<在日中國人のブログ>一萬円の価値

黃 文葦    2019年6月16日(日) 16時0分

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「渋沢栄一の一萬円」と「福沢諭吉の一萬円」には、それぞれ思想と文化の重みが感じられる。

私は留學(xué)生向けの進學(xué)塾に勤めている。塾には日本の名門大學(xué)を目指す留學(xué)生が大勢いる。一つのエピーソードを取り上げる。日本に來る中國人留學(xué)生はほぼ全員早稲田大學(xué)を知っていた。中國では早稲田大學(xué)の知名度が高そうである。しかし、もう一つの日本の名門私立大學(xué)である慶應(yīng)義塾大學(xué)を知らない人が案外多い。そして、先輩留學(xué)生が新留學(xué)生に一萬円札を見せて、「ほら、福沢諭吉は慶應(yīng)義塾大學(xué)の創(chuàng)立者ですよ。寫真が一萬円札に載ることはすごいでしょう。だから慶應(yīng)義塾大學(xué)は早稲田大學(xué)に比べてもぜんぜん遜色ないですよ」と言った。新留學(xué)生はとても納得した様子だった。一萬円札の「顔」から名門大學(xué)の価値を認識するらしい。それで、慶應(yīng)義塾大學(xué)に進學(xué)するかどうかは別として、留學(xué)生には福沢諭吉が作った「文明開化」という言葉も認識してほしい。

そう言えば、5年後の2024年に新たな紙幣が登場する。今度は渋沢栄一が新一萬円札の「顔」に選ばれた。渋沢栄一は「日本資本主義の父」と「論語」の精神を貫いた実業(yè)家と認識される。「社會で生き抜いていこうとするならば、まず『論語』を熟読しなない」とは、渋沢の教えである。渋沢栄一の著書「論語と算盤」の中に「企業(yè)が利益を上げるのは當たり前であると同時に経営者は社會への影響、公益をも考えないといけない」という一文がある。いずれも心に響く言葉だろう。「渋沢栄一の一萬円」と「福沢諭吉の一萬円」には、それぞれ思想と文化の重みが感じられる。

因みに、中國人民元のお札100元に印刷された人物は毛沢東である。昔の中國の教育家、科學(xué)家、醫(yī)學(xué)家、文學(xué)家、思想家が多いのに、なぜ古代人物をお金の「顔」にしないだろうか。「お金」に中國の歴史?文化を現(xiàn)在につなぐ役割を果たせたらよい?,F(xiàn)在、中國では毛沢東がどういう人物かを知らない若者が多いそうで、「毛沢東」をお金の神様と見なしている。

日本で初めて得た「一萬円」のイメージを語りたい。日本に來て數(shù)日後、日本語がぜんぜん喋れなかったにもかかわらず、友達の紹介で神奈川県愛甲石田にあるマヨネーズの工場で數(shù)日間短期のアルバイトをした。とても簡単な労働で、卵の殻を機械がむく。私たちが機械に協(xié)力して、表面の小さな卵殻の破砕片を取って、卵を洗う。一日いくつの卵を洗っただろうか。數(shù)えきれない…一日の仕事を終えて、一萬円の現(xiàn)金給料を受け取った瞬間、とても美しいお金だ!と一種の感動を覚えた。卵をきれいにして、マヨネーズの原料に成させて、自分が「一萬円の価値」を創(chuàng)り出した。そして、きれいなお金がもらえる。その不思議な感覚を今でも克明に覚えている。因みに、20年前、中國人の平均月収は「一萬円」に達してなかった。現(xiàn)在大都市では大卒初任給は「10萬円」を超えた。さらに、來日した中國人観光客の一人の平均消費額は二十數(shù)萬円である。

日本円を人民元に両替する際に、いつも一萬円単位で計算する。私が日本に來てから20年間の中、円高の時期、一萬円が800人民元以上のレート、円安の頃、1萬円が500人民元弱と急落した時期もあった。令和元年6月現(xiàn)在は一萬円は600人民元強である。日本と中國の間、「一萬円」はお金の秤(はかり)だとみられる。

日本ではどこでも100円ショップが點在し、庶民の強い味方という存在だと言われる。三百円ショップと千円ショップは100円ショップより少ないけれど、たまに見かけることがある。コミックス「こちら葛飾區(qū)亀有公園前派出所」に「一萬円ショップ」が出てきた?,F(xiàn)実には「一萬円ショップ」は無理。お金持ちになったとしても日本人には節(jié)約志向が捨てられないだろう。

今、私は毎日クレジットカードを使っている。ただし、財布の中には少なくとも一枚一萬円札が入っている。日本には「現(xiàn)金のみ」の店がまだ多數(shù)ある。電子マネーがいくら発達しても、現(xiàn)金への親しさは永遠に忘れられないと思う。日本での暮らしの中、「一萬円」が心に安定感をもたらす。

話を一萬円札の「顔」に戻そう。渋沢栄一と福沢諭吉、二人の偉人の最も顕著な共通點は教育に熱心なこと?!笢i沢栄一のメッセージ」(巖波現(xiàn)代全書 島田昌和編)によると、早稲田大學(xué)創(chuàng)立35周年記念式典の際、渋沢栄一が祝辭を述べている?!袱长螄握嬲胜敫护蚱黏氛嬲胜肓Δ蜻Mめるには教育でなければとてもいかぬと云ふことを深く感じました」と語ったという。留學(xué)生たちがこれからも「一萬円」に秘される日本の歴史?文化そして教育理念を認識すれば幸いなことである。

■筆者プロフィール:黃 文葦

在日中國人作家。日中の大學(xué)でマスコミを?qū)煿イ?、両國のマスコミに従事。十數(shù)年間マスコミの現(xiàn)場を経験した後、2009年から留學(xué)生教育に攜わる仕事に従事。2015年日本のある學(xué)校法人の理事に就任。現(xiàn)在、教育?社會?文化領(lǐng)域の課題を中心に、関連のコラムを執(zhí)筆中。2000年の來日以降、中國語と日本語の言語で執(zhí)筆すること及び両國の「真実」を相手國に伝えることを模索している。

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