●習(xí)近平政権が推す「中國(guó)の夢(mèng)」

【その他の寫(xiě)真】

今回はいつもの抗日ドラマネタから少し離れ、ちょっと面白いなと思った「中國(guó)の夢(mèng)」主題新創(chuàng)作歌曲に関してレポートしたいと思う。

中國(guó)ウォッチャーにはおなじみ「中國(guó)の夢(mèng)」、習(xí)近平政権の掲げる執(zhí)政理念である。かつては地政學(xué)でいうところのユーラシア「リムランド」をシルクロードで制し、鄭和艦隊(duì)がアフリカまで到達(dá)した歴代の中華帝國(guó)。ところが列強(qiáng)の進(jìn)出以來(lái)、さんざん冷や飯を食わされた歴史経緯があるため、経済発展著しい今、ここにきてユーラシア大陸の盟主「中華民族の偉大な復(fù)興」を目指すというもの?！干鐣?huì)主義核心的価値観」、「一帯一路」といったキーワードとも密接な関連がある。

●そして「中國(guó)の夢(mèng)」キャンペーンソング

この包括的な理念「中國(guó)の夢(mèng)」を國(guó)民に周知、鼓舞するためのキャンペーンソングが2014年頃から作られ始めた。第1弾は2014年6月に発表された「光栄與夢(mèng)想（栄光と夢(mèng)）」という軍歌チックな合唱曲。このタイミングでこの歌を含む20曲が第1次「中國(guó)の夢(mèng)」主題新創(chuàng)作歌曲として選出。以來(lái)、毎年20曲ほど選出され、2018年度で第6次となるも、このキャンペーンソングコンテストは継続している。

當(dāng)初はMV（ミュージックビデオ）はなく、歌謡番組や政治番組で披露されていたのだが、數(shù)年前から番組の合間のCMタイムに凝ったMVを流すようになった。中國(guó)では番組と番組の間に10分～20分ほどのCMタイムが設(shè)けられており、一般的な企業(yè)CMとともに、法律の公布や、モラルアップといった目的の公共CMも必ず放映される。その公共CMとともに「中國(guó)の夢(mèng)」主題新創(chuàng)作歌曲のMVが放映されるというわけだ。これを視點(diǎn)を変え、わが日本に置き換えてみると、1時(shí)間ごとに「アベノミクス」、「アベ政治」キャンペーンソングが流されるという、野黨および左翼陣営が憤死しそうな狀況である。こういった文化差異も興味深いところだ。

●中國(guó)らしいメロディーや民族色豊かな民謡風(fēng)

CCTV3中央電視臺(tái)バラエティーチャンネルに『蕓術(shù)人生』という番組がある。タイトル通りいろいろな蕓術(shù)家をスタジオに招くトークショーだ。この「中國(guó)の夢(mèng)」主題新創(chuàng)作歌曲に數(shù)多くの楽曲を提供した作詞家陳濤、作曲家王備コンビが番組に出演し、舞臺(tái)裏を話していた。（畫(huà)像1）このコンビ、日本でも有名な金庸原作武俠ドラマ『倚天屠龍記(2003)』、BS局でも放映された『ミーユエ 王朝を照らす月(2015)』のテーマ曲作者と説明すればわかりやすい。そのコンビの「中國(guó)の夢(mèng)」主題新創(chuàng)作歌曲は、中國(guó)らしいメロディーや、シルクロードを思わせる民族風(fēng)のリズムを取り入れ、おおむね高評(píng)価である。とはいえ今どきの若者にウケるような楽曲ではないのだが、ベテラン作詞家作曲家なのでなかなかいい歌だ。

たとえば『千年の約束』という「一帯一路」をテーマとした歌、MVは色とりどりの民族衣裝をまとったダンサーと靜かな中東風(fēng)メロディで、歌詞も暑苦しくなく、あまり力強(qiáng)いキャンペーンソングというイメージはないが、聴いているうちにスッと頭に入り込むという「中國(guó)の夢(mèng)」主題新創(chuàng)作歌曲の本來(lái)の目的を達(dá)成しているというデキのよい楽曲だ。（畫(huà)像2）オーディション番組の審査員などでよく見(jiàn)かける大物歌手韓紅起用もいいところを突いている。また『満城煙火（街いっぱいの花火）』や『心念』（ドキュメンタリー番組のテーマ曲）も、やはり、落ち著いた歌詞、靜かなメロディーで聴いていて心地よい。

●ポップスチューンからアイドルまで

そのほかに、オペラ歌手、文蕓兵が歌うクラシック寄り、軍歌チックな曲もある。そして上記陳濤、王備コンビの楽曲が中高年向けの歌謡曲や演歌のポジションとすれば、若者向けの楽曲も用意されている。

