2009年02月、臺(tái)北市にある國(guó)立故宮博物院の院長(zhǎng)が2月に北京訪問、翌3月には北京の故宮博物院院長(zhǎng)が臺(tái)灣訪問し、中臺(tái)60年間の歴史の中で初めて正式の相互訪問が実現(xiàn)しつつある。両博物院の學(xué)術(shù)交流はすでに十?dāng)?shù)年続いているが、今回の交流本格化は昨年臺(tái)灣側(cè)に対中接近をうたう馬英九政権が誕生したためだ。

【その他の寫真】

北京側(cè)の収蔵品を臺(tái)灣に貸し出す形で、今年10月に臺(tái)北で開かれる清朝皇帝「雍正帝」の特別展が初めて合同開催される見通しだ。

■中臺(tái)の分裂を象徴する存在が急接近

かたや「世界の4大博物館」、かたや「世界文化遺産」と國(guó)際的に著名な「二つの故宮」は、臺(tái)灣海峽にある要塞?金門島と並んで中臺(tái)の分裂を象徴する存在だ。10月の合同展に向け現(xiàn)場(chǎng)のキュレーターはすでに、展示候補(bǔ)品の洗い出しから、打ち合わせ、移送の手配など大変な作業(yè)に忙殺されているだろう。

こうした政治が絡(luò)んだ展覧會(huì)で思い起こされるのは1999年、中國(guó)の建國(guó)50周年を機(jī)にロンドンで開かれた「陝西省文物精華展」。當(dāng)時(shí)の國(guó)家首脳である江沢民氏も訪英しただけに大規(guī)模な準(zhǔn)備が展開され、大英博物館側(cè)の擔(dān)當(dāng)者の述懐では、「最初のうち中國(guó)側(cè)は月並みな展示物候補(bǔ)しか示さなかったが、大英博側(cè)の要求でそれまでに公開されたことがなかった多様な展示が実現(xiàn)した」という。その成果はこの時(shí)一瞬だけの「消えもの」ではなく、「Gilded Dragon?Buried Treasures from China’s Golden Ages」(by Carol Michaelson、 British Museum Press)という書籍に結(jié)晶している。89年の天安門事件の悲劇から10年が経過し、國(guó)際社會(huì)に徐々に復(fù)帰しつつあった中國(guó)にとってはおろそかにできないという政治環(huán)境もこの展覧會(huì)の充実を後押ししたと思われる。

アート愛好者としては、やはり第二次世界大戦から國(guó)共內(nèi)戦という歴史的な経緯から二つに分かれてしまった中華民族の寶を一まとめに見てみたいと素直に思う。端的にいえば、世界遺産に登録された北京の紫禁城という大きな器の中に、かつて國(guó)共內(nèi)戦が激化する1948年に大量に（ただし精選して）臺(tái)灣に持ち出された逸品を眺めることを想像するのは楽しい。

ただ、臺(tái)灣側(cè)は今のところ、首相に相當(dāng)する劉兆玄行政院長(zhǎng)が中國(guó)本土への貸し出しについて「本土側(cè)が差し押さえ免除に同意しなければ実現(xiàn)は難しい」と強(qiáng)い警戒感を示しており、こうした夢(mèng)想の実現(xiàn)は難しいとみられている。

　しかし、中國(guó)がもし臺(tái)灣所蔵の品々を差し押さえたり、すり替えたりすれば、世界の美術(shù)?博物界に恥をさらすだけではなく、政治的にも「中臺(tái)統(tǒng)一」という建前を自ら葬り去る愚挙である。まあ、人間の歴史はそういう愚挙にあふれているのかもしれないが。

早期の臺(tái)灣獨(dú)立を求める勢(shì)力の一部からは、「獨(dú)立と引き換えに故宮博物院の文物を中國(guó)に返そう」という主張もあるそうだ。

それでも、愚挙がなければみながハッピー、もしあっても、統(tǒng)一を望まない臺(tái)灣側(cè)の勢(shì)力にとっては変な意味で「メリット」が出てくるのだから、「美術(shù)品數(shù)60萬(wàn)8985件冊(cè)」「すべての所蔵品を見るためには8年余りもかかる」（ネットの百科事典Wikipedia「故宮博物院」の項(xiàng)）という膨大な所蔵品の百點(diǎn)やそこらくれてやるつもりでやってみてもよかろうに。と思うのは、門外漢の暴論だと言われるのだろうか。

　臺(tái)灣側(cè)のメリットはひとつ合同展にとどまらない。融和姿勢(shì)を強(qiáng)める中國(guó)に対して、経済面での譲歩などさまざまメリットを探る手がかりにもなるし、たとえば所蔵品を半永久的な「貸與」などの形で貸し出せば、金銭面でのプラスにもなる。07年2月に新裝オープンとなり充実したとはいえ、點(diǎn)數(shù)が多すぎて展示しきれないほどの所蔵量なのだから、活用すべきだろう。

多すぎる?yún)i品は中國(guó)の兵馬俑や日本の縄文土器など、世界的な価値を持ちながら、活用しきれていないようにみえる品々と似ている。大英博物館の日本擔(dān)當(dāng)者はかつて「世界最古の土器である縄文土器が展示できればぜひほしい」と言っていたし、兵馬俑についても世界のアート?博物館関係者の気持ちは同じだろう。

■「百利」あって「一害」もない交流の拡大

　中臺(tái)に限らず國(guó)際的な交流の拡大は、見る側(cè)にとって「百利」あって「一害」もない。展覧會(huì)で貴重な品々を見ることができるだけではなく、先に紹介したような書籍といった形で資料、データベース化も進(jìn)む。

今回は、中臺(tái)の接近ほどの大きな政治的な流れであれば、10月の展示會(huì)にとどまらずアートの世界でもさまざまな成果が期待できる。1999年當(dāng)時(shí)のロンドンのキュレーターたちが頑張って壁に大きな穴を開けたように、中臺(tái)雙方の専門家の奮闘が待たれる。ちなみに「二つの故宮」はそれぞれに、英語(yǔ)ばかりか日本語(yǔ)版の解説もホームページで展開して日本の観光客への対応にも努めている。（文章：Kinta）

■プロフィール Kinta：大學(xué)で「中國(guó)」を?qū)煿ァ?990年代、香港に4年間駐在。06年、アジアアートに関する大英博物館とロンドン大學(xué)のコラボによるpostgraduateコース（1年間）を修了。08年「このごろチャイナ」を主體とした個(gè)人ブログ「キンタの大冒険」をスタート。