八牧浩行 2018年4月2日(月) 6時50分
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東西冷戦が終結(jié)した後、「唯一の超大國」として君臨してきた米國と「中華民族の偉大な復興」スローガンを掲げる中國。経済、軍事両面で將來の覇権を賭けた攻防が激化している。経済の相互利益の拡大を通じ、厳しい対立を回避できるかどうかが今後を占う鍵となる。資料寫真。
東西冷戦が終結(jié)した後、「唯一の超大國」として君臨してきた米國と「中華民族の偉大な復興」スローガンを掲げる中國。経済、軍事両面で將來の覇権を賭けた攻防が激化している。経済の相互利益の拡大を通じ、厳しい対立を回避できるかどうかが今後を占う鍵となる。
國際通貨基金(IMF)によると、中國の國內(nèi)総生産(GDP)は2014年に、実態(tài)に近い購買力平価(PPP)で米國を追い抜き、世界一になった。世界銀行は実質(zhì)GDPでも10年以內(nèi)に拮抗すると予想。消費市場としても実質(zhì)世界一であり、多くの國にとって貿(mào)易相手國のトップを占める。米國、歐州、韓國、東南アジア諸國なども中國のパワーを無視できない。
◆AI?ITでも覇を競う
人工知能(AI)やロボット、フィンテック(金融技術)、情報技術(IT)など次世代産業(yè)を左右するビッグデータ分野で、米國と中國が覇を競っている。インターネットの閲覧や買い物履歴など経済のデジタル化が進行。ビッグデータは消費者の嗜好分析やマクロ予測など経済活動の基礎となる寶の山?!袱饯钨|(zhì)と量が世界経済の帰すうを決める」とまで言われている。
米國はグーグル、マイクロソフト、アップル、アマゾン、フェイスブックなどのネット大手が世界中で日々、膨大なデータを蓄積。一方中國でも、ネット通販最大手?アリババ集団、検索大手?百度(バイドゥ)、インターネット大手?テンセントなどが米國企業(yè)を追い、米中は、ビッグデータで優(yōu)位を築く爭いを繰り広げる。
世界最大14億人の人口を有する中國では、アリババの電子決済サービス「アリペイ」とテンセントの「ウィーチャットペイ」のユーザー數(shù)は計十數(shù)億人。アリペイは毎秒數(shù)千件もの決済情報をサーバーに蓄積する。データを集めれば、それだけ人工知能(AI)の性能を高められる。米中では「ビッグデータは現(xiàn)代の石油になる」とまで言われている。
また、米國帰りのITエンジニアを中心に、スタートアップ企業(yè)も続々生まれ、企業(yè)価値が10億ドル超の世界の未公開企業(yè)「ユニコーン」222社中、59社は中國企業(yè)が占める。中國は外資が中國での利益を中國內(nèi)で技術先端分野に投資すれば、17年1月に遡及して投資分に課稅しないことを決定した。
中國に対抗して米國は、IT企業(yè)が金融業(yè)に本格進出できるように銀行と商業(yè)の法律上の壁を取り払うことを検討中。またIT企業(yè)などが海外に留保する巨額の利益を米國に持ち帰る際の稅率を下げることで、IT企業(yè)の収益を大幅に増やしている。
米國は、中國が個人のデータ情報を國民監(jiān)視や治安維持の道具に使っていると批判。一部中國企業(yè)の米IT企業(yè)買収を阻止し始めた。中國側(cè)は「グーグルなど米國企業(yè)もブラックボックスであり、膨大なデータを米政府も活用している」と応酬。アジア、中近東、中南米などの途上國では、米中IT企業(yè)の激しい戦いが展開されている。
◆?人類運命共同體?で警戒解く?