たとえば日本でも有名なAKB48の上海版SNH48の『夢(mèng)想開(kāi)始的地方（夢(mèng)をスタートする場(chǎng)所）』（畫(huà)像3)。學(xué)業(yè)に専念し未來(lái)に羽ばたこうというちょっと意識(shí)高い系の青春歌謡だ。また男子アイドルグループのTF BOYSが歌う『我和2035有個(gè)約（私と2035年の予約）』、中國(guó)政府は2035年に経済、軍事などで世界一を目指すという目標(biāo)がある、そのテーマの歌だ。さすがにSNH48の歌に比べると「社會(huì)主義核心的価値観」のキーワードが出てきたり、かなり暑苦しくなっている。（畫(huà)像4）

そして大御所シンガーソングライター郭峰の『我們』、人気スター李易峰、江シュウ影、景甜らの『賛賛新時(shí)代』といった軽快なポップスになると、BPMの上がったリズムとともに「我們創(chuàng)造世界的力量」、「（立占）起來(lái)、富起來(lái)、強(qiáng)起來(lái)」といった、キーワード満載のかなり暑苦しい歌詞となり、面白くなってくる。

●オススメ「中國(guó)の夢(mèng)」主題新創(chuàng)作歌曲

このように日本では考えられない中國(guó)共産黨政権主導(dǎo)のキャンペーンソング。穏當(dāng)なものから暑苦しいもの、民謡風(fēng)のものからポップス風(fēng)のものまでさまざまなバリエーションが用意されており、まさに全方位漏れなしである。屆かないとしたらインディーズ好きとかノイズミュージック好きといった音楽マイノリティぐらいだ。

そんな「中國(guó)の夢(mèng)」主題新創(chuàng)作歌曲でとくに筆者が気に入った2曲を紹介しよう。まずはシンガーソングライター周澎の『美好向往（あこがれ）』。癒し系ルックスのいい人そうな周澎、軽快なポップスバラードなのに歌詞とMVの映像がムダに意識(shí)高い系で暑苦しい。アコースティックピアノで靜かに始まるのだが、すぐに「新時(shí)代號(hào)角吹響、人民的美好向往、変成了奮闘的方向」と習(xí)近平政権のキーワード満載の歌詞。そしてサビに向かうところで「人民啊幸福安康、國(guó)家啊反映富強(qiáng)」とミャンマーに近い雲(yún)南のジャングルのような暑さに。そしてサビの部分は「みんな楽しく歌って幸せに暮らそう」という意味で今までの勢(shì)いが急に萎えてしまう。歌詞と周澎の癒し系ルックス、落ち著いたバラードメロディとのギャップが何ともいい味である。（畫(huà)像5）

もう1曲はメガネスキンヘッドのオーディション番組出身平安（アンソン?ピン）、美女武警歌手喩越越のデュエット曲『信仰』。チェロとアコースティックピアノで靜かに始まるのだが、MVにいきなり登場(chǎng)する上海新天地の第1回中國(guó)共産黨大會(huì)史跡、そして共産黨の聖地井岡山モニュメント。これでもうタイトル『信仰』の対象が何の歌がわかってしまう。さらにドラムと重厚なコーラスが入り期待感が高まるイントロだ。（畫(huà)像6）朗々とそれぞれのパートを歌い上げる平安と喩越越、サビの部分では中國(guó)太鼓のリズムとともに美しいコーラスで暑苦しい歌詞をデュエット。二人とも実力派歌手なのでさすがに上手い。MVにおける平安のわざとらしい笑顔も歌詞と相まって、筆者のアタマの中にいろいろ考えが巡りなかなか消化しきれない、少々胃もたれする感じだ。歌もうまい、曲もいい、超暑苦しいけど元?dú)荬纬訾敫柙~と「中國(guó)の夢(mèng)」主題新創(chuàng)作歌曲におけるすべてのエッセンスが詰まった楽曲だ。

このような「中國(guó)の夢(mèng)」主題新創(chuàng)作歌曲であるが、本年度も引き続き新曲が発表されるようなので注意深く見(jiàn)守っていきたいと思う。これらのMVはほぼYouTubeにないので興味のある向きは中國(guó)の動(dòng)畫(huà)サイトを參照されたい。

■筆者プロフィール：巖田宇伯

1963年生まれ。景徳鎮(zhèn)と姉妹都市の愛(ài)知県瀬戸市在住。前職は社內(nèi)SE、IT企畫(huà)、IT基盤の整備を長(zhǎng)年にわたり擔(dān)當(dāng)。中國(guó)出張中に出會(huì)った抗日ドラマの魅力にハマり、我流の中國(guó)語(yǔ)學(xué)習(xí)の教材として抗日作品をはじめとする中國(guó)ドラマを鑑賞。趣味としてブログを數(shù)年書(shū)き溜めた結(jié)果、出版社の目に留まり『中國(guó)抗日ドラマ読本』を上梓。なぜか日本よりも中國(guó)で話題となり本人も困惑。ブログ、ツイッターで中國(guó)ドラマやその周辺に関する情報(bào)を発信中。

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