2013年5月24日、レズビアン（女性同性愛者）、ゲイ（男性同性愛者）など性的マイノリティーに焦點(diǎn)をあてた第4回アジアンクィア映畫祭が、東京?シネマート六本木で開幕した。24?26日と31日?6月2日の計(jì)6日間、長?短編計(jì)27作品を上映する。韓國のイ＝ソン?ヒイル監(jiān)督の最新作「あの夏、突然に」など3部作を一挙上映するほか、タイのトランスジェンダー（出生時(shí)と違う性で生きようとする人）の戀を描いた「愛なんていらない」など幅広いラインナップとなっている。

【その他の寫真】

中でも注目は臺(tái)灣のヤン?ヤーチェ（楊雅［吉吉］）監(jiān)督の「GF＊BF（原題：女朋友。男朋友）」だ。男女3人の30年にわたる愛と葛藤を、學(xué)生運(yùn)動(dòng)や民主化など臺(tái)灣社會(huì)の変化とともに描く。主演のグイ?ルンメイ（桂綸［金美］）は今年、臺(tái)灣最高の映畫賞?臺(tái)灣金馬奨で最優(yōu)秀主演女優(yōu)賞を獲得。日本では大阪アジアン映畫祭（3月）で初上映されて反響を呼び、今回も前売り券が早々に完売した。

ヤン監(jiān)督は71年生まれ。子供たちを主人公にしたファンタジー「Orzボーイズ！」（08）で長編デビューした?！弗互钎氓?バレ」（11）のウェイ?ダーション（魏徳聖）監(jiān)督と同世代で、臺(tái)灣映畫界の中核を擔(dān)う作り手の1人。大阪アジアン映畫祭で來日したヤン監(jiān)督に話を聞いた。

■「友人たちが語り始めた秘密。ほこらに向かって話すように」

30年。長い長い物語は、友人の問わず語りから始まった。

「學(xué)生時(shí)代、僕は友達(dá)と距離を置くタイプだった。ところが30歳を過ぎたころ、彼らが急に秘密を話してくれるようになった。まるで木のほこらに向かって話すようにね。僕にはどう慰めていいか分からなかった?！豪斫猡扦?。分かるよ』とだけ言ったんだ」

1985年、臺(tái)灣南部?高雄。メイベル（グイ?ルンメイ）、ライアム（ジョセフ?チャン＝張孝全）、アーロン（リディアン?ボーン＝鳳小岳）は同じ高校に通っている。メイベルはライアムに、アーロンはメイベルに戀していた。思いが屆かず悩むメイベルは、アーロンの願(yuàn)いを受け入れ交際を始める。しかしある時(shí)気付いてしまう。自分を拒んだライアムの視線が、ずっとアーロンを追っていることを。

高校から大學(xué)へ進(jìn)み、社會(huì)に出る中で、3人は苦しい関係を続けていく。別の女性と結(jié)婚したアーロンと、愛人関係を続けるメイベル。妻子ある男の戀人と別れられないライアム?！竷Wのつらさを分かってくれるのは、世界でお前だけだ」。違う相手に同じ言葉でしばられる2人。出口が見えぬ中、メイベルは一人ひそかにある決斷をする。それは傷付いた自分たちを包み、許し、解放する愛だった──。

■主演のグイ?ルンメイとジョセフ?チャン「俳優(yōu)になる前から知っている」

胸の奧がひりひり痛むような物語で、10代から40代までを演じ切った主演の3人。ヤン監(jiān)督はグイ?ルンメイ、ジョセフ?チャンの成長を、10年以上にわたって見つめてきた。出會(huì)いは青春映畫の傑作「藍(lán)色夏戀」（02）。當(dāng)時(shí)ヤン監(jiān)督は助監(jiān)督で、オーディションに參加した2人はまだ高校生だった。

「俳優(yōu)になる前の彼らも、素顔も知っている。今回もきっとやれると自信があった。キャスティングで改めて2人に會(huì)った時(shí)、彼らの目の中に高校時(shí)代の姿が見えた。俳優(yōu)には『自分を感動(dòng)させてくれ』とだけ言うんだ。偽物の涙にはまったく心が動(dòng)かない。スクリーンの中の彼らの演技や感情が、本物であることだけを望んだ」

