2016年1月25日、中國?大連出身で同國経済に詳しい郭四志?帝京大教授が日本記者クラブで「中國の対外経済戦略」と題して講演した。輸出大國?中國は資金を潤沢に保有しているが、ものづくりで優(yōu)位性を保持していないと指摘?！缸試谝恢髁x」のトランプ政権下で中國の対米輸出は減少するが、対米投資は拡大すると予測した。

＜対外投資?海外進(jìn)出の展開＞

中國は経済成長の減速に伴い、構(gòu)造的転換を進(jìn)めている最中だ。対外直接投資やM＆Aが急拡大、2015年に米國に次ぎ、世界の第2位の対外投資大國に躍り出た。2010年までの対外投資狀況と比べ、これまで対外直接投資は金額だけでなく、構(gòu)造的に大きく変化してきた。

中國の対外直接投資額（金融を除く）は14年間連続で増加しており、2016年に前年比44％増の1701億ドルと過去最高を記録した。そのうち海外企業(yè)の買収は1072億ドルで、63％も占め、前年比96．9%と大幅増。ストックベースで2016年年末時點の対外投資額は1兆2680億ドルに達(dá)している。

＜投資パターン＞

（1）資源開発確保型＝石油、金屬などの開発。中國はアフリカでは現(xiàn)地政府や住民の支持を得てうまく対応しているが、中南米では嫌がられている。相手國との協(xié)調(diào)と連帯が必要だ。

（2）市場開拓?効率追求型＝鉄鋼や化學(xué)など従來からの重厚長大分野で、過剰在庫の調(diào)整が課題となっている。

（3）技術(shù)?ブランド経営資源獲得型＝先進(jìn)國ハイテク企業(yè)のM&Aが急増。16年も、中國企業(yè)がイタリアのタイヤメーカーや米GE家電部門、スイス大手製薬會社などが次々に買収された。

（4）金融拠點?不動産?観光レジャー施設(shè)開発型＝ソフトを中心に有望分野。所得の伸びとともに、消費関連投資が注目されている。

投資パターンを分析すると、途上國地域向けは、主にグリーンフィールド投資（外國に投資をする際に、法人を新しく設(shè)立し設(shè)備や従業(yè)員を確保する手法）である一方、先進(jìn)國?地域では、ほとんどがM&Aだった。

中國は輸出大國で、資金を潤沢に保有しているが、ものづくりで優(yōu)位性を保持していない。米フォーチュン誌の16年世界500社ランキングでは中國企業(yè)98社が入ったが、大半はエネルギー、電力、銀行、プラント、鉱山、建設(shè)で、製造業(yè)はレノボ、ファーウェイ、ハイアールなど5社に満たない。もっとマーケット市場とブランド力が必要である。

＜「一帯一路」戦略など國家からのサポート＞

投資相手國との投資保護(hù)協(xié)定?二重課稅防止、融資信用の保証?優(yōu)遇金利、首脳外交などを積極的に展開。AIIB（アジアインフラ投資銀行）、BRICS銀行、上海協(xié)力機(jī)構(gòu)銀行、シルクロード基金などを駆使している。當(dāng)該基金の第1號案件として、2015年4月に、パキスタンの水力発電（16億5000萬ドル）への投資が決定した。

＜主要高速鉄道建設(shè)計畫＞

【ロシア】モスクワ―北京の高速鉄道（中國、カザフスタン、ロシアを結(jié)ぶ。全長7000キロで?北京からモスクワまで2日間の行程?総工費1兆5000億元（約29兆円）の予定。

ハンガリーとセルビアの両首都間を結(jié)ぶ高速鉄道(350キロ)を中國を含めた3力國の共同建設(shè)で合意（13年）

【インド】5本の高速鉄道建設(shè)計畫に中國企業(yè)と日本企業(yè)がそれぞれ2本の事業(yè)化調(diào)査を落札（2013年12月）。南部のチェンナイ、バンガロール、マイソールを結(jié)ぶ在來線の高速化と鉄道大學(xué)の設(shè)立などで合意。

【タイ】インラック政権時代?中國と?米と高速鉄道の取引?案件?失腳の理由に14年11月計畫復(fù)活、鉄道協(xié)力の覚書を調(diào)印。バンコクと東北方向のラオス國境都市ノンカイまでの鉄道（時速180キロ）を中國が受注（15年9月、政府間契約、10月末に著工式)、將來の高速化。北は中國?南はシンガポールに接続が可能。

【インドネシア】ジャカルタ―バンドン間180キ口、中國が受注見込み。

【英國】15年10月、習(xí)近平訪間中に覚書調(diào)印。

＜今後の展望と課題＞

対外経済戦略により、中國の対外投資?人民元の國際化が加速し、中國の世界投資?貿(mào)易のプレゼンスがさらに上昇。多極化しつつある世界政治経済構(gòu)造の中で、中國の存在感は高まることになろう。

トランプ政権の「アメリカ第一主義」「貿(mào)易保護(hù)主義」下で、対米輸出の減少、対米投資の拡大が予想される。「一帯?一路」（海と陸のシルクロード）エリアで、石油など人民元決済を拡大し、脫米ドル依存の人民元経済圏の形成を目指す。

課題は対外進(jìn)出の経験やノウハウが不足している點であり、國際社會との協(xié)調(diào)?理解が必要だ。自主ブランド技術(shù)力のさらなるアップが急務(wù)で、日米歐など先進(jìn)國との連攜を強(qiáng)化すべきだ。中國企業(yè)は石油開発でも対外進(jìn)出しているが、経験不足で進(jìn)出先での反発もある。日本など先進(jìn)國からノウハウを謙虛に學(xué)ぶべきである。（八牧浩行）

■筆者プロフィール：八牧浩行

1971年時事通信社入社。 編集局経済部記者、ロンドン特派員、経済部長、常務(wù)取締役編集局長等を歴任。この間、財界、大蔵省、日銀キャップを務(wù)めたほか、歐州、米國、アフリカ、中東、アジア諸國を取材。英國?サッチャー首相、中國?李鵬首相をはじめ多くの首脳と會見。東京都日中友好協(xié)會特任顧問。時事総合研究所客員研究員。著?共著に「中國危機(jī)ー巨大化するチャイナリスクに備えよ」「寡占支配」「外國為替ハンドブック」など。趣味はマラソン（フルマラソン12回完走＝東京マラソン4回）、ヴァイオリン演奏。