南シナ海を沿岸國の「共通の庭」に、中國も軍事化抑制=「紛爭、劇的に好転」「日本にとっても好ましい」―中國第一人者が東京で4項目提言

八牧浩行    2017年4月22日(土) 5時20分

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中國の南シナ海問題の第一人者、呉士存?中國南海研究院院長が「南シナ海を巡る問題」をテーマに日本記者クラブで講演した?!改膝伐屎<姞帳纹胶偷慕鉀Qを追求し、南シナ海海を沿岸國の“共通の庭”にすべきだ」―など4項目を提言した。

2017年4月19日、中國の南シナ海問題の第一人者、呉士存?中國南海研究院院長(南京大?中國南海研究協(xié)働創(chuàng)新センター副主任)が「南シナ海を巡る問題」をテーマに日本記者クラブで講演した。南シナ海紛爭の平和的解決を追求し、同海を沿岸國の「共通の庭」にすべきだなど4項目を提言した。中國ASEAN南シナ海行動規(guī)範(COC)協(xié)議が進展し、「平和的狀況に劇的に好転している」とし、「日本にとっても好ましいことだ」と強調(diào)した。

中國南海研究院は南シナ海問題に特化した政府系シンクタンク。約70人の専従スタッフが活動している。呉氏は同問題に関する著作を中國語と英語で刊行しており、日本でもこのほど『中國と南沙諸島紛爭』(朱建栄訳?花伝社)を上梓した。発言要旨は次の通り。

南シナ海問題は2009年からエスカレートしたが、主な原因は(1)米國の「アジア太平洋リバランス政策」(2)中國の臺頭と強大化が他の係爭國の非合法的占拠の強化を引き起したこと―などだ。米國は域外の國であり當事者ではない。2011年のリバランス政策が打ち出されて以來、南シナ海は米國にとって中國をけん制する一つのツールになっている。

中國の南シナ海政策は、「平和と安定」の維持、航行の安全と自由の維持、主権主張國との直接対話と協(xié)議による紛爭解決、領(lǐng)有権爭いの棚上げと共同資源開発などを基本としている。

この線に沿って、中國は2002年に、ASEAN10カ國と「南シナ海関係方面行動宣言」(DOC)に署名しており、現(xiàn)在「南シナ海行動規(guī)範(COC)」の協(xié)議が行われている。南沙の島?巖礁での建設(shè)は主として平和利用であり、國際社會への公共財の提供を約束している。

海域の直接の當事者である海域周辺國は島しょの帰屬先に過度に焦點を當てるのではなく、いかに海域をコントロールできるかに変わりつつある。

南シナ海紛爭は沈靜化している。沿岸國が抑制的に動き、協(xié)力態(tài)勢を構(gòu)築する方向に動いている。中國としても、平和と安定に努め協(xié)議で紛爭を解決し、資源の共同開発を推進、航行の自由と安全を守っていく。中國の政策には、なんら変化はない。

中國は関係各國から遅れて、南シナ海に施設(shè)をつくったが、民生用がほとんどだ。軍事施設(shè)はあくまで防御のための施設(shè)である。中國は民生施設(shè)を多くつくり、軍事施設(shè)の建設(shè)は極力抑制する。私の使命は南シナ海で戦爭が起こさないことだ。シンクタンク(南海研究院)の任務(wù)も同じ平和を志向している。

「南シナ海で絶対に戦爭はしてはいいけない」と言うのも、南シナ海周辺國は中小國だからだ。日本との間でも再び戦爭になってはいけない。長年、笹川平和財団と協(xié)力して、日中間の海洋の安全に関するプロジェクトを?qū)g施している。

平和に向かう流れが出てきたのは喜ばしい。南シナ海に関する狀況は劇的に好転している。原因は二つある。トランプ政権はオバマ前大統(tǒng)領(lǐng)と違って、この地域に介入していない。もうひとつ係爭國が、中國に対する考え方を修正した。フィリピンのドュテルテ大統(tǒng)領(lǐng)も仲裁裁定後に北京を訪問、マレーシアやベトナムの首相も訪中した。

フィリピンと中國は、3年間対立したが、代償を払っただけで何一つ変わらなかった。その結(jié)果、係爭を回避し、理性へ回帰する機運が生まれ、友好的な話し合いによる解決の道を歩み始めた。フィリピンとの関係は大きく変化し、中國フィリピン間の協(xié)力メカニズムが出來上がり、2カ國間の紛爭海域に関する対話が進んでいる。中國ASEANがCOC(中國アセアン行動規(guī)範)を通じて、南シナ海を「共通の庭」にしたい。

このような平和的な狀況は日本にとっても好ましいことだ。ただ日本は紛爭の変數(shù)になる可能性があると懸念する。米國を支持する形で、日本は大國をめざし、自由航行作戦に參加することも想定される。海上自衛(wèi)隊の「いずも」が5月から8月まで南シナ海沿岸國に寄港して、米國と作戦を行う見通しという。中日間の相互信頼が低下している中、危機をコントロールするメカニズムがなく、偶発的な軍事衝突が発生する懸念がある。

◆南シナ海の平和と安定を守ることに関する提言

 

以下の4點を提言したい。

(1)米國との「新型大國関係」の枠組みの下で、米中の新型軍事関係を構(gòu)築していくこと。南海問題において、雙方は誤斷を回避し、対決を減らし、危機を管理することに取り組み、米側(cè)の過度な「自由航行デモンストレーション」と中國側(cè)の島しょ建設(shè)の過度な軍事化によって摩擦ないし衝突が生じる懸念を何よりも避けなければならない。

(2)中國ASEAN はCOCの協(xié)議を加速し、「南シナ海の平和と安定は中國とASEAN諸國が共に守る」という目標を具體化すること。

(3)國連海洋法條約第123條の「閉鎖海又は半閉鎖海に面した國の間の協(xié)力」義務(wù)に関する規(guī)定に基づき、海洋環(huán)境及び海洋生物資源の保護等にかかわる「南海沿岸國協(xié)力メカニズム」設(shè)立の可能性を検討すること。このような協(xié)力は相互信頼を強め、衝突を避けるのに有利だけでなく、南シナ海は周辺諸國の「共通の庭」になるという運命共同體の意識を育成していくプロセスにもなる。

(4)中國と南シナ海沿岸諸國は危機管理と紛爭解決を目的とする雙方間の協(xié)議メカニズムを次第に立ち上げていくこと。南シナ海の平和と安定は地域諸國の切実な利益と福祉に係わるだけではなく、國際社會全體の重大な関心事でもある。(八牧浩行

■筆者プロフィール:八牧浩行

1971年時事通信社入社。 編集局経済部記者、ロンドン特派員、経済部長、常務(wù)取締役編集局長等を歴任。この間、財界、大蔵省、日銀キャップを務(wù)めたほか、歐州、米國、アフリカ、中東、アジア諸國を取材。英國?サッチャー首相、中國?李鵬首相をはじめ多くの首脳と會見。東京都日中友好協(xié)會特任顧問。時事総合研究所客員研究員。著?共著に「中國危機ー巨大化するチャイナリスクに備えよ」「寡占支配」「外國為替ハンドブック」など。趣味はマラソン(フルマラソン12回完走=東京マラソン4回)、ヴァイオリン演奏。

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