AFP通信などによると、G20出席のため中國(guó)?杭州に到著したオバマ米大統(tǒng)領(lǐng)の一行に対して、中國(guó)側(cè)の空港係官が「ここはわれわれの國(guó)だ」などと、怒鳴り聲をあげたとのこと。中國(guó)人の「大國(guó)意識(shí)」のあらわれとの見(jiàn)方も出たが、編者はそうでないと考える。そのことを説明したい。

オバマ大統(tǒng)領(lǐng)が外遊する際、同行する記者団は大統(tǒng)領(lǐng)専用機(jī)のエアフォース?ワンの翼の下で、タラップを降りてくる大統(tǒng)領(lǐng)を見(jiàn)守ることが慣例になっているという。しかし杭州空港では、中國(guó)側(cè)が設(shè)置した青いロープの後ろに追いやられた。

中國(guó)側(cè)はさらに、報(bào)道陣を退去させるよう要求した。米側(cè)職員が、エアフォース?ワンは米國(guó)機(jī)で、米國(guó)の大統(tǒng)領(lǐng)が乗っていると言うと、濃い色のスーツを著た中國(guó)側(cè)職員の1人が「ここはわれわれの國(guó)だ」、「ここはわれわれの空港だ」などと怒鳴ったという。同事態(tài)は、現(xiàn)場(chǎng)における中國(guó)側(cè)職員と米國(guó)のスーザン?ライス大統(tǒng)領(lǐng)補(bǔ)佐官の口論にまで発展した。

同件は日本でも報(bào)道された。茂木健一郎氏はツイッターで「こういう『大國(guó)意識(shí)』はいかがなものかと思います」と論評(píng)した。確かに。「なんと無(wú)禮なことか」と顔をしかめた日本人は多いだろう。

ただ編者は、同件を理解するには、まずは中國(guó)人の「ルール」意識(shí)を理解する必要があるし、まして「大國(guó)意識(shí)のあらわれ」と解釈すべきではないと考える。以下、そのことを論じる。

まず、「中國(guó)人のルール意識(shí)」についてだが、「ルールというものは守らねばならない」との考えは、日本人に比べれば相當(dāng)に希薄と言わざるをえない。ルールというのは、一定の立場(chǎng)にある者が自らの都合で定めたものだとの意識(shí)が強(qiáng)い。したがって、「ルールを守ることが善。破ることは悪」との意識(shí)は弱くなりがちだ。

そして、その場(chǎng)その場(chǎng)で「このルールは守った方がよいかどうか」を考えることになる。誤解のないように付け加えるが、中國(guó)人のこのような「ルール意識(shí)」が、絶対によくないとまで主張するつもりはない。

中國(guó)人と対照的に、ルール順守は美徳との意識(shí)が強(qiáng)固であるのが日本人だ。日本社會(huì)はそのおかげで秩序正しく運(yùn)営され、日常生活も気持ちよくすごしやすいとの長(zhǎng)所がある。しかしその反面、なんのために設(shè)けられたか分からないルールも多くなり、そのルールの存在自體が社會(huì)にとって本當(dāng)に役に立っているかどうか疑問(wèn)がある場(chǎng)合でも「ルールなのだから守らねばならない」との意識(shí)が先行しがちという問(wèn)題も抱えることになってしまったのではないか。

話が脫線してしまったが、中國(guó)人にとって「ルール」とは決して、絶対的な行動(dòng)規(guī)範(fàn)でないことをご理解願(yuàn)いたい。ところが、その中國(guó)人が「ルールの順守」を強(qiáng)調(diào)する場(chǎng)合も意外に多い。このようなケースは、ルール順守を「大義名分」にすればその場(chǎng)を上手に処理できると、當(dāng)事者が判斷した場(chǎng)合に多く見(jiàn)られる。

オバマ大統(tǒng)領(lǐng)の訪中に際して、中國(guó)側(cè)が「安全確?！工蜃钪匾n題の1つにしたことは間違いない。そのこと自體は受入國(guó)としての責(zé)務(wù)の遂行であるから、非難する點(diǎn)はまったくない。そこで推察できることは、オバマ大統(tǒng)領(lǐng)一行の受け入れに際して、「細(xì)かいルール」が大量に定められ、現(xiàn)場(chǎng)擔(dān)當(dāng)者がルール順守を厳しく求められたとの狀況だ。

このような場(chǎng)面で中國(guó)側(cè)擔(dān)當(dāng)者が、「定められルールを完璧に守ることができねば、あるいはすべての者に守らせねば、自分の責(zé)任になる」と考え、“職務(wù)に厳格かつ忠実に勵(lì)む”ことを決意したことは、容易に想像できる。

