1986年9月25日、遼寧省瀋陽市當局に8月3日付で破産を宣告された瀋陽防爆器械廠（防爆機器工場）の資産競売會が実施された。同社の破産は中華人民共和國として初の企業(yè)倒産とされている。

中華人民共和國では1949年10月1日の成立以來、イデオロギーや政治闘爭を極めて重視する國家運営が続いていた。特に1966年に始まった文化大革命期には、その傾向が強かった。しかし1976年に毛沢東が死去すると、「文革四人組」の逮捕などもあり狀況が変化。文革期に追放されていた実力者のトウ小平も最終的に復(fù)権した。

中國共産黨は1978年12月に開催した第11期中央委員會第3次全體會議で、作業(yè)の重點を経済建設(shè)に移行し、改革開放を?qū)g施することを決定した。改革開放の推進に當たっては國営企業(yè)（後に國有企業(yè)）の改革が重視された。國営企業(yè)では従業(yè)員への福利厚生の水準があまりにも高く、終身雇用制であることもあって、労働者の積極性が欠落しており、企業(yè)としての生産性も低いと考えられたからだ。

そのため、黨や政府は國営企業(yè)への干渉を減らし、企業(yè)の裁量範囲を増やすと同時に、黒字も赤字も企業(yè)の自主責(zé)任とする政策が進められることになった。企業(yè)の資金調(diào)達も、それまで一般的だった政府（地方政府）からの財政投入ではなく、銀行融資に切り替えられることになった。

しかし、企業(yè)の生産効率を急速に引き上げることは困難で、全國の國営企業(yè)が出す利益は約2年間に渡り低下し続けた。社會主義の考えに基づく労働者保護も、まだ手厚かった。経営が危機的狀況にある企業(yè)が規(guī)?？s小あるいは操業(yè)停止する場合にも、収益性が比較的良好な別の國営企業(yè)に従業(yè)員を配置換えするなどした。そのため従業(yè)員も危機感をあまり持たず、生産性は低いままだったという。

1983年4月から85年4月まで瀋陽市長を務(wù)めた李長春（後に共産黨中央政治局常務(wù)委員）は、人々の意識を覚醒するために、同市內(nèi)で「中華人民共和國初の企業(yè)倒産を?qū)g現(xiàn)」することを決意したという。

瀋陽防爆器械廠は1966年に、瀋陽変圧器廠（変圧器工場）が設(shè)立した企業(yè)だった。1978年には市政府が接収し、瀋陽市拖拉機制造総廠（トラクター製造総工場）傘下の市営企業(yè)となった。その後、1983年に瀋陽防爆器械廠に改められた。

1984年からは市政府側(cè)の主管部門が何度も変わった。1985年には防爆器械廠を7部門に分けて、それぞれ別の企業(yè)が管理することになった。防爆器械廠の責(zé)任者も1980年から83年までに10回以上も交代するなど、同工場の狀態(tài)は混亂の極みだったという。84年末までに、防爆器械廠の債務(wù)は48萬元に膨らんでいた。

當時の「48萬元」の価値を理解するのは困難だが、一般的な労働者の月額給與が100元程度だったことを考えれば、4800カ月分の給與に相當することになる。現(xiàn)在の日本の労働者の月給を30萬円臺とすれば、感覚的には15億円あるいはそれ以上に相當する負債だったと理解することもできる。

瀋陽市工商行政管理局は1985年8月3日付で、防爆器械廠を含む市內(nèi)3社に「破産警戒警告」を出した。同警告は、1年以內(nèi)に黒字転換しないと強制破産させるという厳しい內(nèi)容だった。

しかし、防爆器械廠は舊式の技術(shù)しか持ち合わせておらず、生産効率は低いままだった。また債務(wù)を抱えていたため、経営狀況の改善は至難だった?！钙瞥Z警戒警告」を受けたことで信用を失ったことも逆風(fēng)になったという。市工商行政管理局は1年後の85年8月3日付で、防爆器械廠の破産を宣言した。

9月25日に実施された工場資産の競売では、瀋陽市煤気供応公司（瀋陽ガス）が資産全體を20萬元で落札した。20萬元は債権者に債権額に案分して支払われた。

【1986年のその他の出來事】

?スペースシャトル「チャレンジャー」が爆発、搭乗員7人全員死亡（1月）

?フィリピンのマルコス大統(tǒng)領(lǐng)が國外脫出、コラソン?アキノ大統(tǒng)領(lǐng)が就任（2月）

?チェルノブイリ原子力発電所で爆発事故（4月）

?土井たか子が日本社會黨委員長に就任、日本の主要政黨として初の女性黨首（9月）

?臺灣で民主進歩黨が正式結(jié)成（9月）

?ソ連のK-219原潛がバミューダ沖で沈沒（10月）

■筆者プロフィール：如月隼人

1958年生まれ、東京出身。東京大學(xué)教養(yǎng)學(xué)部基礎(chǔ)科學(xué)科卒。日本では數(shù)學(xué)とその他の科學(xué)分野を勉強し、その後は北京に留學(xué)して民族音楽理論を?qū)煿?。日本に戻ってからは食べるために編集記者を稼業(yè)とするようになり、ついのめりこむ。毎日せっせとインターネットで記事を発表する?！钢袊慰諝荨工蛘i者の皆様に感じていただきたいとの想いで、「爆発」、「それっ」などのシリーズ記事を執(zhí)筆。中國については嫌悪でも惑溺でもなく、「言いたいことを言っておくのが自分にとっても相手にとっても結(jié)局は得」が信條。硬軟取り混ぜて幅広く情報を発信。

Facebookはこちら
※フォローの際はメッセージ付きでお願いいたします。

ブログはこちら