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中國にとってインフレリスクの回避は最大の至上命題。食品価格の上昇により一般庶民の生活が圧迫され、不満の聲は日増しに高まっている。中國政府がインフレ抑止策として志向しているのが人民元レートのさらなる引き上げだ。寫真は陝西省寶鶏市の駅前風(fēng)景。
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中國にとってインフレリスクの回避は目下最大の至上命題だ。インフレは庶民の生活を直撃する。中國での今回のインフレの特徴は食品価格の上昇が顕著なこと。これによりエンゲル係數(shù)の高い一般庶民の生活が圧迫され、不満の聲は日増しに高まっている。中國政府が志向しているのが人民元レートのさらなる引き上げだ。
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チュニジアからエジプト、さらにはバーレーン、リビアまで、最近起きた獨(dú)裁國家の騒亂は物価上昇による國民の生活疲弊が背景となっている。1989年の中國天安門事件も大幅インフレが大衆(zhòng)の蜂起のきっかけとなった。
中國経済は、昨年4四半期の実質(zhì)成長率が前年比9.8%と、予想を大幅に上回る高い伸びとなった。さらに今年に入っても、最低賃金上昇による消費(fèi)拡大、インフラ建設(shè)や民間設(shè)備投資の拡大などにより、高成長が続き、過熱気味。春節(jié)(舊正月=2月上旬)関連需要も絶好調(diào)だった。2011年の経済成長率も10%前後に達(dá)するとの見方が大勢だ。
一方で景気過熱からインフレ圧力は強(qiáng)まるばかり。消費(fèi)者物価上昇率(前年同月比)は昨年11月に5.1%と警戒ラインの5%を上回り、その後も高止まりしており、今年1月は4.9%。中でも食品は10.3%増に上った。インフレの要因は、大幅賃金上昇、食料品価格の上昇、國際商品市況の高騰、米國など先進(jìn)國の超金融緩和による過剰な資金流入―など複合的。今後も、冷害、干ばつなど天候不順や國際的投機(jī)マネーの流入が物価高騰に拍車をかける恐れがある。ニンニク、ショウガなど一部農(nóng)産物価格はさらに上昇、インフレ急進(jìn)のリスクは高まる一方だ。
中國政府はインフレ動向に神経を尖らしている。物価高騰を抑制するため中國人民銀行は昨年10月、12月に続き、2月8日に3回目の利上げを斷行。さらに20日、預(yù)金準(zhǔn)備率を0.5%引き上げた。しかし、先進(jìn)各國が超金融緩和を継続する中での利上げは世界の余剰資金の中國への集中を加速させ、物価上昇に拍車をいかける恐れが大きい。
そこで、中國政府が志向しているのが人民元レートのさらなる引き上げ。インフレ抑制には輸入物価下落や外國資金流入抑制につながる為替レート引き上げが有効だからだ。中國事情通は「中國政府は、今後年率で少なくとも6?7%程度の切り上げは容認(rèn)する」と見ている。
実際、人民元の対ドルレートは21日の上海外國為替市場で過去最高値を記録。中國人民銀行(中央銀行)が、この日の人民元の基準(zhǔn)値を1ドル=6.5705人民元と、3日連続で過去最高値に設(shè)定したことが背景となった。人民元は2010年6月のドルペッグ(連動)制廃止以降3.97%上昇している。
ただ、人民元の引き上げは、中國製品の輸出競爭力をそぎ、もう一つの至上命題「経済の持続的拡大」を危うくするリスクがある。中國は高い経済成長を?qū)g現(xiàn)することによって、増えたパイを13億人に分け與え、庶民の不満を抑えているからだ。まさに「中國にとって社會の安定と経済成長は車の両輪であり、走り続ける必要がある」(元駐中國日本大使)わけで、中國政府は大きなジレンマに陥っている。
地方政府の開発融資が焦げ付く恐れ
庶民の不満のもう一つの矛先は住宅問題だ。昨年からマンションなど不動産価格の高騰が続いている。しかも所得格差が拡大し一般庶民は大都市での住居購入が困難になりつつあり、上海や北京では住居所持をあきらめて地方に就職口を探す労働者が増大している。中國政府は価格高騰を抑制するために、マンション保有規(guī)制など相次ぐ抑制策を打ち出し、一部大都市で不動産保有稅の導(dǎo)入を開始。低所得者向け住宅の建設(shè)に注力しているが、旺盛な需要に追いつかず、「焼け石に水」の狀態(tài)だ。
不動産はまさにバブルと言っていい狀態(tài)。地方政府が工業(yè)団地やショッピングセンターなどの開発プロジェクトを推進(jìn)するために設(shè)立した融資プラットフォーム會社向け貸し出しが巨額に達(dá)しており、その焦げ付きの恐れが囁かれている。地方政府の開発競爭バブルがはじけることが目下の最大のリスク要因というわけだ。中國のインフレ問題から目が離せない。<巨象を探る?その9>
<「巨象を探る」はジャーナリスト?八牧浩行(株式會社Record China社長?主筆)によるコラム記事。=Record China>
■筆者プロフィール:八牧浩行
1971年時事通信社入社。 編集局経済部記者、ロンドン特派員、経済部長、常務(wù)取締役編集局長等を歴任。この間、財界、大蔵省、日銀キャップを務(wù)めたほか、歐州、米國、アフリカ、中東、アジア諸國を取材。英國?サッチャー首相、中國?李鵬首相をはじめ多くの首脳と會見。東京都日中友好協(xié)會特任顧問。時事総合研究所客員研究員。著?共著に「中國危機(jī)ー巨大化するチャイナリスクに備えよ」「寡占支配」「外國為替ハンドブック」など。趣味はマラソン(フルマラソン12回完走=東京マラソン4回)、ヴァイオリン演奏。
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