3人は臺(tái)灣社會(huì)の激動(dòng)の中で成長する。90年代前半、民主化を求める學(xué)生運(yùn)動(dòng)が拡大。臺(tái)北中心部?中正紀(jì)念堂の広場に學(xué)生たちが座り込む。さらに90年代後半には、ゲイカップルが華やかな結(jié)婚パーティーを開く。

「盛り込んだエピソードは、ほとんど現(xiàn)実に起きたこと。僕は高校、大學(xué)を?qū)W生運(yùn)動(dòng)とともに過ごした。ゲイカップルの結(jié)婚式も実際の話。臺(tái)灣で同性婚はまだ法的に認(rèn)められていないが、家庭を持ち、子供を育てるカップルは増えている。同性愛者が認(rèn)められることは、愛が自由化されたことと同じ。自由を求め、本當(dāng)の愛を手に入れる。それが作品の根底に流れるテーマだ」

■學(xué)生運(yùn)動(dòng)から民主化へ　激動(dòng)の30年「臺(tái)灣人には反抗心がある」

一方でヤン監(jiān)督は、日本以上に急速に社會(huì)変化が進(jìn)む臺(tái)灣に「無常感が広がっている」とも感じている。民主化も実現(xiàn)し、経済成長も続き、生活レベルは向上した。しかし、人々の間に沈んだ空気が広がっているという。

「日本の人たちも過去に経験したのではないか。學(xué)生運(yùn)動(dòng)を経て、社會(huì)は変わったけれど、人々は『こんなはずではなかった』と思う。頑張ったけれど、どこかむなしい。追ってきた夢が変わってしまったのだ、と」

それでもヤン監(jiān)督は「異議を唱える」ことをやめない。臺(tái)北近郊で建設(shè)が予定され、トラブル続きで完成が遅れている「第4原発」。計(jì)畫中止を求める活動(dòng)に、俳優(yōu)や監(jiān)督ら多くの映畫関係者とともに參加している。毎週末にデモを行い、「政府が原発をやめるまで続ける」と言葉に力を込める。

「もう政治にはだまされない。皆が気概を持つようになった。臺(tái)灣人の心には、反抗心が備わっている。臺(tái)灣は移民社會(huì)だ。清朝に反して大陸から逃れた人々、國共內(nèi)戦後に大陸から來た國民黨の人々もいる。もともとお上に従うのが嫌いで、あまり従順ではないんだ」

■好きな作家は向田邦子 感動(dòng)は「ポケットに入れて」溫める

厳しい言葉を並べるヤン監(jiān)督だが、「GF＊BF」の根底に流れるのは大きく深く、溫かい寛容の精神。丁寧な語り口には小説を読むような味わいもある。事実「映畫を見るより読書が好き」だそうで、好きな作家に挙げるのは向田邦子。5年前、「Orzボーイズ！」のインタビューでも語っていた。

「日本の小説をよく読む。向田邦子はとても好きで、臺(tái)灣で翻訳本が出るたびに読んだ。日本の小説の雰囲気は、中國や臺(tái)灣とまったく違う。言葉は劇的でも、激しくもない。日本人は観察力が鋭く、注意深く、ささやかなものに目を止める。物の見方、考え方も獨(dú)特で、いつも驚かされる。僕は感動(dòng)したり、心が動(dòng)いたりした経験を、すぐには表に出さない。しばらくポケットに入れておいて、ある時(shí)に取り出して表現(xiàn)するんだ」

これまで30年、監(jiān)督自身が見てきた臺(tái)灣社會(huì)の変化。作品の種となった友人の問わず語り。ひそやかなささやきはポケットに入れられ、時(shí)間をかけて熟成された。「GF＊BF」で最後にメイベルが下す決斷。臺(tái)灣での公開時(shí)、グイ?ルンメイは「定義できない大きな愛」と表現(xiàn)し、感極まって涙をこぼした。

長い葛藤を経た3人の愛。ゆっくりと溫かく、観る者を包むだろう。（文?寫真/遠(yuǎn)海安）

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「GF＊BF（原題：女朋友。男朋友）」（2012年、臺(tái)灣）

監(jiān)督：ヤン?ヤーチェ（楊雅［吉吉］）

出演：グイ?ルンメイ（桂綸［金美］）、ジョセフ?チャン（張孝全）、リディアン?ボーン（鳳小岳）、チャン?シューハオ（張書豪）

※第4回アジアンクィア映畫祭で5月25日、6月2日に上映。作品の詳細(xì)、映畫祭の上映スケジュールは公式サイトまで。

http：//aqff．jp/2013/index．php

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