八牧浩行 2020年1月4日(土) 5時0分
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安倍首相は12月下旬に日中韓首脳會議に出席した際、開催都市の成都が「三國演義」における蜀の都だったことにちなみ「3カ國は三國時代の魏?呉?蜀のような互いに爭う関係ではない」と呼びかけた。
安倍首相は12月下旬に日中韓首脳會議に出席した際、開催都市の中國?成都が「三國演義」における蜀の都だったことにちなみ「3カ國は三國時代の魏?呉?蜀のような互いに爭う関係ではない。ともに手を攜えて『新たな三國時代』を築くことを望む」と呼びかけた。日本でも人気の高い「三國演義」を絡(luò)めた発言について、中國のネットユーザーからは「日中韓は隣國。平和が何よりも重要だ」といった積極的な評価が寄せられ、多くの共感が集まった。
日中韓首脳會議の議長國?中國の李克強(qiáng)首相は、記者會見で「我々は自由貿(mào)易を維持することで一致した。多國間主義に資するものであり、世界平和にも有益だ」と強(qiáng)調(diào)した。
米中の覇権爭いは今後20年以上も続くとの見方があるが、雙方とも相手を一方的に打ち負(fù)かすことはできそうもない。選挙がある米國と異なり、強(qiáng)権國家という特殊事情もある中國の方が『忍耐力』は數(shù)段上。米國の対中政策はぶれる傾向があり、1972年のニクソン米大統(tǒng)領(lǐng)訪中のように電撃的に手を結(jié)ぶこともありうる。日本としては思い込みや期待を排し、あらゆる事態(tài)を想定して入念に準(zhǔn)備し柔軟に対応することが重要だ。
◆TPP11とRCEPを繋ぐ橋渡しを
日本と中國との間には國交正?;詠恧尉o密な相互経済関係がある。浙江省や上海市など経済発展が目覚ましい地方政府のトップを経験し、日本企業(yè)関係者との親交が深い習(xí)主席の本音は日本との共存共栄に持ち込むこと?!笇澣臻v係は改善すべきだ。日中の経済交流と民間交流を強(qiáng)化せよ」と発言している。
アジア太平洋の経済相互依存で、日本は絶好のポジションに位置する。米國が離脫した環(huán)太平洋経済連攜協(xié)定(TPP11)と中國、韓國、東南アジア、インドなどが加わる東アジア地域包括的経済連攜(RCEP)をともに推進(jìn)し結(jié)合させればこの地域の繁栄と安全に繋げられる。
日本の役割は重要である。最大の同盟國である米國と最大の貿(mào)易相手國である中國の間で橋渡し役を擔(dān)うべきだろう。日本が経済の相互依存よりも単純な軍事的安保優(yōu)先に傾斜すれば、世界の成長センター、アジア太平洋の繁栄を損なう。
◆安倍首相「今春の習(xí)主席國賓訪日を重視」
安倍首相は今回訪中した際、北京で習(xí)近平國家主席とも會談、今年春に予定される習(xí)氏の國賓來日について「極めて重視している」と伝えた。習(xí)氏は「新時代」という言葉を使い、協(xié)力に強(qiáng)い意欲をみせた。
安倍首相は日中韓首脳會議が開催された中國?成都で李克強(qiáng)首相と會談し、習(xí)近平國家主席の國賓訪日に向けた準(zhǔn)備を進(jìn)めることや、経済連攜の強(qiáng)化などについて協(xié)議した。安倍首相は「來春の習(xí)近平主席の國賓訪日の成功に向けて、大局的な、忌憚のない意見交換を行いたい」と呼びかけた。
習(xí)氏の國賓での訪日をめぐっては、中國公船による尖閣諸島周辺の領(lǐng)海への侵入や抗議デモが激化する香港情勢などを理由に、一部保守勢力から疑問の聲も出ているが、安倍首相は成都で開いた記者會見で「中國との間には様々な懸案が存在していることも事実であり、習(xí)氏との日中首脳會談でも直接提起をした」と言明。習(xí)氏の國賓訪日で加速する友好的な関係を通じて毅然と対応していく方針を示した。
日本にとって、緊密な日米関係を維持する一方、日中改善を進(jìn)めることが國益につながる。米國は昨年のトランプ氏をはじめ多くの大統(tǒng)領(lǐng)が國賓として來日しており、第二の大國中國のトップの國賓接遇は自然の流れである。日中は近年、首脳の往來が滯り、國家主席は10年以上も公式に來日していない。これまでも日本が國家主席だった江沢民氏や胡錦濤氏を國賓として招き、宮中晩さん會でもてなしてきた。
「國賓接遇」は約束済みで、外交筋によると中國との関係改善について、安倍政権は水面下で「米國との同盟関係は不動」と米側(cè)に伝え、米側(cè)も「日中が緊張を和らげるのは良いことだ」と理解しているという。経済?軍事力で米國と肩を並べる可能性がある隣國中國と外交的に仲良くすることに越したことはない。
◆外交手段で東アジア安定を
