木口 政樹 2019年11月27日(水) 23時30分
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韓國の大學(xué)には大きくて余裕のある研究室もあれば、狹くてむさくるしいそれもある。が、みな一様に自分の研究室には多大な愛著を感じている。寫真は高麗大學(xué)。
韓國にきてから、こちらの大學(xué)は數(shù)々見てまわることになった。教員募集の面接でよく行ったし、大學(xué)で働くようになってからは各種の學(xué)會やセミナーなどで多くの大學(xué)を訪れた。知り合いの教授のいる大學(xué)に行った場合には、彼の研究室を見るのが一つの禮儀みたいになっている。大きくて余裕のある研究室もあれば、狹くてむさくるしいそれもある。が、みな一様に自分の研究室には多大な愛著を感じている。研究室にまねきいれて、ああだこうだと説明するその口元が、知らずうちにほほえんでいる。どんなにむさくるしい研究室が與えられている場合でも、それは変わりがない。自信と誇りと愛に満ち満ちた目がキラキラと輝いている。研究室が與えられる身になるまで、どれだけ苦労したことか。その苦しさが報われた形だから、目が輝くのもむりはない。
ある中國語の教授は、研究室を自分の家の書斎のようにつくりなおして使っている。ドアを開けると、靴を脫いで、10センチぐらい高く作られた「座敷」にあがるようにしてある。間仕切りでこまかに仕切って、茶室のようなところでお茶を飲む。中國語の教授らしく、中國茶がふるまわれる。煎れかたもこったもので、中國式のきゅうすに中國式の小さな湯飲みで飲む仕組みだ。四人ほどでいっぱいになるその「茶室」は、まさに竹林の七賢になったような気分を味わわせてくれたものだ。
ここまではいかないにしても、ある女性教授は、やはり靴を脫いであがるようにしつらえてある。日本語の教授であるが、日本の雰囲気を出すためにというよりは、たぶん韓國式でやっているんだと思う。韓國も玄関をはいったら靴をぬいであがるようになっているから。
かと思うと、ゴミだらけホコリだらけの研究室もある。學(xué)生が質(zhì)問にきても、足のふみばもない。きれい好きの女子學(xué)生はこんな研究室に入ってこれるかな、なんて思ってしまうほどだ。でもこれはいらぬ干渉、おせっかいというものだ。
ちなみにみわたしの研究室は質(zhì)素であるがきれいに整頓されている。原宿は竹下通りのダイソーで買ってきた100円「のれん」が三枚とその他、うちわや紙細工の鶴などが壁一面に貼ってある。日本の雰囲気がいやおうなしに醸しだされるようにしてあるつもりだ。
こちらの大學(xué)で、これは韓國獨特だと思うのは、正門や建物の豪華さ、立派さである。高麗大の正門はつとに有名だが、大きくて威厳があって重々しい。石で作られたその正門は、ほんとうにすばらしい。わたしがはじめて韓國語を?qū)Wんだのは、この高麗大。初日に行ったときには、この正門の大きさと美しさに圧倒されたものである。人の背の二、三倍はあろうかと思われる石の塔が橫ナラビに六個ぐらいずらっと並んでいて、鉄製の門がたたみこまれている。夜は鉄製の門が閉められるのだろうか。門だけでなく、キャンパスの中に建つそれぞれの建物もたいてい石で作られていて、威厳があり美しい。
高麗大にかぎらず韓國の大學(xué)は、たいていどこも立派な石造りになっている。東大をはじめ、日本の大學(xué)のイメージはレンガづくりあるいは木作りであるが、韓國の大學(xué)のイメージは石づくりである。わたしの勤める大學(xué)(白石大學(xué)校)も石造りの建物がメインの建物である。
わが研究室もこのメインの石造りの建物(本部棟)の10階にある。數(shù)年前、日本から幼なじみがたずねてきた。正門からキャンパスに入ると、「うわーっ、すごいおおきいな」とため息をついていたものだ。五月ごろだったので、キャンパスの中にはつつじなどの花が咲き、朝霧がかかっていた。うしろは山がせまり、真理館、知恵館、牧羊館、といった建物(うちの大學(xué)はキリスト教系の大學(xué)である)がキャンパスのそれぞれに位置し、その真ん中にボンブドン(本部棟)という巨大な石の建物。幽玄な情趣に彼は「すごい」の単語を何度も口にしていた。
この友、わがクラスで小一時間の講演もやってのけた。自宅を起點に始めた個人事業(yè)が、今やふるさとの町で知らぬ者のないほど大きな會社のCEOとして活躍している。その彼が、経営の経験について「夢をもて」と語ったのである。學(xué)生らの反応もよく、講演の時間中ずっと真剣なまなざしで聞いていた。日本語科の學(xué)生たちなので、日本語の話はほとんど聞き取ることができる。ときおりわたしが難しい日本語を韓國語に翻訳してやったりしながら濃密な時間が過ごせた。石造りの巨大な建物で講演もやり、ひとしお愛著を感じてのことだろう。學(xué)生らといっしょに寫真を撮り、日本に帰ったらみなに自慢してやるんだと言っていた。自慢話は首尾よく終えられたんだろうか。
■筆者プロフィール:木口 政樹
イザベラ?バードが理想郷と呼んだ山形県?米沢市出身。1988年渡韓し慶州の女性と結(jié)婚。元三星(サムスン)人力開発院日本語科教授、元白石大學(xué)校教授。趣味はサッカーボールのリフティング、クラシックギター、山歩きなど。著書に『おしょうしな韓國』、『アンニョンお隣さん』など。まぐまぐ大賞2016でコラム部門4位に選ばれた。 著書はこちら(amazon)Twitterはこちら※フォローの際はメッセージ付きでお願いいたします。
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