2020年の東京五輪までまもなく1年となる。大會(huì)チケットの抽選販売のネット申し込みにアクセスが集中し、期限を延長(zhǎng)したことも話題になった。この東京五輪を特別な思いで迎えようとしているのは、復(fù)旦大學(xué)の黃安［王其］さん。以下は、黃さんの作文。

【その他の寫真】

60歳になった祖母がいる。若い頃は地元で小學(xué)校の體育教師をしていた。彼女の人生最大の夢(mèng)はオリンピックを見(jiàn)に行くことだった。一番殘念だったのは、10年前の北京オリンピックに行けなかったことだ。2008年、待ちに待った北京オリンピック開(kāi)催の年、祖母は交通事故で右足を粉砕骨折、9時(shí)間の手術(shù)の末、車椅子生活になってしまった。病床で彼女は何も言わず、ただ窓の外の空を眺めていた。あの日の夕焼けは、流れる血のように鮮やかだった。

私は一人っ子である。一人ぼっちだった。祖父や両親は用が多かったため、祖母も一人ぼっちだった。それで、私と祖母は一番の仲良しになった。実家は杭州、祖母と街中遊び回り、また祖母からいろんな話を聞くのが私の楽しみだった。週末になるといつも、87番バスの霊隠寺駅で降りて境內(nèi)の鐘の聲を聞いたり、12番バスの雷鋒塔駅で下車して西湖に沈む夕日を眺めたりした。しかし、事故の後、祖母は外へ出かけなくなった。祖母と外の間に、越えられない壁ができたみたいだった。

車椅子で交通機(jī)関の乗り降りをするのは、結(jié)構(gòu)大変なことだ。介護(hù)者が同伴しても、バスの昇降口にはかなりの段差があるので乗り降りが難しい。運(yùn)転士や他の乗客はそれで長(zhǎng)時(shí)間待たせられ、イライラしてしまうことも少なくない。迷惑をかけているのはこちら、赤の他人のせいで時(shí)間を無(wú)駄にされたくないという気持ちもわかる。だが、やはりそういう気持ちに觸れたり、體の自由がきかないことを直視したりするうち、祖母はどんどん元?dú)荬驘o(wú)くしていった。あんなに負(fù)けず嫌いだった、祖母が。

それ以來(lái)、祖母は新聞や絵本を読んだり、手なぐさみに何かいじったり、縁側(cè)の日向で空を見(jiàn)たりして、その日その日を家で過(guò)ごした。8月には無(wú)事にオリンピックが始まったが、祖母は行かなかった?！副井?dāng)は、そんなに行きたくないんだ」と言っていたが、そんなはずはなかった。

あれから10年が経ち、私は大學(xué)3年生になった。昔から日本文化が好きだった私は日本語(yǔ)學(xué)科に進(jìn)み、京都で短期交流のプログラムに參加することもできた。その日は9月中旬を過(guò)ぎたにもかかわらず、とても暑かった。晝近くに活動(dòng)を終え、いつも通りバスに乗った。まもなくバスは祇園に著き、観光地だけに多くの人が乗って來(lái)た。立ち並ぶ人の熱気と外からの日差しで、さっきまでの心地よさは一気に無(wú)くなってしまった。

次のバス停に著くと、乗車待ちの行列に車椅子の方が見(jiàn)えた?！附预丹?、すみませんが、お時(shí)間いただきます」という車內(nèi)放送が流れた。運(yùn)転士が車椅子の乗り込めるスロープを出す間、乗客たちは座席を畳んでスペースを作った。もともと五分遅れている上、更に出発時(shí)間が遅れていたが、誰(shuí)一人文句を言わなかった。介護(hù)の方は乗客たちに「お待たせして、すいません」と申し訳なさそうにしていて、車椅子のおばあさんもずっと「すいません、ありがとうございます」と言っていた。乗客たちは、それを笑顔で迎えた。なんだか、心が溫かくなった。

バスを降りる際、「ご協(xié)力ありがとうございました、よい一日になりますように」と運(yùn)転士に言われた。私は不覚にも目頭が熱くなった。運(yùn)転士の言葉に感動(dòng)したのか、みんなの優(yōu)しさに心打たれたのか、それとも、祖母を思い出したのだろうか。

たしかに、日本では街で障がい者をよく見(jiàn)かける。都會(huì)はもちろん、地方でもバリアフリー化が進(jìn)んでいて、各所でスロープや多目的トイレがよく見(jiàn)られる。「車椅子の人も歓迎されているんだ」と感じ、感銘を受けた。それは「平等」や「愛(ài)」を伝えるメッセージであるだけでなく、不幸な人の心を癒し、幸せにする「薬」なのだ。

「ねえ、おばあちゃん、知ってる？私、おばあちゃんを東京に連れて行くよ。オリンピックに！車椅子で！」。祖母の夢(mèng)はここで実現(xiàn)できる。日本は魅力的な國(guó)だから。そう、信じている。帰り道に空を見(jiàn)上げた。赤い夕焼けはあの日と同じように輝いていた。（編集/北田）

※本文は、第十四回中國(guó)人の日本語(yǔ)作文コンクール受賞作品集「中國(guó)の若者が見(jiàn)つけた日本の新しい魅力」（段躍中編、日本僑報(bào)社、2018年）より、黃安［王其］さん（復(fù)旦大學(xué)）の作品「車椅子で、東京オリンピックに行く！」を編集したものです。文中の表現(xiàn)は基本的に原文のまま記載しています。なお、作文は日本僑報(bào)社の許可を得て掲載しています。