Record China 2008年8月27日(水) 16時31分
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北京五輪がついに閉幕。週間にわたる大會期間中の出來事について、振り返ってみたい。あえて1回目に取り上げたいのは、観客のマナーの問題だ。寫真は女子ビーチバレー會場。
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■■■■■2008年8月24日 ■■■■■
【その他の寫真】
北京五輪閉幕まで、あと1時間ちょっととなった。私自身は期間中、様々な活動を通じて、北京五輪にかかわり、また取材を続けてきた。2週間にわたる大會期間中の出來事について、振り返ってみたい。
あえて1回目に取り上げたいのは、観客のマナーの問題だ。これは、大會開始前から様々な場面で強調されてきた。マナーといっても色々あり、よく話題になるのは生活上のマナー。街中でタンを吐き捨てたり、ごみをポイ捨てしたり、くわえタバコをしながら歩く、という行為が何の罪悪感もなしに行われている様子は、國際社會から批判を浴びてきた。
ただここで取り上げるのは、競技場內で観戦する観客のマナー問題である。私の知る限り、「加油?。à螭肖欤┲袊工未舐曉?、黃色のTシャツを著た「応援軍団」などが大きく報道され、“やりすぎではないか”“自國に偏りすぎ”“他國の邪魔をするような聲援は疑問”などの意見が多く出ているようだ。
「がんばれ!中國」の大聲援は確かに他國の選手たちに大きな脅威を與える。それでもって、パフォーマンスに影響を全く與えないかといえば、多くの選手たちは「関係ない」と答えるが、それは表向き。內心では、“やりにくい”のは確かだ。
ただ、この大聲援を、それだけでもって、マナー問題に含めるのはどうだろう。私はむしろ、この大聲援に、北京五輪を待ち望んでいた市民の期待感や喜びの気持ちを感じるし、精一杯、地元選手を応援しようという彼らの気持ちは全く自然のものだと考える。私も會場にいると、その大聲援に「勘弁して欲しいなあ」と苦笑することも多いが、一方で、「たっぷり聲援を送って、スタジアムでゲームを楽しむ感動を味わって欲しい」と思っている。
“アウェイ”の選手たちは、その聲援に打ち勝つ精神的強さが必要なのは言うまでもないし、また“ホーム”の選手にしても、場合によっては、この聲援が逆に大きな重荷になって、成績を崩してしまった選手がいる。それもまたオリンピックだ。この大聲援そのものの功罪を論議するのは、少し議論がずれている。
ただ、その大聲援もタイミングが大切だ。特に、靜寂が要求されるテニスなどのスポーツでは、聲援のタイミングが選手のパフォーマンスにも影響することは周知の通りだ。
ここ數年、特に世界的に注目されている女子テニスの中國第一人者、李娜の準決勝での行為が大きな問題となっている。
事件は第2セット、5?4で李娜リードで迎えた第10ゲームにおきた。サービスを打とうとする李娜だが、トスを上げた瞬間に、聲援がかかり、どうも打ちにくそうにする。そのポイントは李娜がとり、會場內は大聲援に包まれるが、そのあと、カメラがアップで捕らえた李娜は観客に対して、英語で「シャラップ(黙れ)」と言っている様な口の動きを見せたのだ。
その後、敗れて決勝進出ならなかった李娜は「プレイが思い通りにならなかったためにイライラしていた」とその理由を説明した。だが、この「黙れ」事件は大きな波紋を呼ぶ。特にネット上では議論が展開され、「やはり會場がうるさすぎた」「聲援はやりすぎだった」とする擁護派と、「自分の力がないことを観客のせいにするな」「歓聲の中でもきちんとプレイするのが一流選手」などという反対派に分かれて、大きな論爭となっている。
ただ、この試合にも伏線があった。試合開始當初から、攜帯電話の音が鳴り響いたり、赤ん坊が泣き叫んだりという明らかな「マナー違反」もあった。そして、相変わらずの「加油!中國」コールがサーブの直前まで続き、主審が何度も「靜かに!」とマイクを通じて、會場に呼びかけることも度々だった。だが、それでも、最後まで、ほとんど改善されなかった。
李娜とすれば、もちろん、思い通りのプレイができないことへのイライラや不満がたまっていたこともあるだろうが、會場の聲援がプレイへの集中を妨げ、全く「聲援になっておらず」、鬱憤がたまってきていたことは、十分理解できる。
「自國の応援に対し、黙れとは何事か!」という意見も多くあったが、それは「良き応援」が行われてこそのもの。プレイヤーの邪魔をしておいて、「自國の応援」もあったものではない。
このテニスにおけるマナー問題は、以前行われた五輪テスト大會でも、同様の現象が見られ、このブログでも指摘してきた。北京五輪に向けて、「観戦指南書」なるものも発行され、観戦客に“テニスの正しい見方”を呼びかけてきたが、結局、本番でもその問題は解決せず、自國のエースのプレーに影響を與えてしまったというわけだ。
ただ、以前も書いたが、この現象が全ての競技にあてはまるというわけではない。
私は卓球、バドミントンなど、中國勢が非常に強い種目の競技場に足を運び、ここで怒號のような「加油(ジアヨウ)」コールを何度も體験してきた。だが、そこでの歓聲のタイミングは見事というほかない。
ここぞというところで會場中が靜寂に包まれ、選手の素晴らしいパフォーマンスが出た瞬間にものすごい歓聲が會場を包む…私はこれらの會場で、「靜と動」を見事に使い分けた「応援の成熟」を感じた。観客の皆さんが本當に競技を良く知っているなあという実感だ。もちろん、中には、それを“外す”人もいないわけではないが、それもまた、観客の見事な聲援が帳消しにしてしまう。
テニスは中國でまだ新しいスポーツだ。近年、急速に力をつけてきているが、決して一般市民の間で浸透しているスポーツとはいえない。
結局は、その競技がどれだけ観客の間に浸透しているかというのかが、「聲援のうまさ」にもつながっているのだろう。だから、テニスと卓球では観客の成熟度も全く異なる。もちろん、その意味での「マナー」を向上させていく努力は必要だし、北京五輪を通じて、多くのマイナースポーツが市民の間に浸透していってほしいと思う。
ただ、単に「加油」の聲援が大きいことをマナー違反に結びつけるのは、いかにも短絡的だ。本當の「マナー違反」とは、そんなレベルのものではないと思う。
<注:この文章は筆者の承諾を得て個人ブログから転載したものです>
■筆者プロフィール:朝倉浩之
奈良県出身。同志社大學卒業(yè)後、民放テレビ局に入社。スポーツをメインにキャスター、ディレクターとしてスポーツ?ニュース?ドキュメンタリー等の制作?取材に関わる。現在は中國にわたり、中國スポーツの取材、執(zhí)筆を行いつつ、北京の「今」をレポートする中國國際放送などの各種ラジオ番組などにも出演している。
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