日中関係が改善する中で、韓國(guó)や北朝鮮と日本との関係は冷え込んだまま。日韓関係がぎくしゃくしている背景には、韓國(guó)の中國(guó)依存度が飛躍的に増大し日本より中國(guó)との関係を重視するようになったという冷徹な構(gòu)造要因がある。トランプ米大統(tǒng)領(lǐng)の「自國(guó)第一主義」「定まらない北朝鮮政策」も影を落としている。

◆中國(guó)と「戦略的協(xié)力パートナー」に

文在寅政権の親中政策は「左翼政権特有の現(xiàn)象」との見(jiàn)方もあるが、あくまでも普遍的な現(xiàn)象だ。韓國(guó)と中國(guó)は樸大統(tǒng)領(lǐng)と習(xí)近平國(guó)家主席の體制が同じ頃にスタート。以來(lái)、多様な戦略対話チャネルが結(jié)ばれ、朝鮮半島問(wèn)題など政治?安保分野における?yún)f(xié)力関係も拡大した。中韓両國(guó)民の連帯と信頼を増進(jìn)するため、文化交流、地域レベル交流、両國(guó)間貿(mào)易の年間3000億ドル目標(biāo)の達(dá)成などを通じた戦略的な協(xié)力パートナー関係を推進(jìn)。さらに文在寅政権になって加速し、韓國(guó)経済における中國(guó)との結(jié)びつきが一段と強(qiáng)まっている。韓國(guó)の輸出に占める國(guó)別シェアは中國(guó)が日本を15年ほど前に追い抜き、今では5倍以上の規(guī)模に拡大、なお増え続けている。

世界は『米中2大國(guó)』時(shí)代になるというのが韓國(guó)內(nèi)の共通認(rèn)識(shí)であり、米中とバランスをとる『連米?連中』が基本戦略。東アジア共同體や東アジア地域構(gòu)想など多國(guó)間協(xié)力の枠組みを共に共有することが理想と見(jiàn)ており、米國(guó)同盟を中心に中國(guó)をけん制し「囲い込む」という発想はほとんど皆無(wú)だ。

韓國(guó)の対中接近の背景には、最大の貿(mào)易相手國(guó)かつ世界一の消費(fèi)市場(chǎng)である中國(guó)についた方が得とのリアリズムがあり、GSOMIA（軍事情報(bào)包括保護(hù)協(xié)定）を巡る混亂もその延長(zhǎng)戦にある。

安倍晉三首相と文在寅大統(tǒng)領(lǐng)が昨年12月下旬中國(guó)?成都で會(huì)談した。一衣帯水の隣國(guó)にもかかわらず日韓首脳の正式な會(huì)談はなんと1年3カ月ぶり。首脳同士が諸懸案の解決に向けた政府間協(xié)議の重要性を確認(rèn)した意味は大きい。日本企業(yè)に元徴用工への賠償を命じた韓國(guó)最高裁の判決後は初めてである。

安倍首相は「重要な日韓関係をぜひ改善したい」と表明。文大統(tǒng)領(lǐng)も「決して遠(yuǎn)ざかることのできない仲だ」と応じた。韓國(guó)は日本とのGSOMIAの破棄方針を転換し、日本も韓國(guó)向け輸出管理の厳格化措置を一部緩和した。

◆日韓首脳はリーダーシップ発揮を

両首脳の対話は歓迎すべきことだが、昨年から相次いだ対立の傷痕が両國(guó)內(nèi)に深く殘っている実態(tài)を認(rèn)識(shí)する必要があろう。內(nèi)閣府の世論調(diào)査で、韓國(guó)に親しみを感じるとの回答が26％で過(guò)去最低となった。韓國(guó)では日本製品の不買(mǎi)運(yùn)動(dòng)と日本旅行の自粛が継続、日本の関係企業(yè)や観光地は厳しい冬を迎えている。隣國(guó)関係を下支えする民間交流や企業(yè)連攜の後押しは政府の役割である。

文大統(tǒng)領(lǐng)が輸出管理措置の撤回を要請(qǐng)したのに対し、安倍首相は韓國(guó)側(cè)の責(zé)任による徴用工問(wèn)題の解決策が欠かせないとの立場(chǎng)を表明。韓國(guó)國(guó)會(huì)では、日韓の企業(yè)と個(gè)人の寄付金などで賠償を肩代わりする內(nèi)容の法案が提出されたが、韓國(guó)國(guó)內(nèi)で批判が噴出している。

日韓は少子高齢化などの國(guó)家的課題のほか、足元の米中貿(mào)易戦爭(zhēng)への対応を含めて協(xié)力できる分野が多い。企業(yè)間でも雙方の強(qiáng)みを生かした第三國(guó)での協(xié)業(yè)の実績(jī)が著実に増えている。