日本が目指すべきは、外交的な手段で東アジアの安定につながる成果をあげることだ。日中は2008年、東シナ海の紛爭を防ぐため、ガス田共同開発の合意を交わしたが、実現(xiàn)されておらず、具體化は最優(yōu)先課題である。日中防衛(wèi)首脳のホットライン設(shè)置も合意したまま最終的に実現(xiàn)していない。今春の日中首脳會談で決著をつけるべきだ。
習(xí)氏は國賓として日本を訪れる以上、何としても成功を演出したいはずだ。既に外交當(dāng)局同士で目玉となる外交文書作りなどの準(zhǔn)備に著手している。日本は交渉上優(yōu)位にあり、その立場を十分に生かすべきである。関係改善の流れは習(xí)氏の來日後も続くだろう。かつて一觸即発だった狀態(tài)が改まり、関係が安定するのは望ましいことだ。
「中國の海洋進(jìn)出を念頭に防衛(wèi)力を強(qiáng)化する」というフレーズが日本政府高官やメディアで多用される。日本の防衛(wèi)費(fèi)も安倍政権下で急増し、令和2年度予算案では5兆円を大きく突破した。日中両國が軍事的に張り合うだけでは東アジアの緊迫化は高まる一方となる。
こうした中、2019年9月中旬、中國人民解放軍佐官級訪日団24人が東京都內(nèi)のホテルで自衛(wèi)隊の中堅幹部30人との歓迎レセプションに臨んだ。制服姿で約2時間にわたって交流し、防衛(wèi)當(dāng)局者同士の歓談の輪が広がった。
同訪日団長の宋延超?少將(中央軍事委員會國際軍事協(xié)力弁公室副主任)は「19年は中日両國にとって重要な年。新中國成立70周年であり、日本は『令和』時代がスタートし、両國関係は新たな安定と発展向けさらなる進(jìn)化を遂げている。代表団の今回の訪日が相互理解を増進(jìn)し、雙方の友情と協(xié)力を促進(jìn)することを希望する。防衛(wèi)當(dāng)局幹部の相互交流は中日友好の重要な懸け橋となり、両國関係発展の貴重な財産となるでしょう」と挨拶した。高橋憲一?防衛(wèi)省事務(wù)次官は「この種の防衛(wèi)當(dāng)局者交流は地域の安定と平和に大きく寄與する。19年4月には海上自衛(wèi)隊の艦船が上海港に寄港するなど、交流が活発化していることを歓迎したい」と述べた。
日中雙方の參加者は交流を深め「有意義なひと時だった」などと語っていた。どこの國でも軍事當(dāng)局は予算を獲得するために仮想敵國をつくりたがるが愚の骨頂。あくまでも外交的な手段で紛爭を解決すべきだとの意見が雙方から出された。
◆アジアのベストシナリオは?
日本にとって米國との同盟は重要だが、「前のめり過ぎでバランスが悪い」(経団連幹部)との懸念は大きい。安倍首相はトランプ大統(tǒng)領(lǐng)と5回を數(shù)えるゴルフ?ラウンド、枡席を大改造した大相撲観戦などを行い、「特別な関係」を誇示している?!竾议gに友情はない、あるのは利益だけだ」との格言を思い起こすべきだろう。
米軍は3日、イラク首都バグダッドをミサイルにより空爆し、その場にいたイラン革命防衛(wèi)隊の精鋭組織「コッズ部隊」のカセム?ソレイマニ司令官を殺害した。イランのザリフ外相は「危険で愚かな暴挙」と反発し報復(fù)を示唆。米トランプ政権誕生で対立が深まった米イラン間の緊張は、一気に高まりそう。軍事衝突の懸念もある。
「アメリカ第一」を標(biāo)榜するトランプ大統(tǒng)領(lǐng)は場當(dāng)たり的な言動や行動を繰り返すことが多い。一方、「安倍外交」は対米追従にもかかわらず北朝鮮拉致問題、ロシアとの領(lǐng)土交渉、日韓関係など多くの外交案件で成果が上がっていない。
北朝鮮による核?弾道ミサイル開発や、中國の海洋進(jìn)出、経済相互発展などに対しては、「日米同盟」、「中國との互恵関係の重視」、「アジア諸國との連攜」の3本柱を中心にバランスよく展開していくことが現(xiàn)実的であろう。日本は政治と軍事では米國と連攜し、経済では中國と戦略的な互恵関係を深めるという複數(shù)の軸足をもつことを確認(rèn)する必要があろう。
(完)
■筆者プロフィール:八牧浩行
1971年時事通信社入社。 編集局経済部記者、ロンドン特派員、経済部長、常務(wù)取締役編集局長等を歴任。この間、財界、大蔵省、日銀キャップを務(wù)めたほか、歐州、米國、アフリカ、中東、アジア諸國を取材。英國?サッチャー首相、中國?李鵬首相をはじめ多くの首脳と會見。東京都日中友好協(xié)會特任顧問。時事総合研究所客員研究員。著?共著に「中國危機(jī)ー巨大化するチャイナリスクに備えよ」「寡占支配」「外國為替ハンドブック」など。趣味はマラソン(フルマラソン12回完走=東京マラソン4回)、ヴァイオリン演奏。
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