※中國(guó)に渡って10年。現(xiàn)在、「中國(guó)で最も有名な日本人俳優(yōu)」と稱される矢野浩二氏によるコラム。

【その他の寫真】

最近、上海で新しいドラマの撮影に入っている。人気インターネット小説が原作のドラマ化で、タイトルは「浮沈」という。ある國(guó)有企業(yè)が行う総額7億元の企業(yè)改革。これを受注しようと、日中の企業(yè)が激しい爭(zhēng)奪戦を繰り広げる。三者の間に権力?利益?愛(ài)憎をめぐる戦いが繰り広げられる社會(huì)派ドラマだ。中國(guó)ではこの類の社會(huì)派ドラマはそれほど多くは作られておらず、圧倒的に多いのは歴史物だ。全體の7割近くを占めるのでないか。

戦爭(zhēng)ドラマでの日本人役というのは、大半がステレオタイプな役（勧善懲悪における悪役）がほとんどである。私が渡中して2002?2006年頃まで演じていたのが正にそれである。しかし、最近ごくわずかであるが、日本人の內(nèi)面を描いた役が増えつつある。

こちらで活動(dòng)する20?30代の日本人の役者も増えた。従來(lái)は中國(guó)の俳優(yōu)が奇妙な日本語(yǔ)で演じていた日本人役は、リアリティある日本人役者にとって替わられつつある。そして、それを観た中國(guó)の視聴者も、彼らに対して何かを感じるようになっている。

私は過(guò)去、いくつものステレオタイプな日本軍人を演じてきた。どこの國(guó)で芝居しようが、どんな役を演じようが、悪役であろうが何であろうが「役は役」。そのような役を演じることに、「日本人の恥だ」とか「日本のイメージを下げた」と一度たりとも感じたことはない。

ひとつ、不思議に思うことがある。

中國(guó)映畫やドラマの中日本人は、ハッピーエンドに終わることは先ずありえない。戦爭(zhēng)ドラマの日本軍人役はほとんどが最後に殺される、または自決する。善人役も何本か演じたが、最後には病気で死んだりする。こんな現(xiàn)狀を見(jiàn)ると、「日本人役はこうでいいんだ」「日本人役には幸せな結(jié)末を與えてはいけない」的な要素が根底にあるのかもしれないと感じる。

実際わたしが2005年當(dāng)時(shí)、まだ必死でステレオタイプの軍人役を演じていたころ、現(xiàn)場(chǎng)の監(jiān)督がこう言った。「日本人役は、いか殘虐卑劣に演じるかだけを考えればいい」。日本の軍人とはいえ現(xiàn)実は當(dāng)然、殘虐な人間ばかりではなく、これは一部に過(guò)ぎない人間像だ。しかし、當(dāng)時(shí)の自分はそれをただ聞くだけしかできなかった。のちに、?浩二、辛い役ばかりやらせて申し訳なかった。これからは自分のやりたいと思える役だけやれ?と、ある中國(guó)人監(jiān)督が心から諭してくれた。

現(xiàn)在撮影中のドラマは、臺(tái)本の中の日本人描寫も納得できる部分が多くある。果たして、今回の結(jié)末は如何に？

●矢野浩二（やの?こうじ）

バーテンダー、俳優(yōu)の運(yùn)転手兼付き人を経てTVドラマのエキストラに。2000年、中國(guó)ドラマ「永遠(yuǎn)の戀人（原題：永恒戀人）」に出演し、翌年に渡中。中國(guó)現(xiàn)地のドラマや映畫に多數(shù)出演するほか、トップ人気のバラエティー番組「天天向上」レギュラーを務(wù)める?，F(xiàn)在、中國(guó)で最も有名な日本人俳優(yōu)。2011年、中國(guó)共産黨機(jī)関紙?人民日?qǐng)?bào)傘下の「環(huán)球時(shí)報(bào)」主催「2010 Awards of the year」で最優(yōu)秀外國(guó)人俳優(yōu)賞を日本人として初受賞。中國(guó)での活動(dòng)10年となる同年10月、自敘伝「大陸俳優(yōu) 中國(guó)に愛(ài)された男」（ヨシモトブックス）を出版。