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<點描?北京五輪>朝倉浩之の眼?「うまい!」北島発言を伝えるメディアへの疑問

Record China    2008年8月4日(月) 20時19分

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北京五輪に向け、続々と北京入りする日本選手の先鋒を切ったのが、競泳男子平泳ぎの北島康介(日本コカ?コーラ)。その彼が選手村での食事について「今まで(の選手村)で一番うまい」と発言した。寫真は選手村のメインレストラン。

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その他の寫真

北京五輪に向け、続々と北京入りする日本選手の先鋒を切ったのが、競泳男子平泳ぎの北島康介(日本コカ?コーラ)。その彼が選手村での食事について「今まで(の選手村)で一番うまい」と発言した。これについては、日本でも大いに話題になったそうだし、中國でも、現(xiàn)地メディアが取り上げ、大きく報道された。飯は粘り気があり日本人好み、味噌汁もダシが効いていて…ということで、各選手にも評判がいいようだ。

さて、私が一連の「北島発言」で疑問に思ったのはメディアの取り上げ方である。

事前にJOCが選手村の“レシピ”を入手し、作った味噌汁がダシの入っていない酷いものだったそうだ。これと「比較して」うまかったという…

この「日本側(cè)が(ある意味)“勝手に”作った味噌汁」に比べて、「選手村の“本物の”味噌汁」が「意外にうまかった」というのは、比較するものが本末転倒で、何だか論理的におかしいような気がするが、それはさておき、指摘したいのは別の點だ。

この発言についての各新聞の報道を見ていると、一様に「意外に好評」「不安があったが…」などなど、「思いもかけず」“うまかった”という取り上げ方がほとんど。直接はその不安に言及しなくとも、概して、中國側(cè)のサービスに対して、「否定的」なイメージが先行した伝え方ばかりだった。

確かに、ここ最近、中國食品に対する安全問題が取りざたされており、日本國內(nèi)でも深刻な不安が広がっている。食品流通のグローバル化が進む中、他國の食品安全の問題は、決して他人事では済まされないのは當(dāng)然だ。もともと持っている「中國食品への不安」が今回の報道の視點が生み出したのだろうが、私は非常に視野の狹い見方だと感じた。

実は、中國では米飯は食べるが、どちらかというと南方地域(上海以南)が主で、特に北京や河北省、山東省などでは、あまり一般的な主食とはいえない。また南方で食べられる米は日本の米とは異なり、少しパサパサした感じのものが多い。中國國內(nèi)では東北部で、日本米に近い粘り気のある米を生産しているが、決して普遍的なものとはいえない。

そして、もちろんのこと、味噌汁など全く食べられない。最近、北京などの都市部で日本料理店が多く見られ、日本食がかなり一般的になってきたが、それでも味噌汁は「塩っ辛い」といって嫌う中國人が多いのだ。

ここで、我々がはっきりとさせておかなければならないのは、世界各國から數(shù)多くの國々がやってくる北京五輪で、たった一國の選手団が食するに過ぎないであろう「味噌汁」を選手村が用意し、それを北島選手らに「うまい」と言わせたことの意味合いである。

私がこの発言を聞いたときに、真っ先に感じたのは、決して全ての日本メディアが伝える「意外だ」という感覚ではなく、中國側(cè)の徹底したホスピタリティー(もてなし)の心だ。アテネ五輪では、極東の小さな島國のために、わざわざ「おいしい味噌汁」を用意することなど、運営側(cè)は微塵も考えていなかった。では、中國はお隣の國だから、「味噌汁」を用意するのが當(dāng)然のことなのだろうか…。中國の「もてなし」の結(jié)果である味噌汁を“上から目線”で「“意外に”うまい」と講評することが妥當(dāng)なのだろうか。それを日本を代表する大メディアが軒並み、おなじ視點で語っているところに、今の日本のオリンピック報道、そして中國報道のいびつさを感じるのは私だけだろうか。記事のうち、一つとして、中國側(cè)が「おいしい味噌汁」を用意したホスピタリティに敬意を表する視點から書かれた記事がなかったことが私にとっては意外であり、殘念に思うのだ。

私は過去3年間、五輪の運営スタッフが各方面で、懸命の準(zhǔn)備を進めてきたことを知っている。もちろん、五輪を開催する以上、懸命の準(zhǔn)備をするのは當(dāng)然だ。だが、「だから味噌汁くらい用意して當(dāng)然」なのだろうか。

おそらく、日本メディアからすれば、北京五輪を通して見えてくるのは(見たいのは)「五輪を國威発揚に利用しようとする脅威の大國、中國」という“國家像”だけなのかもしれない。けれども、日本の皆さんには、ぜひ想像力を働かしてほしい。この北京五輪の向こう側(cè)、表に出てこない場所にどれだけの人たちがいるのかを。実は、北京五輪もやっぱり“人”が作り上げているのだ。人が努力し、悩む…。五輪テスト大會を運営するスタッフの晝夜を問わない努力、改善への工夫の連続、毎日の苦心の過程の一端を見てきて、私は心から敬意を表する気持ちで一杯となった。

そして、お隣の國、日本の選手たちに最大のもてなしをしたい、という思いで、一杯の味噌汁を作り上げる…もちろん味噌汁を作るのは人間…日本メディアが矛先を向ける「國家権力」ではないことを改めて指摘しておきたい。

念のために言っておくが、北島選手は自ら「“意外に”うまい」などという不遜なことはいわない。一流のアスリートが主催側(cè)の用意した食事をそんな失禮な表現(xiàn)で形容するはずがない。それを伝え手の側(cè)で歪めたニュアンスで伝えることは、外國報道の本質(zhì)を損なうのだが、なぜか中國報道では、「それがよし」とされているように思えてならない。

たかが味噌汁、されど味噌汁…この北島発言は非常に単純な例だが、これに象徴される問題の根は深い。もちろん、ネガティブ報道をするなという気など全くない。中國は國際基準(zhǔn)に照らして、改善すべき問題が山ほどあり、それを外國メディアが指摘することは「中國市民のため」にも非常にプラスになる。

だが、一連の中國報道にかかっている得體の知れないフィルターは今すぐにでも取り外すべきだ。近視眼的に先入観を持って見るのではなく、もう少し広い目で見てはどうか。國內(nèi)報道なら當(dāng)然の、この視點が、こと中國報道になると、一辺倒の「上から目線」になるのはどうしてだろう…。

8月8日から、中國の人たちが懸命に作り出そうとしている大イベントを世界のみんなで見守り、良き點には素直に拍手し、そうでない點は、あるがままに言おうではないか…。決して省くことなく、歪めることなく…。それこそが両國の理解につながると思うのだが、どうだろう。

<注:この文章は筆者の承諾を得て個人ブログから転載したものです>

■筆者プロフィール:朝倉浩之

奈良県出身。同志社大學(xué)卒業(yè)後、民放テレビ局に入社。スポーツをメインにキャスター、ディレクターとしてスポーツ?ニュース?ドキュメンタリー等の制作?取材に関わる?,F(xiàn)在は中國にわたり、中國スポーツの取材、執(zhí)筆を行いつつ、北京の「今」をレポートする中國國際放送などの各種ラジオ番組などにも出演している。

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