習近平主席は、「建國百周年を迎える2049年までに超大國となる」目標をアピール。覇権國家?米國と激しく衝突するリスクがある。習主席は?人類運命共同體?理念を昨秋に掲げ、「核心的利益の抑制」「軍拡抑制」方針を示して米國の警戒をかわそうとしている。習氏をよく知る宮本雄三元駐中國大使は「人の耳目を欺くために方便としてこの概念を打ち出したとは思えず、真剣に追求したいと思っている。サラリーマン社長だった江沢民?胡錦濤と異なりオーナー社長の2代目(太子黨)なので、中國をいかに尊敬される國にするか考えている」と期待する。
一方で、宮本氏は「人民解放軍を強くする」とも言っている點を問題視。その役割と?人類運命共同體?の理念を支える原則を説明すべきだと主張する?!杠姃堃种皮胜嗓蚓唧w化してルールを決め、ルールの実施が擔保される仕組みを考える必要がある。一刻も早く整理し説明しないと米國安全保障専門家(軍事當局)の出番となる。このままでは米國防総省は中國を“敵國”とみなし、軍事衝突の危険が高まってしまう」と警告している。
実際トランプ米政権は軍事予算を積極的に拡大。今年2月初めに、今後5?10年の新たな核戦略の指針となる「核體制の見直し(NPR)」を公表。オバマ前政権の核軍縮方針を転換し、核兵器の抑止力を強化した。トランプ大統(tǒng)領は「米國はこの10年間で核の保有數(shù)や役割を減らした。他の核保有國は備蓄を増やし、他國を脅かす新兵器を開発した」と中露や北朝鮮を念頭にこう批判した。19會計年度(18年10月?)の國防予案は6861億ドル(約74兆円)で前年度比13%増。11年度以降で最大規(guī)模となった。
中國は16年の軍事費で2位。米國の3分の1の規(guī)模だが、1990年比で約10倍に増え、軍事大國になった。一つの弾道ミサイルに複數(shù)の核弾頭を載せて、複數(shù)の都市を同時に攻撃する多弾頭弾も持つとされる。
◆踏み出した「新型大國関係」
米國と中國は世界1、2位の経済?軍事大國として対峙しているが、冷戦時代の米ソのように鋭く対立しないのは両國間に経済相互依存が存在するためである。昨年11月に北京で開催されたトランプ米大統(tǒng)領と中國の習近平國家主席のトップ會談で、懸案の「北朝鮮非核化」で一致したほか、米中貿(mào)易不均衡是正のため2500億ドル(約28兆円)以上の商談が成立。中國も悲願の「新型大國関係」を內(nèi)外にアピールした。トランプ大統(tǒng)領は首脳會談の冒頭「米中は世界の問題を解決する能力がある。ウィンウィン関係を築く」と明言したが、これは習近平主席にとって待望していた言葉である。
習政権の有力ブレーンである胡鞍鋼?清華大學教授は、習氏が國家主席に就任した2012年以降「米中間で交わした合意は七百件を超え、早晩九百件以上になる」と指摘。両國が世界を牽引する「2トップ」として「新型大國関係」に事実上踏み出したと分析している。胡教授は「世界1、2の大國が仲良くしなければ世界に“激震”が起こる。中國と米國の間に大きな太平洋があり、両國がステークホルダー(利益共有者)になることができる」と力説?!该字袇f(xié)力の數(shù)は數(shù)知れない。経済分野はもちろん、米國の共同研究先のトップは中國で両國は切っても切れない仲?;イい死妞蚬灿肖筏皮?、協(xié)力すればさらに大きな成果が期待できる」と指摘。米中が冷戦時代の米ソのように鋭く対立しないのは両國間に緊密な経済相互依存が存在するためという。
◆米中はゼロサム関係ではない
米中関係に詳しい呉心伯?復旦大學國際関係學院副院長兼アメリカ研究センター所長は「中國は米國との対立は望まず、競爭と協(xié)力のバランスをとり共存、衝突は回避できる」と指摘。「米中はゼロサム(一方の利益が他方の損失になること)関係ではなく相互依存関係にあり、ウィンウィンの関係だ。雙方は経済貿(mào)易や北朝鮮の核ミサイル開発問題で連攜できる」と強調(diào)している。
米中の実情に詳しい松尾文夫?元共同通信ワシントン支局長によると、米中間には「相互確証破壊」(二つの核保有國の雙方が、相手方から核先制攻撃を受けても、相手方の人口と経済に耐えがたい損害を確実に與えるだけの核報復能力を溫存できる狀態(tài))が成立しており、核戦爭ができない間柄にあるという。同氏は「これで結(jié)ばれた米中関係は日米間よりも深い」と見ている。
毎年、米中交互に開催されてきた米中戦略?経済対話は、米中両國の主要閣僚や政府?経済界が経済や安全保障分野の懸案、國際的な課題について意見交換する大規(guī)模會議。毎年閣僚や政府関係者、経済界のトップクラス數(shù)百人が出席。トランプ政権になっても枠組みを拡充して引き継がれた。米國との間で、日本にはこのような定期的な戦略的大規(guī)模対話はない。米國では中國語を幼児に習わせる家庭が急増しており、トランプ氏の孫も中國語を?qū)Wんでいる。(八牧浩行)
『<米中新時代2/2>貿(mào)易制限措置応酬も交渉優(yōu)先、「取引」成立か―米で対中強硬派臺頭、中國は冷靜対応』に続く
■筆者プロフィール:八牧浩行
1971年時事通信社入社。 編集局経済部記者、ロンドン特派員、経済部長、常務取締役編集局長等を歴任。この間、財界、大蔵省、日銀キャップを務めたほか、歐州、米國、アフリカ、中東、アジア諸國を取材。英國?サッチャー首相、中國?李鵬首相をはじめ多くの首脳と會見。東京都日中友好協(xié)會特任顧問。時事総合研究所客員研究員。著?共著に「中國危機ー巨大化するチャイナリスクに備えよ」「寡占支配」「外國為替ハンドブック」など。趣味はマラソン(フルマラソン12回完走=東京マラソン4回)、ヴァイオリン演奏。
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