しかも、ルール策定に當(dāng)たっては、米國(guó)側(cè)の慣例の研究が不十分であったため、「とにかく、大統(tǒng)領(lǐng)本人以外は、この線から出てはいけない」というルールが作られ、中國(guó)側(cè)擔(dān)當(dāng)者が妥協(xié)なく守ろうとしたという構(gòu)図だ。

中國(guó)人社會(huì)にある程度以上接した経験のある人ならば、「普段はルールに対してかなり無(wú)頓著なのに、特定の狀況ではルールを頑なに墨守しようと主張する中國(guó)人の性癖」については、思い當(dāng)たるところがあるはずだ。

細(xì)かく分析したいことはまだずいぶん多いのだが、次に考えてみたいのは、中國(guó)側(cè)擔(dān)當(dāng)者が語(yǔ)ったとされる「ここはわれわれの國(guó)だ」、「ここはわれわれの空港だ」との発言だ。

外國(guó)からの賓客、しかも自國(guó)として何が何でも成功させたいG20で重要な役割を擔(dān)う米大統(tǒng)領(lǐng)一行に対する発言として、極めて不適切と言うしかない。このような発言が飛び出した背景には、編者が前から指摘してきた、中國(guó)人の発想にしばしば見(jiàn)られる「戦闘モードへのスイッチ切り替え」があると思われる。

つまり、自分のその場(chǎng)その場(chǎng)での言動(dòng)の基準(zhǔn)が、「何が正しく、何が正しくないか」、「何が理屈に合い、何が合わないか」よりも、「相手に勝利する」という目的のために、突然切り替わってしまう現(xiàn)象だ。ただここでは、中國(guó)人の考え方の「モード切替」現(xiàn)象ではなく、「ここはわれわれの國(guó)だ」といった発言內(nèi)容について考えてみたい。

切羽詰まった狀況で出た発言であるからには、発言者の日ごろの「內(nèi)心」が反映されていたと理解してよいだろう。中國(guó)人にとって米國(guó)は（実は日本も近いのだが）、感情面で複雑な対象だ。自國(guó)については、相當(dāng)に自信がついてきた?！袱铯欷铯欷?、もはや弱小國(guó)ではない」との自負(fù)心がある。相手の言動(dòng)に唯々諾々と従う必要はないと考える。

しかしその一方で、自らの國(guó)は相手の真の実力にはとうてい及ばないということも、しっかりと自覚している。つまり、相手が「真の大國(guó)」と思わざるをえない場(chǎng)合には「われわれの立場(chǎng)は、そこまで強(qiáng)固でない」と見(jiàn)極める冷靜さを持ち合わせている。

「ここはわれわれの國(guó)だ」発言が飛び出た背景には、世界における自らの立場(chǎng)を考えるにつれ、しみじみ感じる「やるせなさ」があると考えてよい。

中國(guó)人の意識(shí)には「みずからはもはや、弱小國(guó)ではない」という自負(fù)心がある。その反面で「わが國(guó)はまだ、世界の大國(guó)とはいいがたい」との認(rèn)識(shí)もある。自國(guó)は「大國(guó)」でもなく「小國(guó)」でもない。そういった、自國(guó)についてのまさに“中國(guó)意識(shí)”が、「ここはわれわれの國(guó)だ」との発言に結(jié)びついたと理解できる。（9月5日寄稿）

■筆者プロフィール：如月隼人

日本では數(shù)學(xué)とその他の科學(xué)分野を勉強(qiáng)したが、何を考えたか北京に留學(xué)して民族音楽理論を?qū)煿?。日本に戻ってからは食べるために編集記者を稼業(yè)とするようになり、ついのめりこむ?！钢袊?guó)の空気」を読者の皆様に感じていただきたいとの想いで、「爆発」、「それっ」などのシリーズ記事を執(zhí)筆。

■筆者プロフィール：如月隼人

1958年生まれ、東京出身。東京大學(xué)教養(yǎng)學(xué)部基礎(chǔ)科學(xué)科卒。日本では數(shù)學(xué)とその他の科學(xué)分野を勉強(qiáng)し、その後は北京に留學(xué)して民族音楽理論を?qū)煿?。日本に戻ってからは食べるために編集記者を稼業(yè)とするようになり、ついのめりこむ。毎日せっせとインターネットで記事を発表する?！钢袊?guó)の空気」を読者の皆様に感じていただきたいとの想いで、「爆発」、「それっ」などのシリーズ記事を執(zhí)筆。中國(guó)については嫌悪でも惑溺でもなく、「言いたいことを言っておくのが自分にとっても相手にとっても結(jié)局は得」が信條。硬軟取り混ぜて幅広く情報(bào)を発信。

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