域づくり

ドイツとフランスは、鉄鉱石や石炭資源の多いルール地方など國境地帯の帰屬をめぐり2度の大戦を戦い、おびただしい死傷者を出した。憎しみ合い戦火を交える愚かしさを繰り返さないよう、第2次大戦後の1953年、戦爭の原因になった鉄鋼、石炭を共同管理することを目的につくられたのが歐州石炭鉄鋼共同體だ。この共同體を核に「戦爭のない地域づくり」を目指して58年に歐州経済共同體(EEC)が発足。さらに農(nóng)業(yè)政策や通商政策も共通化、歐州共同體(EC)時代を経て1991年のマーストリヒト條約で再編?発展させたのが、現(xiàn)行の歐州連合(EU)である。當初6カ國だった加盟國は現(xiàn)在28カ國に拡大、世界的な大市場に発展した。

ベルギー?ブリュッセルのEC本部を何度も取材したが、記者會見や発表資料は全加盟國の言語が用意され、當時のジェンキンスEC委員長は「戦爭の原因となった各國固有のナショナリズムをいかに抑えるかが最大の課題。統(tǒng)合し人や物の行き來を自由にすれば國境の概念はなくなる」と繰り返し強調(diào)していた?!缸杂山U済體制を?qū)g現(xiàn)すれば國や國民同士のわだかまりがなくなり平和が実現(xiàn)する。もう加盟國間で戦爭が起きると考えている國はない」とも誇らしげに語っていたのが印象に殘る。

◆ストラスブルグの奇跡

実際、高速道路の國境には國旗だけ立っており、止められることもない。縦橫に広がる國際鉄道では國境を越えてもパスポート提示の必要もなく、知らない間に別の國に入る。

歐州統(tǒng)合の象徴的な都市が仏アルザス地方のストラスブルグだ。かつてはドイツの神聖ローマ帝國の都市だったが、17世紀にドイツの混亂に乗じてフランスが侵略して併合。以降、ドイツとフランスが領有権をめぐって戦火を交えた。第2次大戦後フランスに帰屬したが、フランス系、ドイツ系住民が、仲良く平和を満喫している。

現(xiàn)在ストラスブルグは歐州評議會や歐州人権裁判所、またEUの歐州議會の本會議場を擁し、ブリュッセルとともにEUの象徴的な都市の一つとなっている。ライン川の支流イル川の中洲にある舊市街はカテドラルを中心に中世の雰囲気が漂う美しい街並み。世界遺産に登録され、訪れるたびに平和の尊さと有難みをかみしめることができる。

私は取材やジャーナリスト會議などを通じて、民族、宗教、國境などを超越する「ユートピア(理想國家)」の理念と推進者の努力にたびたび感服?!复韦鲜澜缛wに拡大して“世界連邦”を!」という気運さえあった。英國の離脫が“実験國家”づくりの挫折につながらないよう望みたい。(八牧浩行

■筆者プロフィール:八牧浩行

1971年時事通信社入社。 編集局経済部記者、ロンドン特派員、経済部長、常務取締役編集局長等を歴任。この間、財界、大蔵省、日銀キャップを務めたほか、歐州、米國、アフリカ、中東、アジア諸國を取材。英國?サッチャー首相、中國?李鵬首相をはじめ多くの首脳と會見。東京都日中友好協(xié)會特任顧問。時事総合研究所客員研究員。著?共著に「中國危機ー巨大化するチャイナリスクに備えよ」「寡占支配」「外國為替ハンドブック」など。趣味はマラソン(フルマラソン12回完走=東京マラソン4回)、ヴァイオリン演奏。

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