中國各地で7月末から、道路や駐車場(chǎng)、橋が突然陥沒したり大穴が開く事故が目立って増えた。人々は、高度成長(zhǎng)を謳歌していた時(shí)期に、取り殘してしまった「闇の部分」を突きつけられた格好だ。

甘粛省蘭州市では8月23日から25日までの3日間、道路に穴が開く事故が6回発生した。23日には繁華街の歩道に大きな穴が開き、歩行者などが転落した。それから25日まで、車道に突然開いた穴に乗用車、バス、コンクリートミキサーが落ちた。

「穴開き事故」の主なニュースをざっと見ただけでも、福建省、海南省、天津市、陝西省、湖北省、上海市、江蘇省、重慶市、広西チワン族自治區(qū)、広東省、黒龍江省と、中國全土の北から南まで、沿海の経済先進(jìn)地域から內(nèi)陸部まで「まんべんなく」発生しているように見える。

道路に穴が開く原因としては、地下に敷設(shè)した水道管が破損して水が漏れ、周囲の土砂を押し流して空洞を開けてしまうことがある。その他、雨水管の作りが粗雑で、漏れた水が土砂を流してしまう場(chǎng)合もある。

7月末から「道路陥沒」が目立つようになったのは、今年（2016年）の春以降、同月までに中國各地が大雨に見舞われ、雨水管絡(luò)みのトラブルが多発したため、問題発生が「いつも以上」に多くなったためと考えられている。

大雨絡(luò)みの事故を別にしても、「水道管の破損」だけでも深刻な狀況だ。深セン市人民市政府の所在地である福田區(qū)當(dāng)局によると、同區(qū)では2016年になってから8月19日までに、「規(guī)模が比較的大きい」陥沒事故または事故につながる事態(tài)が105件、発生した。陥沒事故は、水道管などが集中している上に老朽化が進(jìn)む地區(qū)で集中しているという。

深センが都市として発達(dá)しはじめたのは、1980年に経済特區(qū)に指定されてからだ。それまでは、香港に隣接する農(nóng)漁村だった。さらに言えば、都市化が真に急速に進(jìn)んだのは、トウ小平が1992年に行った「南巡講話」の後だ。つまり、都市としての歴史は極めて短いにも関わらず、「水道インフラの老朽化」が深刻な事態(tài)に陥っていると理解せざるをえないことになる。

中國は、トウ小平が強(qiáng)力に進(jìn)めた改革開放のおかげで、世界を驚かせる高度成長(zhǎng)を?qū)g現(xiàn)することができた。そのこと自體は、共産黨政権が実現(xiàn)した大きな成果だったと高く評(píng)価することができる。

しかし、大きな問題を殘してしまったことも、事実だ。深刻な環(huán)境汚染、貧富の格差の拡大、高官にはびこる腐敗問題などだ。道路陥沒の多発に見らえる「あまりにも脆弱（ぜいじゃく）なインフラ」も、問題點(diǎn)の1つに數(shù)えてよい。

さらに深刻なのは、「脆弱なインフラ」は、中國の統(tǒng)治システムにも本質(zhì)的な部分でかかわっていることだ。中國の各地の行政は地方政府にゆだねられている面が大きい。そして、民意を直接問う普通選挙は存在しない。各地の政治責(zé)任者は、その上部にある共産黨委員會(huì)などに評(píng)価されるシステムだ。高く評(píng)価されれば「昇進(jìn)」が待っているし、評(píng)価されなければ左遷される場(chǎng)合もある。

したがって、県や市の上層部が、「上から評(píng)価される見栄えのよい事業(yè)に熱中し、地味な仕事は軽んじる」という風(fēng)潮が強(qiáng)い。

8月下旬に道路陥沒が集中して発生した甘粛省蘭州市では、市當(dāng)局が10年前から、街の美化や緑化に努めてきた。環(huán)境整備は住民に歓迎され、共産黨上部の高い評(píng)価も得やすいため、多くの都市で力を入れている事業(yè)だ。しかし蘭州市では道路陥沒が集中して発生したことで、「都市の外観はどんどん美しくなった。しかし足元はどんどん脆弱になってしまった」との批判の聲が出た。（9月8日寄稿）

■筆者プロフィール：如月隼人

日本では數(shù)學(xué)とその他の科學(xué)分野を勉強(qiáng)したが、何を考えたか北京に留學(xué)して民族音楽理論を?qū)煿?。日本に戻ってからは食べるために編集記者を稼業(yè)とするようになり、ついのめりこむ。「中國の空気」を読者の皆様に感じていただきたいとの想いで、「爆発」、「それっ」などのシリーズ記事を執(zhí)筆。

■筆者プロフィール：如月隼人

1958年生まれ、東京出身。東京大學(xué)教養(yǎng)學(xué)部基礎(chǔ)科學(xué)科卒。日本では數(shù)學(xué)とその他の科學(xué)分野を勉強(qiáng)し、その後は北京に留學(xué)して民族音楽理論を?qū)煿?。日本に戻ってからは食べるために編集記者を稼業(yè)とするようになり、ついのめりこむ。毎日せっせとインターネットで記事を発表する?！钢袊慰諝荨工蛘i者の皆様に感じていただきたいとの想いで、「爆発」、「それっ」などのシリーズ記事を執(zhí)筆。中國については嫌悪でも惑溺でもなく、「言いたいことを言っておくのが自分にとっても相手にとっても結(jié)局は得」が信條。硬軟取り混ぜて幅広く情報(bào)を発信。

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