2013年9月5日、児童書?絵本などで知られる出版社ポプラ社の中國(guó)現(xiàn)地法人?北京蒲蒲蘭文化発展有限公司は先月30日、「おまえうまそうだな」、「おとうさんはウルトラマン」などで知られる日本のベストセラー絵本作家の宮西達(dá)也氏を招いてセミナーを開催した。このセミナーはポプラ社が2004年に北京に現(xiàn)地法人を開設(shè)して以來(lái)、初めて絵本を作りたい人向けに企畫している特別セミナーだ。同セミナーで、宮西氏は中國(guó)語(yǔ)による絵本の読み聞かせを行ったほか、絵本作りのコツなどについて講演した。人民網(wǎng)日本語(yǔ)版が伝えた。

【その他の寫真】

北京の中心にある観光地?後海に程近い胡同（フートン）の中にひっそりとたたずむ北歐風(fēng)に改裝したレストランを會(huì)場(chǎng)にして行われた講座には、約40人を超える人々が集まっていた。參加者の顔ぶれも非常に多彩だ。プロのイラストレーター、新人の絵本作家、絵本作家の卵のほか、子供に絵本づくりを教えたいという主婦や、美術(shù)教員、大學(xué)の教授、絵本館を開設(shè)しているオーナー、編集者、大學(xué)生、9歳の少年などさまざまな人たちが一堂に會(huì)した。

■絵本に觸れたことがない若者が大部分を占める中國(guó)

意外なのは、絵本に初めて觸れたのはいつかという質(zhì)問に、「去年」、「今年」といった人も含まれていたことだ。最も早く知った人でも、10年程前のことだという。教育の一環(huán)として絵本の読み聞かせが浸透している日本とは異なり、中國(guó)で絵本という概念が定著しはじめたのはここ最近のことだ。大都市の外國(guó)文化に觸れる機(jī)會(huì)が多い人を除き、通常の2級(jí)?3級(jí)都市（地方都市）に住む人々にとっては、絵本を見たことも聞いたこともない人が圧倒的だ。ファインアーツを?qū)煿イ工胗忻佬g(shù)大學(xué)の大學(xué)生に聞いても、絵と文が一體となった、臺(tái)灣の絵本作家ジミーのような本と説明されてようやくイメージがわくという狀態(tài)だ。しかし、中國(guó)政府は近年、マンガ?アニメプロジェクトと連動(dòng)して、絵本にも力を入れ始めている。絵本作家育成プロジェクトと稱するセミナーや講演も、美術(shù)大學(xué)を中心に開かれ始めている。

■「おまえうまそうだな」を読んで涙が止まらなかった。この本が人生を変えた。

參加者にセミナーに參加した動(dòng)機(jī)を聞いてみたところ、夢(mèng)工場(chǎng)児童倶楽部（Dream Kids Club）を経営する李魯湘（リー?ルーシアン）さんは、「以前は美術(shù)教室の教師をしていたが、今は絵本館を開いて子供たちに絵を教えている。すべては宮西先生の絵本『おまえうまそうだな』を見たのがきっかけ。読んだときは涙が止まらなかった。読みおわった後、すぐに教師を辭めて絵本館を作ろうと決意した。この絵本が私の人生を変えた」と語(yǔ)る。また、イラストレーターで絵本作家志望の黨漢［文武]（ダン?ハンビン）さんは、數(shù)年前に友人が経営しているカフェ店でたまたま置いてあった宮西先生の絵本「おまえうまそうだな」を読んで、號(hào)泣したのだという?！缸苑证摔厦盲い毪⑾壬巍氦蓼亭筏螭堋护蛞姢?、さらに號(hào)泣した。そして、妹の誕生日プレゼントにこの絵本をプレゼントした。妹は他省で働いていて、自分は北京にいるので、なかなか普段會(huì)えない。でも、この絵本をプレゼントした後、兄弟仲もさらによくなり、今では頻繁に連絡(luò)を取り合っている。それもあって宮西先生の絵本は自分にとってすごく大事なもの。自分の小さい頃の思い出がそこには詰まっているし、家族の愛情の絆を強(qiáng)めるものが描かれている。今日は大好きな先生に會(huì)いに來(lái)た」と語(yǔ)った。このほか、約30年前の小學(xué)校の授業(yè)以來(lái)絵を描いたことがないという2歳の男児を持つ母親の馮雪（フォン?シュエ）さんは、「実は幼い頃、學(xué)校で絵を描いたときに、自分ではすごく良く描けたと思っていたのに、學(xué)校の先生に『この絵はひどい。きみは描かないほうがいい』と言われたことがある。すごく悲しくて、これをきっかけに私には絵の才能がないんだと思い、絵を描くことをやめた。子供には將來(lái)もっと絵に親しんでほしいので、どんな絵本を薦めたらいいのかなど學(xué)習(xí)のために來(lái)た」と語(yǔ)った。

