2016年12月8日、中國経済事情に詳しい瀬口清之キヤノングローバル戦略研究所研究主幹はこのほど東京都內(nèi)で講演し、日中韓3國間の関係強化策として、日韓両國が中國の新シルクロード（一帯一路）構(gòu)想を支援することを提案した。その重要施策として、日本がアジアインフラ投資銀行（AIIB）に加入するか実質(zhì)的に支援することが重要なカギとなると指摘。これが実現(xiàn)すれば、「中國側(cè)の東シナ海における日本に対する姿勢が大きく変化する可能性が高い」と強調(diào)した。発言要旨は次の通り。

習(xí)近平政権は新シルクロード構(gòu)想を?qū)澩庹撙巫钪匾┎撙任恢盲扭?、その具體化を高度に重視している。しかし、陸路のルート（一帯）は中央アジア地域でのテロリスクの大きさから経済的に採算が合わない。一方で、海上ルート（一路）についても、現(xiàn)狀では南シナ海?東シナ海問題で紛爭が起きているため、活用が難しい。日韓両國が新シルクロード構(gòu)想を支援することになれば、これを推進するために中國としても尖閣諸島周辺海域における行動を融和的な方向に変える可能性が高いと米中の専門家は見ている。習(xí)近平政権は「海のシルクロード」を開通させるために東シナ海の緊張狀態(tài)を改善するだろう。

◆遼寧省、吉林省、黒竜江省の経済再生に日韓の協(xié)力を！

新シルクロード構(gòu)想支援の具體策として、AIIBへの加入または協(xié)力のほかに、長期停滯が続く中國東北地域経済（遼寧省、吉林省、黒竜江?。─谓U済再生に日中両國で取り組むことを提案したい。

最近の中國経済全體を見渡すと、東部沿海部、中部、西部各地域はそれぞれ主要都市がリードし、消費も投資も安定を保持している。それに対して、東北地域は産業(yè)構(gòu)造が過剰設(shè)備に苦しむ重工業(yè)に偏り、非効率な國有企業(yè)が多く経済狀態(tài)は劣悪だ。中國政府はこの地域の経済再生に対してこれまで様々な対策を講じいるが、依然として深刻な経済停滯が続いている。

そこで日中両國の協(xié)力で東北地域をアジア太平洋地域の健康モデル基地への変革と経済活性化実現(xiàn)へ、次の3點を提言する。

（1）東北地域製造のハイブリッド車を環(huán)境保護車に指定する

中國の大気汚染は一向に改善せず、一般庶民は環(huán)境問題に対する政府の甘い姿勢に強い不満を抱いている。中國政府は都市部における環(huán)境対策として電気自動車の普及を目指しているが、順調(diào)に普及したとしてもその比率は當面20％程度にとどまると見込み。殘りの80％は引き続きガソリン車であるため、主要都市の大気汚染改善には不十分だ。

現(xiàn)在は環(huán)境保護車の指定対象となっていないハイブリッド車を環(huán)境保護車に指定すれば、ガソリン車の排ガスを大幅に削減することができる。環(huán)境改善に有効であることは明らかである。そこで、日中両國の環(huán)境協(xié)力プロジェクトとして、中國の東北地域で生産することを前提にハイブリッド車を環(huán)境保護車に指定することにすれば、環(huán)境問題と東北経済問題の両方を同時に改善に向かわせることが可能となる。

2015年の中國國內(nèi)市場での自動車販売臺數(shù)は約2500萬臺に上り、仮にその4％がハイブリッド車になれば、100萬臺となる。東北地域で毎年100萬臺の自動車が生産されるようになれば、日本の自動車関連の部品メーカー、素材メーカーなども東北地域に進出し、數(shù)十萬人の新規(guī)雇用を生み出す。加えて、東北地域は大気汚染が最も深刻な華北地域に近く、北京、天津といった大消費地への輸送にも比較的便利であるという地理的メリットもある。

（2）長春市を核とする食品安全プロジェクトの推進

中國の一般庶民の悩みは食品安全問題。今年から國連と中國政府の共同プロジェクトとして、中國全土で一般庶民が安心して食品を食べられるようにする食品安全プロジェクトが始まった。土壌汚染の心配が少ない東北地域の吉林省長春市が中核拠點に指定された。農(nóng)業(yè)生産、食品加工、物流、販売の全行程を標準化し、食品安全基準を満たす業(yè)者のみに參畫させ、その全過程を可視化する。

國連は、このプロジェクトが中國で成功すれば、その手法を生かして、全世界の発展途上國の食品安全問題の改善に活用したいと考え。その中核を日本企業(yè)が擔うことが期待されている。日本の一流企業(yè)が中國企業(yè)と提攜することによって、日本のブランド力で中國の一般庶民に安心してもらえるシステムを構(gòu)築しようとしている。すでに日本の一流企業(yè)十數(shù)社が関心を示し、來年以降その動きが本格化する見通しだ。土地改良、水質(zhì)改善、肥料、農(nóng)業(yè)生産、植物工場、食品加工、物流、倉庫、包裝?パッケージ、食品販売、飲料販売、飲食サービスなど広範な分野での日中協(xié)力が期待される。

このプロジェクトが軌道に乗れば、東北地域が中國、アジア太平洋地域、そして全世界の健康モデル基地となり、日本企業(yè)の東北地域での投資拡大が見込める。

（3）東北地域の環(huán)境基準を日本並みに引き上げる

東北地域の空気や水の環(huán)境が良好でなければ、だれも安心して食品を食べることはできない。東北地域の環(huán)境基準を中國の他地域に比べて厳しくすることが必要である。例えば2020年までに日本の環(huán)境基準を満たすことを義務(wù)化すれば、東北地域の全工場は最先端の排煙処理設(shè)備を備え、東北で走る自動車は日本の排ガス規(guī)制をクリアできるようにすることが必要になる。そうなれば、多くの環(huán)境関連需要が生まれ、環(huán)境関連産業(yè)の日本企業(yè)が東北地域に進出し、東北で走る車の多くはハイブリッド車になる。

以上の3つの施策を?qū)g施すれば、東北地域は経済が大幅に活性化し、日本並みの環(huán)境保護の行き屆いた健康モデル基地に生まれ変わることができる。　日中協(xié)力プロジェクトとして以上のような成果を?qū)g現(xiàn)することができれば、それにより日中間の信頼の絆も深まる。日中両國の協(xié)力プロジェクトとして新シルクロード構(gòu)想支援を通じた日中ウィンウィン関係の構(gòu)築が実現(xiàn)することを期待したい。（八牧浩行）

■筆者プロフィール：八牧浩行

1971年時事通信社入社。 編集局経済部記者、ロンドン特派員、経済部長、常務(wù)取締役編集局長等を歴任。この間、財界、大蔵省、日銀キャップを務(wù)めたほか、歐州、米國、アフリカ、中東、アジア諸國を取材。英國?サッチャー首相、中國?李鵬首相をはじめ多くの首脳と會見。東京都日中友好協(xié)會特任顧問。時事総合研究所客員研究員。著?共著に「中國危機ー巨大化するチャイナリスクに備えよ」「寡占支配」「外國為替ハンドブック」など。趣味はマラソン（フルマラソン12回完走＝東京マラソン4回）、ヴァイオリン演奏。