地域情勢(shì)が不安定なときだけに雙方の政治家は首脳會(huì)談の結(jié)果を後戻りさせるような感情的な応酬を自制し、戦略的な協(xié)力関係を探るべきだろう。このような時(shí)こそ両首脳の頻繁な往來(lái)とリーダーシップ発揮が重要になる。

「米國(guó)ファースト」を貫くトランプ大統(tǒng)領(lǐng)はかねて「韓國(guó)は自らの防衛(wèi)のためのコストを負(fù)擔(dān)する能力を持っており、駐留する米軍は大幅に減らすべきである」と言明。平和協(xié)定への移行が検討されている朝鮮休戦協(xié)定には「すべての外國(guó)軍隊(duì)の朝鮮半島からの撤退」が盛り込まれている。平和協(xié)定が締結(jié)されれば縮小?撤退も可能になり、日本列島が大陸に立ち向かう最前線になってしまう。

◆「日本は朝鮮半島後、最大の敗北者は日本」―米ユーラシアグループ

世界最大の政治リスク専門(mén)コンサルティング會(huì)社、米ユーラシアグループのロバート?カプラン専務(wù)理事が米外交専門(mén)誌「フォーリンポリシー」に昨年寄稿した「アジアに近付く予測(cè)不可能な時(shí)代」と題する記事は衝撃的だ?！傅卣W(xué)の逆襲」などの著作もあるカプラン氏は「日本は20世紀(jì)に実現(xiàn)したドイツやベトナムのような分?jǐn)鄧?guó)の統(tǒng)一が21世紀(jì)に朝鮮半島で再現(xiàn)されることを望んでいない」「日本は朝鮮半島の統(tǒng)一を阻もうとしている」「日本は自國(guó)の安保のために分?jǐn)啶丹欷砍r半島を必要としている」などと主張。また「1910年から45年まで続いた日本の殘酷な植民地支配、第2次世界大戦の遺産のせいで統(tǒng)一韓國(guó)は本能的に『反日本』になる」とし、「朝鮮半島が統(tǒng)一された場(chǎng)合、最大の敗北者となるのは日本だろう」と予想している。また、最近の日韓の貿(mào)易緊張について「日本が戦爭(zhēng)當(dāng)時(shí)、強(qiáng)制労働と性奴隷政策を施行したことで悪化したもの」と斷じたうえで、「これはいつか統(tǒng)一韓國(guó)が実現(xiàn)した後に現(xiàn)れる日韓間の政治的緊張の予告だ」とも指摘している。

トランプ?金正恩のディール（取引）が成立すれば、中長(zhǎng)期的には在韓米軍の縮小?撤退の可能性が浮上、東アジアの安全保障に甚大な影響を與えることになる。トランプ大統(tǒng)領(lǐng)は対朝経済的支援を日中韓3カ國(guó)に委ねる方針も示しており、コストがかかる朝鮮半島問(wèn)題からの関與離脫につながる。これらの動(dòng)きは米國(guó)中心の「戦後秩序」の終焉を意味し、世界で地政學(xué)的なリスクが高まることが懸念される。

2018年6月の史上初の米朝首脳會(huì)談で北朝鮮は非核化に合意したはずだったが、その後、2度の首脳會(huì)談を経ても具體的進(jìn)展はない。北朝鮮の金正恩朝鮮労働黨委員長(zhǎng)は年末12月31日の朝鮮労働黨中央委員會(huì)総會(huì)で核開(kāi)発と経済建設(shè)を同時(shí)に進(jìn)める「並進(jìn)路線」への回帰を示唆。同國(guó)の核開(kāi)発は著々と進(jìn)捗し、新エンジン裝著の「多弾頭ICBM（大陸間弾道弾）」の発射が近いとの観測(cè)もある。再び緊張局面に戻れば、トランプ氏が「外交成果」と誇ることはできなくなり、米朝軍事衝突のリスクも高まる。

日本としても、韓半島の対中傾斜という厳しい情勢(shì)を踏まえて、情勢(shì)を正確に分析し、冷靜かつ的確な対応をすべきであろう。

（続く）

■筆者プロフィール：八牧浩行

1971年時(shí)事通信社入社。 編集局経済部記者、ロンドン特派員、経済部長(zhǎng)、常務(wù)取締役編集局長(zhǎng)等を歴任。この間、財(cái)界、大蔵省、日銀キャップを務(wù)めたほか、歐州、米國(guó)、アフリカ、中東、アジア諸國(guó)を取材。英國(guó)?サッチャー首相、中國(guó)?李鵬首相をはじめ多くの首脳と會(huì)見(jiàn)。東京都日中友好協(xié)會(huì)特任顧問(wèn)。時(shí)事総合研究所客員研究員。著?共著に「中國(guó)危機(jī)ー巨大化するチャイナリスクに備えよ」「寡占支配」「外國(guó)為替ハンドブック」など。趣味はマラソン（フルマラソン12回完走＝東京マラソン4回）、ヴァイオリン演奏。