1月31日號(hào)で、死亡したと考えられていた金敬姫（キム?ギョンヒ＝金正恩の叔母）元?jiǎng)簝P黨秘書が6年ぶりに公の場(chǎng)に現(xiàn)れたことについて、元英國駐在北朝鮮公使のテ?ヨンホ（太永浩）氏のブログなどをもとに書いた。結(jié)論としては、金敬姫毒殺説を払拭するために、金正恩がわざと金敬姫（叔母）をみんなの前に出し、「ほら、元?dú)荬巧皮蓼工琛工去ⅴ冤`ルすることで、自分（金正恩）はそんなに悪辣な人間ではないですよと大向こうを納得させるべく、金正恩一流の小細(xì)工をやってのけたのだ、というものだった。

ネットによると、今回登場(chǎng)した金敬姫氏は本物ではなくて影武者だという視角もあるようだ。筆者としては肝をつぶすくらいびっくりしたけれど、根拠のほどがしっかりしている。今回のコラムではこのネットの文章（JBpressの樸承［王民］氏）を土臺(tái)としながら筆者のことばでお屆けしたい。

樸氏によると、影武者説を主張するのは、元北朝鮮の高官である李正浩（イ?ジョンホ）氏。この人は、朝鮮労働黨中央委員會(huì)（黨本部）で數(shù)十年間勤務(wù)し、金一族の資金管理を擔(dān)當(dāng)する労働黨39號(hào)室課長や、外貨稼ぎのための會(huì)社「大興総會(huì)社」大連支社長などを歴任し、2014年に韓國に亡命している。

李正浩氏の話が続く。「金正恩が金敬姫を殺害し、金敬姫の側(cè)近をすべて処刑した。私はそのことに衝撃を受け亡命を決意した。當(dāng)時(shí)平壌では、幹部の間でこのこと（金敬姫氏殺害）は秘密でもなんでもなかった。中央機(jī)関と黨本部に話が伝わっていた」

さらに証言は続く?！附鹗悉瑲⒑Δ丹欷咳諘r(shí)は2014年5月5日だ。この日は、國家安全保衛(wèi)部（現(xiàn)在は國家安全保衛(wèi)省。以下、保衛(wèi)部）の大會(huì)があった。張成沢氏を処刑した後、保衛(wèi)部を激勵(lì)するための大會(huì)だ。そこに金正恩も出席する予定だったが、姿を現(xiàn)さなかった。地方保衛(wèi)部からも部員がやってきていたし、幹部全員が參加して金委員長と記念撮影することになっていたのでみな浮かれていたのだが、金委員長は最後まで來なかった。そのため、金元弘（キム?ウォンホン）部長が機(jī)転を利かせ、集まった要員たちに金委員長に宛てて『忠誠の手紙』を書かせた。4．25文化會(huì)館に集まった保衛(wèi)部要員の3000人全員が忠誠の手紙を書いた。それで仕方なく金委員長は金元弘部長に返事をした。金委員長は、『金敬姫書記が死んだので自分は大會(huì)に出場(chǎng)できないのだ』と言った。それを聞いた金元弘部長が金委員長の『お答え』を保衛(wèi)部幹部と局長級(jí)に伝えたのだ」。

李正浩氏は後日、その話の內(nèi)容を保衛(wèi)部幹部の友人から聞いた。また974部隊(duì)（金正恩委員長の護(hù)衛(wèi)部隊(duì)）の友人にも確認(rèn)したという。

韓國の一部のメディアは、「2013年12月、張成沢氏が処刑された當(dāng)時(shí)、張氏と金敬姫氏は離婚していたので、夫人の金氏が夫?張氏の処刑を了承した」と報(bào)道していた。だが実際には、張氏夫妻は離婚していなかったし、金氏は夫?張氏の処刑の動(dòng)きに強(qiáng)く反発していた。夫の処刑を了解したという當(dāng)時(shí)の報(bào)道は、北朝鮮當(dāng)局が流したフェイクニュースだった可能性が非常に高い。

では、金敬姫氏はなぜ毒殺されなければなかったのか。それにはこうした経緯があるという。保衛(wèi)部などが張成沢氏を逮捕しようとしたが、金敬姫氏と一緒に住んでいる自宅での逮捕が容易ではなかった。このような空気を摑んだ金敬姫氏が、當(dāng)時(shí)の実力者のチョ?ヨンジュン労働黨組織指導(dǎo)部第1副部長とキム?チャンソン書記室長（金正恩委員長の秘書室長）に対して、夫?張氏を害しないようにと注意をした。この幹部らが金敬姫氏の意見を報(bào)告すると、金正恩委員長は「組職指導(dǎo)部は『張り子の虎』だな」と言った。それは、組職指導(dǎo)部が張氏が恐ろしくて処理できずにいるという皮肉とともに、張氏の排除を命令する言葉だった。

