<コラム>全人代議員が大量に資格剝奪、制度の「自家中毒」露呈の衝撃=中國

如月隼人    2016年9月22日(木) 14時(shí)40分

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中國の議會制度が揺れている。こう書くと「中國に議會制度があるだって?」と不審に思う方がいると思う。中國にも議會制度はある。寫真は人民大會堂。

中國の議會制度が揺れている。こう書くと「中國に議會制度があるだって?」と不審に思う方がいると思う。中國にも議會制度はある。もっとも、日本などの制度とは大きく異なり、しかも國を取り仕切っているのが共産黨なのだから、「形式にすぎない」という批判も成り立つ。

しかし形式的な存在であったとしても、國會に相當(dāng)する全國人民代表大會(全人代)は、國の最高権力機(jī)関と定められている。省における省人民大會は、省の行政トップである省長を任命する権限を持つ。市についても同様だ?!钢贫壬悉涡问健工螛赝Г?、信頼がなくなれば、共産黨を中核とする統(tǒng)治システムがぐらつく。それだけに、事件は深刻だ。

問題が発生したのは遼寧省だった。全人代代表(議員)は、各省の人民代表大會が選出することになっている(それとは別に軍選出の議員もいる)。省議會に相當(dāng)する遼寧省人民代表大會の「腐敗問題」が調(diào)査の対象になっていることは、9月上旬には取沙汰されていた。そして全人代常務(wù)委員會は13日、同省選出の全人代議員102人のうち45人を「金銭またはその他の財(cái)物で議席を手に入れた」との理由で、資格剝奪の処分にすることを決めた。

遼寧省では省人民代表大會の議員452人が同様の理由で資格剝奪。殘る議員は147人になってしまった。その他、遼寧省內(nèi)の市でも、議員の資格剝奪や停止が相次いでいる。

事態(tài)の発端は、中央軍事委員會の徐才厚前主席が退任後の2014年に収賄の容疑で訴追されたことだった。同事件に関連して、遼寧省選出の全人代議員だった王春成氏が同年4月に議員資格を取り消された。王氏は遼寧春成工貿(mào)易集団という企業(yè)の會長だった。

調(diào)べが進(jìn)むにつれ、省人民大會、さらに同省選出の全人代議員の多くが「人民元、黃金、米ドル」などをばらまいて、議席を得たことが明らかになったという。

同問題がなおさら深刻であるのは、中國が90年代に本格化させた「改革開放」の推進(jìn)にどうしても必要だとして導(dǎo)入した、新たな権力ヒエラルキーの構(gòu)造が、「自家中毒」を起こしていると言わざるをえない點(diǎn)だ。

「改革開放」および経済を全力で発展させた最大の目的は「共産黨による統(tǒng)治の安定」だった。そして、経済発展の擔(dān)い手である企業(yè)人は、政治分野での発言力向上を求めるようにった。自然な成り行きであるし、企業(yè)家の意見を政治にしっかり反映させることは、客観的に見ても必要と思われた。

企業(yè)家にまず門戸を開いたのは、政治協(xié)商會議だった。政治協(xié)商會議とは政策に対する「提言機(jī)関」だ。そのルーツは中華人民共和國成立以前の、國民黨と対決するための「共同戦線」だった。つまり、共産黨以外の各界から広く意見を求めるための組織という性格がある。企業(yè)家を政治協(xié)商會議のメンバー(委員)にすることに、さほどの違和感はなかった。

その結(jié)果2015年時(shí)點(diǎn)で、中國の資産家ランキングである胡潤百富榜の上位資産家1200人あまりのうち、約200人が、全國政治協(xié)商會議の委員を兼任しているという。

中國ではさらに、2000年に江沢民國家主席が提唱し、04年の憲法改正で序文にも盛り込まれた「3つの代表」で、民間資本家にも共産黨入黨への道が開かれた。民間企業(yè)の経営者が、人民代表大會の議員になることも、珍しくなくなった。

企業(yè)家が政界に進(jìn)出すること自體は、西側(cè)社會でも珍しくない。日本でも、かつての田中角栄氏がそうだったし、米國で仮にトランプ氏が大統(tǒng)領(lǐng)に當(dāng)選したら、財(cái)界人が政治のトップに躍り出た典型例のひとつになるだろう。

