<コラム>臺灣?蔡英文総統(tǒng)が臺灣先住民族に謝罪、読み取れる「臺灣は中國でない」の主張

如月隼人    2016年8月2日(火) 12時10分

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臺灣の蔡英文総統(tǒng)は1日、総統(tǒng)府に先住民族16民族の代表を招き、華人(漢民族)が臺灣に住むようになってから400年の歴史について謝罪した。資料寫真。

臺灣の蔡英文総統(tǒng)は1日、総統(tǒng)府に先住民族16民族の代表を招き、華人(漢民族)が臺灣に住むようになってから400年の歴史について謝罪した。

蔡総統(tǒng)は謝罪の理由について、「臺灣という土地には、400年前にすでに人が居住していた。それらの人々はもともと自らの生活を営み、自らの言語、文化、習俗、生活領域を持っていた」として、後からやってきた華人が「元からいた一群の人からすべてを奪った。彼らは自分の最も親しんだ土地で、流浪し土地を失い、異邦人となり、非主流となり辺縁となった」などの考えを示した。

さらに「1つのエスニック?グループの成功は、その他のエスニック?グループの苦難の上に打ち建てられる場合が多い」として、「われわれは、自らを公正で正義ある國家と言うならば、過去の歴史を正視して、真相を話すことが必須だ。そして、最も重要なことは、政府は必ずや、この過去の歴史を心から反省せねばならない」などと述べた。

◆解説◆

臺灣先住民族に対する公式謝罪が、蔡英文総統(tǒng)の信念によるものであることは、間違いない。その一方で、政治面での効果を計算していたとしても、総統(tǒng)という立場を考えれば、非難はできないだろう。

蔡総統(tǒng)の「謝罪」の持つ政治的意味として、まず考えられるのが「臺灣は中國の一部ではない」との間接的なアピールだ。

蔡総統(tǒng)は、臺灣先住民族こそ「臺灣の本來の主人」と論じ、400年前からやってきた華人が、「すべてを奪った」と表現(xiàn)した。つまり、臺灣は中國大陸から渡ってきた華人の土地ではなかったとの言い方だ。

現(xiàn)在の中國(大陸部)でも、少數(shù)民族の居住地の多くは、華人の住んでいた土地ではなかった。しかし、例えば清朝時代には、モンゴル人は清朝皇帝を同時に自らの皇帝と認め、チベット人は「チベット仏教の擁護者」として頼り、ウイグル人などイスラム系民族は「イスラム教の理解者」と認め従っていた。

しかし、臺灣原住民族が清朝に服屬あるいは従屬的な立場になったことはない。中國とはまったく別個に、臺灣という土地で生きてきた民族だ。つまり蔡総統(tǒng)の「謝罪」は、「華人は中國の一部ではなかった臺灣にやってきた」ことが前提となっている。そして、先住民族に謝罪し、和解を呼びかけたということは、臺灣獨自の新しい社會を築いていこうとのアピールと理解できる。

次に蔡総統(tǒng)の念頭にあったと考えられるのは臺灣に住む華人間の対立問題だ。つまり第二次世界大戦終結(jié)以前に、すでに臺灣に住み著いていた內(nèi)省人と、戦後になり國民黨関係者や軍人、その家族として臺灣に移ってきた外省人の関係だ。戦後の臺灣社會には長期にわたり、外省人(といっても一部だが)が政治や経済を“牛耳って”きた歴史がある。

國民黨統(tǒng)治に反発して內(nèi)省人が蜂起し、國民黨當局側(cè)の大弾圧で當局側(cè)の1990年代の推計でも1萬8000人から2萬8000人の犠牲者が出た1947年の2.28事件もあった。

內(nèi)省人の側(cè)に外省人への反発と、「あいつらにやられた」との被害者意識が出るのは當然だ?,F(xiàn)在は世代の交代とともに、両者の反発は希薄化してきたとはいえ、臺灣人としての一體化を進める上では、內(nèi)省人と外省人に「あいつらと、われらは別」との意識があることは好ましくない。

蔡総統(tǒng)の謝罪にあった、內(nèi)省人も400年前から臺灣に移り住んだ人であり、先住民族に対する加害者の側(cè)面があった點では外省人と同じとの認識は、先住民族との「和解政策」が順調(diào)に進行することが前提とはなるが、臺灣人としての一體感を強化することにつながるだろう。

ここで気になるのが中國側(cè)の出方だ。蔡総統(tǒng)の謝罪の言葉には、中國あるいは大陸といった言葉は含まれていない。しかし民進黨政権の「獨立志向」を警戒する中國當局が、今回の謝罪について「政治的意図」を強く感じることは間違いない。

蔡総統(tǒng)の謝罪は、先住民族との和解を目指す世界の潮流とも合致しており、その意味で「最先端の考え方」と評価できる。「理路整然たる謝罪」とも言える。

しかし、理屈だけで動くのではないのが政治だ。中國側(cè)が蔡政権をこれまで以上に警戒し、露骨な“報復措置”に出る可能性もある。

もっとも、中國が露骨な「反蔡政権」の動きに出た場合、これまで以上に公正な先住民族関連政策への意欲を示す臺灣を評価し、同時に中國の少數(shù)民族政策を批判する國際世論が高まる可能性もある。蔡政権としては、中國側(cè)の反応を織り込んだ上の先住民族に対しての謝罪と考えてよい。(8月2日寄稿)

■筆者プロフィール:如月隼人

日本では數(shù)學とその他の科學分野を勉強したが、何を考えたか北京に留學して民族音楽理論を?qū)煿?。日本に戻ってからは食べるために編集記者を稼業(yè)とするようになり、ついのめりこむ?!钢袊慰諝荨工蛘i者の皆様に感じていただきたいとの想いで、「爆発」、「それっ」などのシリーズ記事を執(zhí)筆。

■筆者プロフィール:如月隼人

1958年生まれ、東京出身。東京大學教養(yǎng)學部基礎科學科卒。日本では數(shù)學とその他の科學分野を勉強し、その後は北京に留學して民族音楽理論を?qū)煿ァH毡兢藨盲皮椁鲜长伽毪郡幛司幖浾撙蚣跇I(yè)とするようになり、ついのめりこむ。毎日せっせとインターネットで記事を発表する。「中國の空気」を読者の皆様に感じていただきたいとの想いで、「爆発」、「それっ」などのシリーズ記事を執(zhí)筆。中國については嫌悪でも惑溺でもなく、「言いたいことを言っておくのが自分にとっても相手にとっても結(jié)局は得」が信條。硬軟取り混ぜて幅広く情報を発信。

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