日韓対立の激化が靜まらない。GSOMIA（ジーソミア）の破棄を宣言した韓國(guó)。韓國(guó)でも毎日このニュースで持ちきりであるが、これと並行してヂョ?グク（曹國(guó)）という人物の話題がホットイシューになっている。ヂョ（曹）が苗字でグク（國(guó)）が名前。1965年生まれの54歳。ソウル大の教授（法學(xué)）である。

何がニュースの種かというと、この人の不正に関する內(nèi)容。新しい法務(wù)部長(zhǎng)官（法務(wù)大臣）としての候補(bǔ)にあがっていて、そのための身上調(diào)査の過(guò)程で本人の不正というよりは、娘（ヂョ?ウォン）に関する不正がやり玉にあがっているのだ。

韓國(guó)では、大臣級(jí)の人事に関しては、國(guó)會(huì)で「聴聞會(huì)」を経なければならないことになっている?！嘎椔剷?huì)」、韓國(guó)語(yǔ)の発音ではチョンムンフェ。野黨としては、推薦であがってきた何とか大臣候補(bǔ)に対して、完膚なきまで、つまり、ぼろぼろになるまでこき下ろす（弱點(diǎn)をあばく）ことが一つの使命となるわけである。こんな人間を法務(wù)大臣として推薦するような與黨（プラス青瓦臺(tái)＝大統(tǒng)領(lǐng)府）なんだよ、國(guó)民の皆さんよ。よく見(jiàn)て置いてくださいよ、というわけだ。

ヂョ?グク氏の聴聞會(huì)はまだ開(kāi)かれていない。開(kāi)かれるまでに野黨としては諸々の情報(bào)を集めておかなければならない。その過(guò)程で、娘ヂョ?ウォン氏の不正がまずは表に出てきた格好である。不正は何個(gè)もあるのだが、その中でも一等級(jí)なのは、高校生のときに、ある大學(xué)の醫(yī)學(xué)部の教授らとの共同研究の論文があるのだが、その第一著者として論文が提出されているとうもの。この論文によって高麗大學(xué)（韓國(guó)の大學(xué)トップ3の一）に入っているようだ。この子、高校の時(shí)は醫(yī)學(xué)とは程遠(yuǎn)い文科系のクラスに所屬していた。なのに醫(yī)學(xué)論文の第一著者だと。

こういう不正、つまり自分の子を、ある論文の著者として名前をアップする不正はいままでにもたくさん（韓國(guó)では）あったし、今もあるし、今後もあるだろう。これを書いている筆者も大學(xué)教授であるので、所屬の大學(xué)から學(xué)期がはじまるときには常にメールが來(lái)る?！缸苑证巫婴嗓猡蛘撐膜沃撙说清hするような不正はやるな」というメール。うちの大學(xué)に限らず教授といわれる連中は皆こんなメールをもらっているはずだ。

それでも不正をするやつは不正をする。問(wèn)題なのは、ヂョ?グクという人間が、法學(xué)の教授であり、こういう不正はいけませんよ、と今までにテレビ、ラジオ、その他であまりにも多く講演してきていること。マスクもカッコよく、堂々たる體軀だ。女性連を中心に、多くのファンがいる。

「娘の論文に関するニュースは、フェイクニュースだ、噓だ」とヂョ?グク氏は叫んでいる?！敢蝗栅猡悉浃椔剷?huì)を開(kāi)いてほしい。そこですべてを明らかにするから」と。聴聞會(huì)が開(kāi)かれて、そこにヂョ?グク氏が登場(chǎng)し、野黨から完膚なきまでにこき下ろされても、韓國(guó)の場(chǎng)合、「そういうことはあるかもしれないけれど、法務(wù)部長(zhǎng)官としてはこの人が今一番の適任だ」とこの人でいくという大統(tǒng)領(lǐng)の鶴の一聲で長(zhǎng)官になってしまえるということがあって、これがまたかなりの問(wèn)題だ。だったらなんで國(guó)會(huì)という場(chǎng)で、あんなに一生懸命、個(gè)人の正?不正を侃侃諤諤（かんかんがくがく）と議論していたのか。あれに何の意味があったのか。大統(tǒng)領(lǐng)の一聲で、そんな議論など全くなかったかのようにポンとサイン一つで決めてしまうんだったら。

