新華社などによると遼寧省で21日、新たに選出された省人民代表大會(huì)代表（省議會(huì)議員）の資格が有効と承認(rèn)された。同議會(huì)ではこれまでに、454人の資格を取り消した。中華人民共和國(guó)始まって以來の異常事態(tài)だ。

資格取り消しの理由は、「議員の座をカネで買っていた」。報(bào)じられた數(shù)字を元に計(jì)算すれば、遼寧省人民代表大會(huì)では前回選出の議員のうちの75％が「クビ」になった計(jì)算になる。

中國(guó)は全國(guó)人民代表大會(huì)（全人代＝國(guó)會(huì)）の議員を省人民代表大會(huì)が、省人民大會(huì)の議員を省の下にある市（地級(jí)市）の人民大會(huì)などが選出する制度だ。21日までに省內(nèi)各地で選出された議員447人が、省人民大會(huì)の準(zhǔn)備チームにより、資格を承認(rèn)された。

遼寧省人民代表大會(huì)は、新たな議員を選出することで、これまで「問題なし」とされていた議員143人を合わせて594人の議員が資格保持者となり、議會(huì)としての機(jī)能を回復(fù)した。

報(bào)じられた數(shù)字を元に計(jì)算すれば、遼寧省人民代表大會(huì)では前回選出の議員のうちの75％が「クビ」になった計(jì)算になる。同事態(tài)は習(xí)近平政権が強(qiáng)力に進(jìn)める綱紀(jì)粛正の一環(huán)として表面化した。習(xí)政権は「腐敗撲滅のためなら、建國(guó)以來の異常事態(tài)も辭せず」との姿勢(shì)を示したことになる。

習(xí)政権が腐敗撲滅に力を入れている主な理由は2つある。まず「大義名分」としては、「全國(guó)?各分野に蔓延する腐敗を解消させないと、民意が共産黨から離反する」ことがある。

もう1つの目的は、政権基盤の安定化だ。前胡錦濤政権時(shí)代、長(zhǎng)い間にわたって「次期政権?fù)?dān)當(dāng)者」とみなされていたのは、李克強(qiáng)氏だった。李氏は當(dāng)時(shí)の胡錦濤主席?溫家寶首相の「一番弟子」といった存在だからだ。

しかし2007年10月の共産黨大會(huì)で、習(xí)主席は中國(guó)共産黨中央政治局常務(wù)委員に就任した。名簿上の順列は同時(shí)に就任した李克強(qiáng)氏よりも上だった。習(xí)氏はその後、國(guó)家副主席、中央軍事委員會(huì)副主席にも就任し「次期リーダ」の地位を確実にした。

習(xí)近平氏という「ダークホース」の出現(xiàn)は、「李克強(qiáng)政権」の誕生には反対派閥の反発が大きすぎ、黨長(zhǎng)老らのさまざまな思惑が絡(luò)んだ妥協(xié)の産物だったとされる。

それだけに、習(xí)主席は2012年秋に黨総書記に就任後（國(guó)家主席就任は13年3月）、権力基盤を急速かつ強(qiáng)力に掌握する必要があった。そこで國(guó)民の支持を得られ、黨內(nèi)でも表立っての反対がしにくい「腐敗撲滅」を徹底的に進(jìn)めることを決意したということになる。

當(dāng)初は、腐敗傾向が強(qiáng)いとされる江沢民元主席につながる人物の摘発が目立った。しかし、「団派」と呼ばれる胡錦濤前主席につながる人脈に対する摘発事例も出るようになった。

習(xí)主席は、「これまでの親分の傘の下にいても、守ってもらえるとは限らない」ことを誇示して、「あらゆる面で、自分の意向に従って動(dòng)く」ことを、いわば“恐怖政治”の手法で求めているわけになる。ただ、習(xí)主席の政権基盤が盤石になったわけではない。むしろ逆だ。

習(xí)政権が、腐敗撲滅の要である黨中央紀(jì)律検査委員會(huì)書記に任じたのは、王岐山氏（現(xiàn)?黨中央政治局常務(wù)委員）だった。

王氏は実績(jī)豊富な経済や金融の専門家で、「綱紀(jì)粛正の実働部隊(duì)トップ」に抜擢されたのは「サプライズ人事」とされた。當(dāng)初は実績(jī)を出せるかどうか、疑問視する聲もあったほどだ。