金敬姫氏は、張氏の処刑後に平壌から遠(yuǎn)くない招待所で監(jiān)禁狀態(tài)におかれ、持病の治療を受けていた。このとき、夫?張氏を無慈悲に処刑したことへの不満から、金正恩委員長に対する悪口を言い続けていたという。これを聞いた最高指導(dǎo)部からついに指示が下された?！袱长欷辖鹫魑瘑T長の権威を傷つける行為だ」とし、金敬姫氏は薬物注射で毒殺された。その後、北朝鮮指導(dǎo)部から労働黨の擔(dān)當(dāng)部署に金敬姫氏に関するすべての記録を削除するよう指示され、記録映畫、出版物などに出ている金氏に関するすべてが削除された。このような措置は、これまで反黨?反革命分子へのみなされてきたものと同じであった。

だからこそ李正浩氏は、今年1月25日の三池淵劇場(chǎng)での記念公演に出ている金敬姫氏を見て、「金敬姫は偽物だ。死んだ人は絶対戻って來られない」と言ったのだ。2015年5月に李正浩氏は、米CNNとのインタビューで金敬姫氏が毒殺されたという事実を証言しているのだけれど、その確信は現(xiàn)在も揺らいでいないようだ。

では、北朝鮮の指導(dǎo)部は、死んだはずの「金敬姫」をなぜ今になって表舞臺(tái)に引っ張り出したのだろうか。

いま北朝鮮は、國連と米國の制裁で経済的に相當(dāng)な苦境に立たされている。そこで國民の不満を鎮(zhèn)めるため、「白頭血統(tǒng)」の結(jié)束を示す必要から、金敬姫氏を登場(chǎng)させたのだ、との解釈もなされている。

だが、また別の脫北者であるエリート層のある人物は、これとは別の見方を示す。「金敬姫がまだ健在であることを北朝鮮國民に見せた後、『病死した』と発表し、國葬を行うためのトリックではないか。おそらくまもなくその（虛偽の）葬儀があるだろう」と予想する。つまり、金氏の毒殺説を覆すためのニセモノの葬儀を近く実施するだろうけど、金敬姫の登場(chǎng)は、そのための準(zhǔn)備過程の一部だろうというわけだ。金正恩委員長は、叔父や叔母を殺した冷血漢のイメージを返上したがっている?！甘甯袱蚋呱涑hで処刑し、叔母を毒殺したという破倫児（パリュンア＝人倫に外れた悪人）の印象から脫するために、金敬姫の影武者を立てたのだろう。だが今回の件は、むしろ破倫児のイメージを國民に思い起こさせることになるかもしれない」（エリート脫北者）

また健康狀態(tài)も、以前の金敬姫氏を知る人からすれば首を傾げたくなるようなものだった。金敬姫氏はずっと前からアルコール中毒かつ心筋梗塞や糖尿病などさまざまな病気も患っていたので“総合病棟”と呼ばれていたほどだ。6年前に金敬姫氏が姿を消す直前には、顔もだいぶ痩せ一目で病狀の重いことが分かるほどだった。しかも移動(dòng)には車椅子を使わなければならなかったのだ。

ところがあれから6年後に現(xiàn)れた金敬姫氏は、顔色も良く顔に肉も付きかくしゃくとしていていかにも健康そう。金敬姫氏は1946年生まれだから、今年で74歳になる。果たして人間、本當(dāng)にあそこまで健康狀態(tài)が回復(fù)されるものなのか。

今回の金氏の登場(chǎng)にもっとも驚いているのは、実は北朝鮮幹部らだろう。記録映畫などですでに彼女の痕跡は消されているので、処罰されたことは明白だし労働黨幹部ならば、金氏が「毒殺された」ことは皆知っている事実。最近、北朝鮮當(dāng)局は経済事情の悪化で、朝鮮労働黨中央委員會(huì)（黨本部）幹部たちと內(nèi)閣の幹部たちへの月給と配給を負(fù)擔(dān)する余力がないためか、人員を3分の2に縮小し、3分の1の人員を地方に降格しているという。言ってみれば「地方に行って自分の力で暮らせ」ということだ。そうした中での、“ニセ金敬姫”の登場(chǎng)だ。北朝鮮幹部たちは、じっと息をひそめだしたという。またもや粛清の血しぶきが飛びかうのではないか、という恐怖に震えながら。

近々、金敬姫の國葬があれば、エリート脫北者の「予言」は的中！ということになる。はたしてどうでるか。いずれにしても、6年ぶりの金敬姫氏の登場(chǎng)にはかなりの意味が潛在していることだけは間違いないもののように思われる。今後の北の動(dòng)靜にまたまた注目だ。

■筆者プロフィール：木口 政樹

イザベラ?バードが理想郷と呼んだ山形県?米沢市出身。1988年渡韓し慶州の女性と結(jié)婚。元三星（サムスン）人力開発院日本語科教授、元白石大學(xué)校教授。趣味はサッカーボールのリフティング、クラシックギター、山歩きなど。著書に『おしょうしな韓國』、『アンニョンお隣さん』など。まぐまぐ大賞2016でコラム部門4位に選ばれた。

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