なので今、ヂョ?グク氏と青瓦臺(tái)と與黨は、國(guó)會(huì)?聴聞會(huì)の場(chǎng)にヂョ?グク氏を座らせることだけを考えている狀況であり、野黨らは、聴聞會(huì)が開(kāi)かれると、どんなに不正があばかれても結(jié)局は大統(tǒng)領(lǐng)の一聲で長(zhǎng)官任命が決まってしまうので、聴聞會(huì)に出る前に全ての不正をあばいて公にし、國(guó)民の追い風(fēng)をバックに聴聞會(huì)に出る資格もなしと斷罪すること。このオーエス?オーエスが火急の真っ只中にあるため、GSOMIAの破棄や「NO安倍」はちょーっと陰に隠れている狀況である。

ところでヂョ?グク氏は娘の不正報(bào)道はフェイクだと言っている。だからはやく聴聞會(huì)を開(kāi)いてほしいと。そこで己の家庭の無(wú)実を公明正大に述べるのだと。この人がどうなろうと筆者のかかわるところは何もないが、はたして野黨らの徹底した追及の手から逃れられるのか。書いている筆者が心配になってくるほどだ。なぜか。人の不正を暴くことにおいては、こちらの人はこれ以上やれないほどの徹底さがあるため。

日本はどうだろうか。なんとか大臣の任命のときに、國(guó)會(huì)で一人一人聴聞會(huì)ってやるんだろうか。（筆者の記憶では、やってないはずだけれど）この部分、日本と韓國(guó)とで大きくちがう點(diǎn)だ。韓國(guó)の場(chǎng)合、青瓦臺(tái)からある候補(bǔ)があがると、野黨らはその人物について徹底的に調(diào)査にはいる。前回書いたようになんとか大臣だけじゃなくて、検察庁長(zhǎng)官などもこの聴聞會(huì)の対象である。聴聞會(huì)に呼ばれると、あることないこと、全て暴かれるので、韓國(guó)では長(zhǎng)官になれる人はいない、といったジョークがときどきささやかれるほど。あの徹底した調(diào)査に遭ったら、不正や誤魔化しなどのホコリが出てこない人間は一人もいないだろうと思われるからだ。

おもな不正は、上述したような、自分の子どもたちを論文の著者リストに入れることなどからはじまって、土地の不正買収（情報(bào)を前もって不正に知って買いしめる）、マンションの不正購(gòu)入、學(xué)歴詐稱、論文改竄や論文の捏造、などなど。その他、筆者も知らないことがたくさんあって、筆者の頭で理解しているだけのことをいちおう例としてあげたのがこれらだ。

日本の大臣たちも、こうした不正のない人間はいないと思う。誰(shuí)だって、たたけばほこりは出てくるのが相場(chǎng)だ。しかし、日本では一応たたくことはあるけれど、韓國(guó)みたいに徹底していないから、任命されたら、野黨らの「ちぇっ」というくらいの反応はありながらも、大體はその通りにことが運(yùn)んでいくのではないだろうか。

一方、こちら韓國(guó)。一人の人間を俎上（そじょう）に載せて調(diào)査に入ると、それはものすごいシビアでスパルタ。徹底的。本人も知らないような不正が出てきたりもするくらいだ。この、徹底的に調(diào)べ上げるという態(tài)度はどこから來(lái)るのだろうか。その源泉が他の國(guó)とちがうのは、おそらく、密偵や親日派暴きなどにその淵源があると筆者は考えている。

密偵とは何か。韓國(guó)で使われるこの単語(yǔ)は、日帝時(shí)代（1910年から1945年までの日本の植民地時(shí)代）にまでさかのぼる。韓國(guó)の地に土足で入ってきた日本が、やり放題のことをした時(shí)代。その時(shí)代に、日本の側(cè)のスパイとなって、獨(dú)立運(yùn)動(dòng)を主導(dǎo)するような人物たちの情報(bào)を秘密裏に日本に教えていた人間（韓國(guó)人）のことである。もちろん、日本が大金をはたいて飼いならしていた連中である。日本からの獨(dú)立運(yùn)動(dòng)をした人たちは數(shù)千、數(shù)萬(wàn)、數(shù)十萬(wàn)という數(shù)字だと思うが、おもだった人間は、數(shù)百といった単位だったのではないだろうか。

今年は韓國(guó)が日本に主権を奪われて、上海のほうに臨時(shí)政府を樹(shù)立してちょうど100年目にあたるので、テレビでも毎日「獨(dú)立の義士」たちの話が1分から5分くらいの絵として流されている。コマーシャルのないKBSで1日に數(shù)回の割合で、獨(dú)立の義士の話が流れている。ここに出てくる人は、今年末までの1年間に數(shù)十人という単位になると思われる。こういった人々（獨(dú)立の義士）は、ほとんどが日本警察（憲兵）によって捉えられ、獄死を遂げるのが一般的だった。もちろん、最後まで（というのは1945年8月15日までということ）捕まらずに生き延びた人もいる。が、大部分の獨(dú)立の義士たちは捕まっている。密偵ゆえのことであろう。側(cè)近として仕える部下の中に必ずといってよいほど、密偵がうごめいていたそうである。