しかし西側(cè)諸國では、「選挙に勝つ」とのプロセスを経なければ、政界に進(jìn)出することはできない。中國では、「経済における地位がある」ことがそのままで、「政界に出たい」との希望を?qū)g現(xiàn)させる有力な手段になってしまう。地元経済に欠かせない人物で、思想的にも特に問題なしとみなされれば、地方の人民代表大會の議員の座は得やすい。市の議員になれば省の、省の議員になれば省選出の全人代議員への道が開けてくる。

そして、広く民衆(zhòng)から「票」を得るのではなく、「限られた世界」の中での支持を取りつければ「當(dāng)選」ということになる。買収などの不正が発生しやすい構(gòu)造になっているわけだ。

改めて、1990年代初頭から振り返ってみよう。「中國共産黨は民衆(zhòng)の支持を取り付けるためにも、経済発展を必要とした」、「経済発展を進(jìn)めるには、経済人の支持と彼らの要求を満たす必要があった」、「そこで、制度上の変更を最小限にとどめつつ、経済人に対して政界進(jìn)出の道を開いた」、「その結(jié)果、構(gòu)造的な『自家中毒』が発生」という経緯だ。そして民衆(zhòng)の共産黨に対する不信がますます高まる可能性が出てきた。

今のところ習(xí)近平政権は、「腐敗に対して容赦しない」という方針を示し続けている。人々も、腐敗撲滅の方針自體に対しては、理解を示していると考えてよい。しかし、遼寧省のような狀況が、「遼寧省だけ」に存在すると考えるのも不自然だ。同様の異常事態(tài)が全國各地で発生した場合、人々の見方はどうなるのか。

厳しい締め付けに対しては、反発も発生する。遼寧省以外の省でも次々に、同様の摘発をした場合、習(xí)近平政権は反発に耐えられるのか。逆に、地方人民代表大會への締め付けを緩めれば、「結(jié)局は見せかけだったか」と、大衆(zhòng)の心が離反する恐れが出てくる。

さらに、中國経済にかつてのような「高度成長」は望めないのが現(xiàn)実だ。人々の間で「暮らしが一向によくならない。締め付けが緩かったかつての方がよかった」との聲が高まった場合、どうなるのか。

習(xí)近平政権は外交面でも內(nèi)政でも、強(qiáng)硬姿勢を取り続けている。しかし強(qiáng)硬姿勢とは一般的に、始める時(shí)よりも後退させるときの方がはるかに難しい。習(xí)近平政権はハイリスクな賭けに挑戦し、同じ賭けを続けるしかない狀況と理解することができる。(9月22日寄稿)

■筆者プロフィール:如月隼人

日本では數(shù)學(xué)とその他の科學(xué)分野を勉強(qiáng)したが、何を考えたか北京に留學(xué)して民族音楽理論を?qū)煿?。日本に戻ってからは食べるために編集記者を稼業(yè)とするようになり、ついのめりこむ。「中國の空気」を読者の皆様に感じていただきたいとの想いで、「爆発」、「それっ」などのシリーズ記事を執(zhí)筆。

■筆者プロフィール:如月隼人

1958年生まれ、東京出身。東京大學(xué)教養(yǎng)學(xué)部基礎(chǔ)科學(xué)科卒。日本では數(shù)學(xué)とその他の科學(xué)分野を勉強(qiáng)し、その後は北京に留學(xué)して民族音楽理論を?qū)煿ァH毡兢藨盲皮椁鲜长伽毪郡幛司幖浾撙蚣跇I(yè)とするようになり、ついのめりこむ。毎日せっせとインターネットで記事を発表する。「中國の空気」を読者の皆様に感じていただきたいとの想いで、「爆発」、「それっ」などのシリーズ記事を執(zhí)筆。中國については嫌悪でも惑溺でもなく、「言いたいことを言っておくのが自分にとっても相手にとっても結(jié)局は得」が信條。硬軟取り混ぜて幅広く情報(bào)を発信。

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