八牧浩行 2016年8月17日(水) 8時50分
拡大
「中國経済崩壊論」が日本メディアを賑わしてきた。一方で、IMFなど各種國際機関の中期予測によると、世界全體のGDPに占める中國の割合は2024年には20%に拡大、「米國を抜き世界一の経済大國になる」という。その真贋は?資料寫真。
この20年あまり「中國経済崩壊論」が日本メディアを賑わしてきた。ところが崩壊するどころか、國內(nèi)総生産(GDP)はこの10年間で4倍に拡大、日本の3倍近い水準となっている。OECD(國際協(xié)力開発基金)、IMF(國際通貨基金)など各種國際機関の中期予測によると、世界全體のGDP(國內(nèi)総生産)に占める中國の割合は2015年の14%から24年には20%に拡大、「米國を抜き世界一の経済大國になる」という。
中國の16年4?6月期の実質(zhì)GDPは前年同期比6.7%増。成長率は1?3月期から橫ばいで、成長率が下げ止まったのは15年4?6月期以來4四半期ぶり。一方、日本の同期のGDPは、前期比0.048%増、年率換算で0.2%増とほぼゼロ成長。設(shè)備投資や輸出が減少。民需は力強さを欠き、景気低迷が続いている。
世界銀行が6月に公表した、最新の世界経済見通しによると、16年の世界全體のGDP成長率は2.4%に下方修正された。1月時點では2.9%と見込んでいたが、予測を0.5ポイント引き下げた。日米がそれぞれ0.8ポイント下方修正され、先進國の景気減速が深刻。さらに資源輸出國の成長は前回予測から1.2ポイントも下方修正された。
日本は個人消費の低迷と輸出の伸び悩みで0.5%成長にとどまると予測した?!竸簝P力人口の減少が成長の重荷になっている」と分析し、日銀のマイナス金利政策も「効果が不安視されている」と疑問視。17年も0.5%と低い伸びにとどまる。
米國も輸出やエネルギー関連投資の不振で16年の成長率は1.9%と見る。雇用の改善によって17年は2.2%に回復(fù)するものの、米國の減速は世界経済の下振れ要因だ。これに対し、中國の16?17年の成長率は6.7%と底堅い。
中國のマクロ経済は世界でも有數(shù)のパフォーマンスを保っている。GDPは減速したと言っても、先進主要國が0?1%臺の低い水準に喘ぐ中で、なお際立っている。物価上昇率は1?2%臺と安定。財政赤字は対GDP比で約3%、累積債務(wù)の対GDP比は60%以下。2倍以上に達している日本に比べ健全だ。
ただ足元の指標はまちまち。固定資産投資は1?7月に前年同期比8.1%増で伸び率は約17年ぶりの低水準。全體の6割を占める民間投資の伸びが1?6月より0.7ポイント縮小したからだ。民間投資は統(tǒng)計の公表を始めて以降、最低の伸び率となった。
輸出は4カ月連続の前年割れで、工業(yè)生産も前年同月比6%増と伸び率が縮小。一方で個人消費(社會消費品小売総額)は同10.2%増と堅調(diào)で、世界最大の販売が続く自動車が、けん引している。
こうした中、中國では、これまでの高度成長の「負の遺産」が積み上がり、乗り越えるべき高い壁が立ちはだかっている。鉄鋼などの過剰設(shè)備や微小粒子狀物質(zhì)「PM2.5」に象徴される環(huán)境悪化、深刻な経済格差と腐敗汚職などが噴出している。
GDP成長率は內(nèi)陸部の重慶が11%に達しているのに対し、遼寧省は2.6%と地域によって差がある。長江デルタ地帯、重慶、武漢など主要16都市だけで中國のGDP全體の50%以上を占め、平均成長率は8.5%にもなる。低成長地域は開発の余地が大きい。 中國では過大な需給ギャップの縮小が急務(wù)だが、全體のパイが拡大しているので、GDP伸び率が減速しても『伸びしろ』は従來より大きい。
2?3年前に「中國崩壊の前兆」と喧伝された「シャドーバンキング(影の銀行)破たん論」も杞憂に終わった。中國政府は「不健全な経済構(gòu)造の筋肉質(zhì)化」を目指し安定成長への転換を図っている?!杆伽工砍砷L速度の適正化」「不健全な経済構(gòu)造の筋肉質(zhì)化」を目指し安定成長への転換を図る「新常態(tài)(ニューノーマル)」方針を掲げ、金融自由化や構(gòu)造改革を推進。対外政策面で、新シルクロード構(gòu)想『一帯一路』、アジアインフラ投資銀行(AIIB)、シルクロード基金、BRICS銀行などに力を入れ、貿(mào)易?投資先の確保を狙っている。
GDPのうち消費の占める割合が50%弱に急拡大、重厚長大型工業(yè)からサービス産業(yè)へのシフトが進行、內(nèi)陸部を中心とした都市化の進展も、成長を下支えしている。
15年7月に世界銀行が発表した統(tǒng)計によると、物価の格差を調(diào)整した購買力平価ベースGDPで、2014年に中國が米國を初めて上回った。中國は同年に前年比8.9%増の18兆ドルと、同3.6%増の17.4兆ドルだった米國を抜きトップに躍り出た。購買力平価ベースGDPは経済の実力を測る指標として最も有用とされる。早晩、実質(zhì)GDPでも米國を凌駕するのは確実かもしれない。(八牧浩行)
■筆者プロフィール:八牧浩行
1971年時事通信社入社。 編集局経済部記者、ロンドン特派員、経済部長、常務(wù)取締役編集局長等を歴任。この間、財界、大蔵省、日銀キャップを務(wù)めたほか、歐州、米國、アフリカ、中東、アジア諸國を取材。英國?サッチャー首相、中國?李鵬首相をはじめ多くの首脳と會見。東京都日中友好協(xié)會特任顧問。時事総合研究所客員研究員。著?共著に「中國危機ー巨大化するチャイナリスクに備えよ」「寡占支配」「外國為替ハンドブック」など。趣味はマラソン(フルマラソン12回完走=東京マラソン4回)、ヴァイオリン演奏。
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