しかし王氏の指導(dǎo)の下、紀(jì)律検査委員會(huì)は、蠅（小物）から虎（大物）まで、大量の違反者の摘発を続けている。同委員會(huì)の発表によれば、習(xí)主席が黨総書記に就任して以來、摘発者の累計(jì)は101萬(wàn)人を超えた。

そのため、王氏が「極めて大きな実力を得た」との見方が出てきた。黨重要人物の裏側(cè)を知り盡くしたことで、「誰(shuí)にでも睨みをきかせることのできる存在」になったというのだ。事実、2016年3月の全國(guó)人民代表大會(huì)（全人代）の場(chǎng)でも、王氏が習(xí)主席に対して「自分より上位にある人物に対するものとは思えない仕草があった」ということが、注目された。

つまり、習(xí)主席は當(dāng)初目指した「権力構(gòu)造の完全一元化」には成功していないとみなすことができる。

さらに、徹底的な腐敗撲滅に既存層の不満が高まっていることは間違いない。その場(chǎng)合「怨嗟（えんさ）の対象」は習(xí)主席ということになる?，F(xiàn)在の狀況をもたらしたのは、習(xí)主席であるし、仮に反対派が「王岐山降ろし」に成功したとして、習(xí)主席が「第2の王岐山」を抜擢すれば、狀況は変わらないからだ。

つまり、習(xí)政権は強(qiáng)い権力を手にした半面、水面下における反発も激化させたことになる。

王氏の存在については、別の懸念材料もある。習(xí)主席が王岐山氏を腐敗撲滅に専念させたのは、新政権で経済改革の責(zé)任者となる李克強(qiáng)主席と王氏では考え方に違いが大きく、経済問題を巡る両者の対立を回避する思惑があったからだ。

しかし今年（16年）5月以來、共産黨上層部では李克強(qiáng)氏の経済政策（リコノミクス）に対する反発も表面化してきた。王氏が経済分野に返り咲きたいと意思した場(chǎng)合、黨上層部で波亂が生じる可能性は否定できない。

役職の割り振りを含め、共産黨上層部の人事が決定するのは、黨大會(huì)においてだ。次回の黨大會(huì)は2017年秋だ。権力基盤の強(qiáng)化を目指す習(xí)主席（黨総書記）、実力と発言力を高めた王氏、さらに、胡錦濤前主席を含め「団派」と呼ばれる派閥をバックとする李首相という3者の関係には不透明な部分が多くあるが、「腐敗撲滅」と「経済政策の是非」を巡り、共産黨上層部で今後1年の間に「複雑な綱引き」が激化することは間違いない。（10月26日寄稿）

■筆者プロフィール：如月隼人

日本では數(shù)學(xué)とその他の科學(xué)分野を勉強(qiáng)したが、何を考えたか北京に留學(xué)して民族音楽理論を?qū)煿?。日本に戻ってからは食べるために編集記者を稼業(yè)とするようになり、ついのめりこむ?！钢袊?guó)の空気」を読者の皆様に感じていただきたいとの想いで、「爆発」、「それっ」などのシリーズ記事を執(zhí)筆。

■筆者プロフィール：如月隼人

1958年生まれ、東京出身。東京大學(xué)教養(yǎng)學(xué)部基礎(chǔ)科學(xué)科卒。日本では數(shù)學(xué)とその他の科學(xué)分野を勉強(qiáng)し、その後は北京に留學(xué)して民族音楽理論を?qū)煿ァＨ毡兢藨盲皮椁鲜长伽毪郡幛司幖浾撙蚣跇I(yè)とするようになり、ついのめりこむ。毎日せっせとインターネットで記事を発表する。「中國(guó)の空気」を読者の皆様に感じていただきたいとの想いで、「爆発」、「それっ」などのシリーズ記事を執(zhí)筆。中國(guó)については嫌悪でも惑溺でもなく、「言いたいことを言っておくのが自分にとっても相手にとっても結(jié)局は得」が信條。硬軟取り混ぜて幅広く情報(bào)を発信。

Facebookはこちら
※フォローの際はメッセージ付きでお願(yuàn)いいたします。

ブログはこちら