「霊幻道士」という香港映畫がありました。獰猛に暴れるキョンシー。襲われた主人公がキョンシーの額に呪文が書かれたお札を貼ります。とたんに凍りついたように動きを止めるキョンシー。主人公は絶體絶命のピンチを逃れた。おもわず安堵のため息。その息でお札がはがれ、キョンシーが再び暴れだす。タイミングや音響も絶妙で、上映館は割れんばかりの大爆笑。私もお腹の皮をよじらせて笑いました。

そんなことを思い出し、なぜか「科學(xué)とは何か」「科學(xué)技術(shù)とはなにか」ということを改めて考えることになりました。というのは、「科學(xué)」と「科學(xué)技術(shù)」がひとからげに認(rèn)識されていることに疑問を持っていたからです。「科學(xué)」と「科學(xué)技術(shù)」は違うものだとはっきりと認(rèn)識した上で、両方の研究を進(jìn)めていくべきというのが私の考えです。

科學(xué)というのはそもそも、役に立つかどうかを度外視して研究するものです。一方の科學(xué)技術(shù)は実用を目指します。しばらく前に、英國のホーキング博士が死去して話題になりました。ホーキング博士が研究したのは科學(xué)であって科學(xué)技術(shù)ではありません。例えば博士が理論研究に盡力したブラックホールに関連する事象に、実用性はまずありません。

私は、人類は旺盛な好奇心を持つ存在と信じています。學(xué)ぶことが好きなのです?！笇W(xué)ぶ」と言えば、學(xué)校時(shí)代の経験で「いやだなあ」と思う人も多いでしょう。私も同意します。でも、人は學(xué)ぶこと自體を嫌っているわけではないのです。學(xué)びについて枠が設(shè)けられ、強(qiáng)制されることが嫌なのです。もっと具體的に言えば、試験というシステムで評価され、場合によっては進(jìn)學(xué)や就職でのふるい落としの基準(zhǔn)にされることで、恐れを感じてしまうのです。

テレビでは情報(bào)番組が人気です。推理小説も根強(qiáng)い人気を持っています。人とは本質(zhì)的に、頭を使って新たな真実を知るのが、好きな存在なのです。

科學(xué)とは、人が本質(zhì)的に持つ「知への欲求」が顕在化したものです。知への欲求を、可能な限り緻密な論理で構(gòu)成した體系です。こうご説明すると「科學(xué)は役に立たないのか。では、研究を公的に支援する必要はないな」という意見が出てきます。

ちょっと待ってください。そうとも言えないのです。例えばアインシュタインの特殊相対性理論は純粋な「科學(xué)的興味」から導(dǎo)き出されたわけですが、例えば回りまわって核兵器や原子力の活用という成果を?qū)Г訾筏蓼筏浚ê吮鳏湓kが人類の役に立っているかという議論からは、ここでは離れておきます）。

別の話もしましょう。私は學(xué)生時(shí)代に理系、特に數(shù)學(xué)の勉強(qiáng)をしたのですが、當(dāng)時(shí)は「整數(shù)論」という分野がおおむね、「実用性はない。知的好奇心を純粋に追求する分野」と見なされていました。ところが現(xiàn)在は整數(shù)論が、情報(bào)化の流れに絡(luò)んで暗號理論の最大の武器になるとして応用面でも花形分野だそうです（數(shù)學(xué)が科學(xué)のジャンルと認(rèn)められるかどうかという議論にも、ここでは觸れません）。

つまり、科學(xué)の探求とはよくできたもので、知的好奇心を満したいという人類特有の欲求が出発點(diǎn)なのですが、現(xiàn)実としても大いに役立つ場合があるということです。

そこで、「科學(xué)技術(shù)」についてです。私は「科學(xué)とは異なる」と強(qiáng)調(diào)したい。というのは、科學(xué)技術(shù)の目的は現(xiàn)実への応用だからです。役立てられるかどうかが最大の焦點(diǎn)です?？茖W(xué)の成果の蓄積を可能なかぎり利用しますが、場合によっては「理屈ははっきり説明できないが、とにかくこうやれば上手くいく」だって許されるわけです。

「科學(xué)」と「科學(xué)技術(shù)」は両方とも、正しい方向で研究を進(jìn)めるならば、人類にとってよい狀態(tài)をもたらすと信じています。そして、公的な資産の投入に際してはとりわけ、両者の違いをしっかりと認(rèn)識し、バランスよい配分を目指さねばなりません。

短期的な成果に目を取られて、純粋な科學(xué)への配分をけずりすぎたのでは、人が人として求める本能を抑えることになってしまいますし、実用面についても將來の成果を閉ざしてしまうことになります?？茖W(xué)技術(shù)への投入が不足したのでは、近い將來に禍根を殘すことになります。いわゆる先行投資の不備です。

さて、このあたりで改めて「キョンシーの額へのお札」を考えてみます。やはり、科學(xué)的とは言えませんよね。因果関係についての考察があまりにも不足しているからです。でも、人が自然界（超自然界？）に何らかの働きかけをして、現(xiàn)狀をよりよくしようとする方向性は明らかです。

因果関係についてはあいまいな面は大きいが、研究と経験の蓄積によってよい結(jié)果をもたらそうとしている。これが、私が「キョンシーへのお札」を、科學(xué)的ではないがれっきとした科學(xué)技術(shù)のひとつとみなす所以です。

■筆者プロフィール：如月隼人

1958年生まれ、東京出身。東京大學(xué)教養(yǎng)學(xué)部基礎(chǔ)科學(xué)科卒。日本では數(shù)學(xué)とその他の科學(xué)分野を勉強(qiáng)し、その後は北京に留學(xué)して民族音楽理論を?qū)煿ァＨ毡兢藨盲皮椁鲜长伽毪郡幛司幖浾撙蚣跇I(yè)とするようになり、ついのめりこむ。毎日せっせとインターネットで記事を発表する?！钢袊慰諝荨工蛘i者の皆様に感じていただきたいとの想いで、「爆発」、「それっ」などのシリーズ記事を執(zhí)筆。中國については嫌悪でも惑溺でもなく、「言いたいことを言っておくのが自分にとっても相手にとっても結(jié)局は得」が信條。硬軟取り混ぜて幅広く情報(bào)を発信。

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