<コラム>日中外相會談、こんなに違う両國の「公式発表」

如月隼人    2016年8月26日(金) 12時50分

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日中韓外相會談が24日、東京で行われた。興味深いのは日中當局の「公式発表」に相當な“落差”が見られたことだ。

日中韓外相會談が24日、東京で行われた。同會談出席のために來日した中國の王毅外相は、岸田文雄外相、韓國の尹炳世(ユン?ビョンセ)外相との安倍晉三首相への表敬訪問も行った。興味深いのは日中當局の「公式発表」に相當な“落差”が見られたことだ。

まず、中國外交部の公式サイトだ。王外相の來日中の會談や発言を紹介する記事だけで、11本を掲載した。日本の要人との會談だけでも、岸田外相、安倍首相以外に、二階俊博自民黨幹事長、福田康夫元首相、河野洋平氏(肩書は日中の貿(mào)易を促進する目的の団體である國際貿(mào)易促進會會長)と話し合った內(nèi)容を伝えた。

岸田外相との會談の紹介を見てみよう。王外相の発言として「歴史を正視して未來に向き合う」「中國は日本とともに、両國間の4つの政治文書を堅持して、雙方の政治的基盤を固め」などと、中國の従前からの「原則」を繰り返し、「中日関係が現(xiàn)在、依然として直面している困難はまさに関門だ。チャンスでもあり挑戦を受けているわけでもある」と論じた上で「分岐點をしっかりと抑制し、各分野での交流を展開し、関係改善の流れを維持したい」などと、両國関係の改善に前向きな姿勢であることを強調(diào)した。

中國外交部は公式発表で、両外相が述べ合った両國間に続く具體的な問題については觸れなかった。岸田外相の発言についても、王外相が日中間の「4つの原則的共通認識(解説參照)」を?qū)g行することを主張したことを受けるような形で「日本側(cè)も4つの原則的共通認識をしっかりと実現(xiàn)させることを願う」と述べた上で、両國が「財政と金融、省エネと環(huán)境保護、高齢化経済、観光、防災(zāi)の5分野での協(xié)力を強化し、青少年の交流を推進し、反テロの協(xié)力を進め、矛盾と分岐を抑制し」などと、両國関係の再構(gòu)築に前向きな発言をしたことを強調(diào)した。

さて、日本の外務(wù)省が公式サイトで王外相と韓國の尹外相の來日に絡(luò)めて紹介した記事は「日中韓外相會議」、「日韓外相會談」、「日中外相會談」、「日中韓外相による安倍総理大臣表敬」の4本だけだ。中國外交部と比べて、扱いはかなり小さい。

両外相の會談についてはまず「岸田大臣から,最近の尖閣諸島をめぐる事態(tài)を始めとする東シナ海情勢について,日本側(cè)の考えを改めて明確かつ直接伝え,日本側(cè)は何ら対応を変えていないにもかかわらず中國側(cè)が一方的な行動を続けていることは認められないとした上で、(ア)事態(tài)の完全なる沈靜化、(イ)再発防止、(ウ)東シナ海全體の狀況の改善等を強く求めた」、「中國側(cè)による一方的な資源開発に極めて強い懸念も示した」と、日本側(cè)からの具體的問題點の指摘を直接に記述した。

王外相の反応としては「尖閣諸島をめぐる情勢についての中國側(cè)の見解を説明した上で、東シナ海の情勢の悪化を防ぎ、不測の事態(tài)を回避することが重要であり、日中高級事務(wù)レベル海洋協(xié)議を開催する等、日中間で意思疎通を積み重ね、日中関係を改善していきたいといった趣旨の発言があった」と、多少“ぼかす”形ではあるが、領(lǐng)有権についての主張については譲らなかったが、関係改善への意欲ははっきりと示したと紹介した。

日本の外務(wù)省は、岸田外相はさらに、同日朝にあった北朝鮮による弾道ミサイル発射も踏まえ、「北朝鮮の度重なる挑発行動」に対し、中國側(cè)には「國連安保理の責任ある常任理事國として責任ある対応を求めたい」と発言したと紹介した。さらに雙方は南シナ海をめぐる問題について「雙方の立場にもとづく発言があった」と紹介した。

日中両國の外務(wù)省はそれぞれ自らの公式サイトで、上記內(nèi)容を「自國語」で紹介した。つまり、基本的には自國向け、自國民向けの情報発信ということになる。中國側(cè)の発表で目立つのは、「日本との関係改善には困難も存在するが、中國は誠意をもって現(xiàn)狀打破に努力している」とのニュアンスだ。

一方の日本側(cè)の発表で感じられることは、両國関係の改善と推進への意欲を前提としながらも、両國間にある「厳しい現(xiàn)実」を改めて具體的に取り上げ、「日本側(cè)は主張すべきことはきちんと主張している」とのアピールだ。

中國では特定外國との「対立」が発生した場合、「愛國世論」が爆発的に盛り上がることがある。少なくとも今回の外交部の取り組みからは、そのような気配を感じることができない。

一方で、日本側(cè)の発表は、「相手側(cè)の問題點を妥協(xié)せずに指摘した」との點で、中國側(cè)がこれまで多用した自國民向けの情報発信の仕方と、よく似た構(gòu)図になっている。

◆解説◆

「4つの原則的共通認識」は2014年11月7日に日本の國家安全保障局谷內(nèi)正太郎局長と、中國の楊潔チ國務(wù)委員(「チ」は竹かんむりに褫のつくり、副首相と一般閣僚の間に位置)の間で一致した、日中間の問題を処理するための大原則となる合意事項。

(1)雙方は日中の4つの政治文書の原則と精神を遵守し、戦略的互恵関係を発展させつづける(2)雙方は「歴史を正視し未來に向き合う」の精神にもとづき、両國関係に影響を與える障害を克服する(3)雙方は尖閣諸島と東シナ海を巡る緊張情勢において異なる主張があることを認識し、対話と交渉により自體の悪化を防止することに同意する(4)雙方はさまざまなパイプを通じ、政治、外交、安全について対話し、政治的な相互信頼を構(gòu)築することに努力する――の4點。(8月26日寄稿)

■筆者プロフィール:如月隼人

日本では數(shù)學とその他の科學分野を勉強したが、何を考えたか北京に留學して民族音楽理論を?qū)煿ァH毡兢藨盲皮椁鲜长伽毪郡幛司幖浾撙蚣跇I(yè)とするようになり、ついのめりこむ?!钢袊慰諝荨工蛘i者の皆様に感じていただきたいとの想いで、「爆発」、「それっ」などのシリーズ記事を執(zhí)筆。

■筆者プロフィール:如月隼人

1958年生まれ、東京出身。東京大學教養(yǎng)學部基礎(chǔ)科學科卒。日本では數(shù)學とその他の科學分野を勉強し、その後は北京に留學して民族音楽理論を?qū)煿?。日本に戻ってからは食べるために編集記者を稼業(yè)とするようになり、ついのめりこむ。毎日せっせとインターネットで記事を発表する?!钢袊慰諝荨工蛘i者の皆様に感じていただきたいとの想いで、「爆発」、「それっ」などのシリーズ記事を執(zhí)筆。中國については嫌悪でも惑溺でもなく、「言いたいことを言っておくのが自分にとっても相手にとっても結(jié)局は得」が信條。硬軟取り混ぜて幅広く情報を発信。

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