■読み聞かせに大きく反応する9歳の少年。子供の目線に立った絵本づくり

宮西達(dá)也氏は、忙しい最中を縫って定期的に中國(guó)を訪れ講演を行っている。「中國(guó)が大好き」と語(yǔ)る宮西氏は、講座では片言の中國(guó)語(yǔ)を駆使して、絵本の読み聞かせを行った。すると、大勢(shì)の大人の中に一人だけちょこんと一番前の特等席に座って宮西氏の講演を聞いていた9歳の少年が非常に大きな反応を示した。最後から最後まで大きな聲で笑い続けているのだ。いかに、宮西氏の描く絵本が子供の視線にたって描かれているのかが証明された瞬間だ。とくに妹が家族の真似ばかりする様を描いた「まねしんぼ」や大好きなお母さんのおっぱいを弟に奪われた兄の気持ちを描いた「おっぱい」では身體をのけぞらせながら笑っていた。これに対して、宮西氏は「私の作品はすべて自分の思い出や経験に基づいてストーリーを作っている。絵本は主題がなければなりたたない。そうでなければリアルではないし、読む人も感動(dòng)しない」と語(yǔ)る。

■「絵本とは親から子供に伝承するもの」、「絵の上手下手は一番身近にいる人の言葉に影響される」

午後に行われた絵本作りの実踐セミナーでは、馮雪さんが「いったいどのような絵本を子供に読み聞かせたらいいのか？」という質(zhì)問を行った。宮西氏は「別に子供の好みや目線に合わせなくてもいいのではないか。絵本とは、親から子供に大切なことを伝承するもの。評(píng)判がいいからと言って、親がいいと思えないものを読ますのではなく、親がいいと思うものを読ませたらいい」と回答した。また、講演で宮西氏が強(qiáng)調(diào)したのは、「子供の絵をけなしてはいけない」ということ。大人の凝り固まった概念で子供の自由な感性を抑圧しないでほしいとして、「子供が自分の絵を下手だと思うのは、學(xué)校の先生や親の言葉による先入観」と語(yǔ)った。

■未成年の読書量の減少が危懼される中國(guó)

中國(guó)新聞出版研究所がこのほど発表した「第10回全國(guó)國(guó)民読書調(diào)査」の結(jié)果によると、2012年の0-17歳の未成年の書籍読書率は77％で、前年比1．6％の減少となり、2012年の未成年の一人平均の読書量は5．49冊(cè)だった。この原因として、子供たちの興味がマンガ?アニメに向いていることを挙げている。同調(diào)査によると、9歳-17歳の未成年のアニメ?マンガの接觸率は84．8％だった。また、中國(guó)の小?中學(xué)校の教育は社會(huì)問題になるほど詰め込み式で、小學(xué)生でも毎晩9時(shí)まで宿題をし、朝7時(shí)に學(xué)校が始まるという生活を送っているので、読者などする時(shí)間がない。このほか、ピアノ、二胡、英語(yǔ)、ダンスなどいくつもの習(xí)い事をしている小學(xué)生も少なくないという。こういった詰め込み式學(xué)習(xí)を背景に、絵本による情緒教育が重視され始めている。とはいっても、今はまだ目立った現(xiàn)象にまでは成長(zhǎng)していない。話題になるのは月刊発行部數(shù)500萬(wàn)部を突破し、週刊少年ジャンプや週刊少年マガジンに継いで世界第3位の発行部數(shù)を誇るマンガ?アニメ雑誌「知音漫客」や、キャラクターから始まってアニメにまで成長(zhǎng)した「阿貍」など、やはりまだアニメ?キャラクターが中心だ。

■読み手である読者層の形成から、作り手側(cè)である絵本作家の育成への移行

北京蒲蒲蘭文化発展有限公司は2005年、國(guó)望に世界中の絵本を販売する絵本館を設(shè)立した。ポプラ社の管理部総監(jiān)の王蒙（ワン?モン）氏によると、フランスなど歐州の絵本に比べて、日本の絵本はやはり同じアジア人として近い文化を共有するせいか人気が高いという?！袱趣藢m西先生の絵本は家族関係や絆を描いたものが多いので、中國(guó)人にとっても非常に受け入れやすい。60年代生まれの人と比較すると、80年代生まれの新世代の親たちは子供の教育への観念や子供に対する考え方に大きな違いがある。経済も発展し、環(huán)境もよくなったせいで、子供の精神性や感性を育てたいと考える人が増えている」と語(yǔ)る。読者層を育てながら、作り手の絵本作家の育成に力を入れ始めた北京蒲蒲蘭はすでに中國(guó)人の絵本作家によるオリジナル絵本の出版を始めている。この10年のアニメ?動(dòng)畫の発展?成長(zhǎng)速度からすると、多くの中國(guó)人が絵本を受け入れる時(shí)代とともに、中國(guó)人のベストセラー絵本作家が現(xiàn)れる日もすぐに來(lái)るかもしれない。（提供/人民網(wǎng)日本語(yǔ)版?翻訳/MZ?編集/武藤）