また親日派（チンイルパ）。これも日帝時(shí)代に、日本のやることに賛同して協(xié)力的で協(xié)調(diào)的な行動(dòng)をとった人たちだ。日本から見(jiàn)ればもちろん「いい人」になるわけだけれど、韓國(guó)から見(jiàn)ればおぞましい人となるわけだ。

そして現(xiàn)在、當(dāng)時(shí)密偵だった人を暴く作業(yè)と、チンイルパだった人を暴くことが、韓國(guó)の一大事業(yè)となっている。おもにこの作業(yè)は、ノムヒョンのときから表立って進(jìn)められてきていて、現(xiàn)在もなお、進(jìn)行形である。當(dāng)時(shí)密偵で、今も生きている人も例外的にはいるかもしれないが、だいたいは、その子孫たちがターゲットになるわけである。ときどき、國(guó)立墓地（クンニプミョージ）に、堂々と墓碑が立てられていたのだけれど、実はチンイルパだったということが判明してしまい、急遽、墓地から撤去されるという出來(lái)事、事件などもニュースに流れる。國(guó)立墓地は日本で言えばさしずめ靖國(guó)神社に相當(dāng)しようか。戦爭(zhēng)で犠牲になった人たちがここに行けることになっている。今でも軍隊(duì)にいって、何らかの事故でなくなっても、國(guó)立墓地にいくことになっている。國(guó)立墓地は、韓國(guó)の聖地であるゆえ、ここにチンイルパやその子孫が眠ることは絶対の禁なのである。

當(dāng)時(shí)の記録を一つ一つあたって、この人は確かに密偵だったとか、チンイルパだったと証拠とともに明らかにすることって、想像したらすぐわかるけれど容易くできることではない。というより、ほとんど不可能に近い作業(yè)じゃないのかと筆者には思われるくらいだ。なのに一生懸命にやっている。こちらの人たちは。それくらいにして、あとは水に流そうよ、という発想は日本の発想かもしれない。こちらでは、それくらいにして、という考え自體、ないといっていい。特にこの密偵およびチンイルパに関することとなると。あくまでも、何年、何十年、何百年かかっても、暴くべきはあばく、というのがカンナムスタイルならぬ韓國(guó)スタイルだ。この伝統(tǒng)というか習(xí)慣が色濃く殘っているために、聴聞會(huì)などでの調(diào)査は、他の國(guó)では考えられないくらい徹底したものとなっているのではないのか。それが筆者の見(jiàn)立てである。

この間も、韓國(guó)の人なら全員が愛(ài)する韓國(guó)の國(guó)歌「愛(ài)國(guó)歌（エーグッカ）」があるのだけれど、その作曲家がチンイルパだったというニュースがいっとき流れていた。たしか今年の初め頃だったと記憶する。そのときは、すぐにでも國(guó)歌を変えなければならないという気流であった。しかしいつのまにかその話はなくなり、今もあの「愛(ài)國(guó)歌」を皆が歌っている。フェイクニュースだったのか、あるいはあまりにも「愛(ài)國(guó)歌」の浸透度が大きいためいまさら変えられないと多くの國(guó)民が考えているのか。ことの真相はわからない。

が、一つだけ言えることは、密偵およびチンイルパ暴きという作業(yè)は、想像を絶するほどのエナジーおよび金が消耗されているということ。これをやっている間は、おもしろくて生産的で、みんながわくわくするような光り輝くものって、生まれてこないのではないかと筆者は思っている。もちろん筆者のこの見(jiàn)立てがまちがっているかもしれない。でも、このことのゆえ、意識(shí)がいつも負(fù)の方向にいってしまっているということだけは、動(dòng)かしがたい事実だと思うのだ。

■筆者プロフィール：木口 政樹(shù)

イザベラ?バードが理想郷と呼んだ山形県?米沢市出身。1988年渡韓し慶州の女性と結(jié)婚。元三星（サムスン）人力開(kāi)発院日本語(yǔ)科教授、元白石大學(xué)校教授。趣味はサッカーボールのリフティング、クラシックギター、山歩きなど。著書に『おしょうしな韓國(guó)』、『アンニョンお隣さん』など。まぐまぐ大賞2016でコラム部門4位に選ばれた。

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