「中國笛王」「中國の魔笛」などと呼ばれた中國伝統(tǒng)の「曲笛」の第一人者、陸春齢（ルー?チュンリン）さんが22日、上海市內(nèi)の病院で亡くなった。96歳だった。古い時(shí)代の演奏風(fēng)格をしっかりと伝えるとともに、超絶的なテクニックも遺憾なく発揮する貴重な演奏家で、後進(jìn)の指導(dǎo)にも大きく貢獻(xiàn)した。27日にはコンサートに出演する予定だった。

陸春齢さんは、1921年9月に上海市で生まれた。幼いころから笛を?qū)Wんだが、最初の師は近くに住んでいた革職人だったという。若い頃は人力車、次いで自動(dòng)車の運(yùn)転手として生計(jì)を立てる苦しい生活だったが音楽活動(dòng)は続け、37年には紫韻國學(xué)社という団體に參加、40年には中國國楽社を立ち上げた。中華人民共和國成立後は、新設(shè)された上海民族楽団に所屬、54年からは上海音楽學(xué)院で後進(jìn)の指導(dǎo)にも當(dāng)たった。

毛沢東、周恩來、トウ小平、江沢民など、國家指導(dǎo)者の前で演奏することがしばしばあった。國外で演奏することも多かった。英國のエリザベス女王が訪中した際にも中國曲とイングランド民謡の演奏を披露した。その縁で、渡英して演奏會(huì)を行った際にはエリザベス女王が祝電を贈(zèng)った。90年ごろからは、日本でも何度か演奏會(huì)を行った。

なお、中國では陸さんが貧しい家庭の出身だったと紹介されているが、本人は「かなり裕福な家の出身」と語ったことがある。中國では資本家階級(jí)の出身とみなされた者が極めて不利益な扱いを受ける時(shí)代があり、「生きるための方便が定著してしまった」との説明だった。

中國の伝統(tǒng)的な笛には、北部に伝わるバン笛（バンディー、「バン」は木へんに「邦」）と南部に伝わる曲笛（チューディー）の二大流派がある。バン笛は小型の笛を用い、技巧的で強(qiáng)烈な表現(xiàn)が特徴。曲笛は大型の笛を用い、優(yōu)美な演奏が特徴。陸さんは曲笛の大家で、極めて澄んだ音色の持ち主だった。その上に、それまでの曲笛演奏には珍しかったテクニックも大膽に導(dǎo)入した。

中國の伝統(tǒng)曲には、相當(dāng)に異なる「バージョン」が多數(shù)存在する場(chǎng)合が多かった。陸さんは民間の演奏の取材を重ね、「鷓鴣飛」「歓楽歌」「小放?！埂钢谢濉工胜嗓蛘恧贰S譜化して自らも演奏した。陸さんの演奏はいずれも、その後の笛の演奏の「標(biāo)準(zhǔn)」になった。さらに「今昔」「喜報(bào)」などを作曲。これらの曲も広く演奏され、人々に親しまれることになった。

「巨匠」「重鎮(zhèn)」として崇拝されるようになっても、気さくでひょうきんな性格を発揮し続けた。リハーサル中に意表を突いたジョークで周囲を爆笑させることもあった。ステージ上では曲間のトークや仕草も聴衆(zhòng)を大いに喜ばせた。高齢になっても「ノリのよいミュージシャン気質(zhì)」を失わない人物だった。

周囲に尊敬され愛される存在でもあった。さまざまな稱號(hào)を得たが、本人は「最も気に入っているのは『人民蕓術(shù)家』の『人民』の2文字だ」と語ったことがあるという。自分は特別の人間ではなく、特別な人間のために活動(dòng)しているつもりもない、との心意気だった。

新華社によると、陸さんの訃報(bào)に接して、陸さんの弟子である上海音楽學(xué)院の唐俊喬（タン?ジュンチアオ）教授は「陸先生が、こんなに早く逝ってしまうとは思いもよらなかった。笛と音楽を心から愛する人だった。永遠(yuǎn)に楽しそうにしているように思える人だった」と語った。

唐教授によると、27日には「陸春齢?師匠と弟子によるチャリティー音楽會(huì)」が予定されており、準(zhǔn)備を進(jìn)めていたところだったという。（翻訳?編集/如月隼人）