中國メディアから、アリババの話題が途切れることはない。カリスマ創(chuàng)業(yè)者、ジャック?マーが退任して1年経つが、業(yè)績は好調(diào)そのものだ。最近はグループ企業(yè)アント?グループ（舊アント?フィナンシャル）のIPOが、大きな話題となっている。そのアリババには、本當に死角はないのだろうか。最新の報道からアリババの戦略を探っていこう。今回はB2B篇（零售通、営業(yè)庁、阿里巴巴國際站）である。

■多様なB2Bサイト

アリババには少なくとも5つの主要B2Bプラットフォームがある。そこへ「営業(yè)庁」が新設された。

アリババの創(chuàng)業(yè)事業(yè)はB2Bである。企業(yè)のホームページをアップして、新しいB2Bビジネスをマッチングする仕事だった。今では「淘寶」「天貓」など2Cビジネスばかり注目されているが、B2B事業(yè)はバリバリに健在だ。

阿里巴巴國際站…1999年創(chuàng)業(yè)以來の歴史を持つ。全世界のバイヤー（貿(mào)易商、卸売商、小売商、製造商）に優(yōu)秀な中國サプライヤーをマッチング。

1688網(wǎng)…オリジナルの名稱は「阿里巴巴中國交易市場」、國內(nèi)中小企業(yè)間の取引仲介サイト。

淘工廠…2013年スタート。サプライヤーと良質(zhì)な工場をマッチング。

零售通…2015年、1688網(wǎng)から中小小売業(yè)向けの部分を、零售通として分離。小売店舗のオンライン化を推進し、効率経営を支援。

農(nóng)村淘寶…2014年スタート。地方政府と提攜し、全國10萬の農(nóng)村物流ステーションを設置。100億元（1550億円）を投資。

これらに加え「営業(yè)庁」が新しいB2Bビジネスの窓口になるという。

■“地上部隊”営業(yè)庁を設置

アリババはこのほど、ネット通販出店者のための運営センター「営業(yè)庁」を開設した。これは何を意味するのだろうか。

防疫期間中、淘寶への新規(guī)出店者は、前年同期比で2倍に増えた。1日4萬人が淘寶で“創(chuàng)業(yè)”したことになる。とくに輸出企業(yè)が、國內(nèi)內(nèi)販へ參入するケースが目立った。この1年では新たに15萬の100萬元（1550萬円）ショップ、2000を超える1000萬元（1億5500萬円）ショップが誕生した。

とにかく防疫期間中、苦境に陥った中小商店や工場が淘寶に殺到した結(jié)果、システム運用やサービスにおいて、新しい運営モデルが必要になった。営業(yè)庁はそれらの問題に対処するオフラインセンターである。

全國初の営業(yè)庁は8月中旬、浙江省金華市にオープンした。顧客に接近し、その要望に応えるとともに、新たな企業(yè)を発掘する。金華営業(yè)庁の目標は、5000社をアリババ系ネット通販へ引き込むため、2萬社を“養(yǎng)成”することにある。アリババは通販サイトを“空軍”、営業(yè)庁を“地上部隊”と位置付けている。

またこの地上部隊は、今後予想される受注生産モデルC2B、またはC2M（Customer to Manufacture）への橋渡しも期待されている。

■零售通、中小商店の売り上げを2倍に

零售通は最近、新政策を発表した。これまでの小売店政策をさらに強化する內(nèi)容だ。

中國には600萬のオフライン零細小売店があり、その背後には600萬の家庭と1000萬以上の従業(yè)員がある。日々2億の消費者に接し、日用品業(yè)界売上の40％に貢獻している。

零售通は8月末、“W計畫”を発表した。全國150萬の社區(qū)（コミュニティ）の小売店に、デジタルオペレーティングシステムを開放する內(nèi)容だ。零售通と菜鳥（物流子會社）は共同で、サプライチェーンを構(gòu)築する。それにより5000のサプライヤー、1萬以上のチャンネルから新商品の供給を受けられる。

現(xiàn)在、オフライン零細小売店の平均日販は3000～5000元（4萬7000～7萬8000円）程度と見られる。それがW計畫に加入すれば、1萬元（15萬5000円）突破も有望という。アプリと零售通POSを利用するだけで済み、実際にPOSを?qū)毪筏?0萬店では、日販が5800元（9萬円）アップしたそうだ。

■國際站は世界一の越境Eコマース

アリババは最近「阿里巴巴國際站深度報告」を発表した。國內(nèi)企業(yè)のB2B輸出業(yè)務は、まだ初歩的段階にあると考えている。その理由は以下3點にある。

1…越境EコマースB2Bのデジタル化率は2～3％に過ぎず、まったく進んでいない。

2…世界の産業(yè)サプライチェーンにおいて、中國企業(yè)の輸出は不可欠のピースである。

3…従來型輸出貿(mào)易は、経路が複雑で市場情報に乏しい。

阿里巴巴國際站の活躍する余地は大きい。2020年3月期決算では、売上96億元（1500億円）と前年比17％伸びた。190の國家と地區(qū)、2000萬のバイヤー、20萬のサプライヤー、と取引し、すでに世界一の規(guī)模だ。

今後の課題は、売上構(gòu)成を標準化することにある。2019年は、會費50％、営業(yè)サービス30％、サプライチェーンサービス20％だった。これを33．3％ずつ均等に持っていく。商品売上以外のサービスを重視する。新たに輸出を試みる中小企業(yè)へ、稅関、物流、送金、決済など、ワンストップサービスを提供していく。その成果か、2020年4～6月期売り上げは、前年同期比43％増と、伸びは加速した。

■まとめ…B2B事業(yè)は健在

アリババのB2B事業(yè)は、零細商店や個人事業(yè)家へのビジネスインフラを提供する、という設立當初からの理念を守っているようだ。零售通や國際站は、守るだけでなく積極的な攻勢に出ている。一方、農(nóng)村淘寶の一部機能などは、時代にそぐわなくなっている。しかし、アリババの新しい狀況にアジャストする能力は極めて高い。次に何を打ち出してくるか、楽しみですらある。當面アリババは、中小企業(yè)にとって、不可欠の存在であり続けそうだ。死角らしきものは見當たらない。

■筆者プロフィール：高野悠介

1956年生まれ、早稲田大學教育學部卒。ユニー株（現(xiàn)パンパシフィック）青島事務所長、上海事務所長を歴任、中國貿(mào)易の経験は四半世紀以上。現(xiàn)在は中國人妻と愛知県駐在。最先端のOMO、共同購入、ライブEコマースなど、中國最新のB2Cビジネスと中國人家族について、ディ－プな情報を提供。著書：2001年「繊維王國上?！箹|京図書出版會、2004年「新?繊維王國青島」東京図書出版會、2007年「中國の人々の中で」新風舎、2014年「中國の一族の中で」Amazon Kindle。