私は以前、北京で倉(cāng)庫(kù)業(yè)をしていたことがある。土地のオーナーから土地と建物を借り、建物を倉(cāng)庫(kù)に改造して、様々な業(yè)種の企業(yè)に貸し出す、という仕事だ。

【その他の寫真】

元々、當(dāng)社では海外引越の仕事のために800平方メートルの倉(cāng)庫(kù)を借りていた。その後、ありがたいことに仕事が増え、この面積では手狹になり、2倍の1600平方メートル前後の別の倉(cāng)庫(kù)を探していた。しかし、當(dāng)時(shí)の中國(guó)の景気は絶好調(diào)、そんなまとまった面積の倉(cāng)庫(kù)を貸してくれる會(huì)社はなく、800平方メートルの倉(cāng)庫(kù)はパンク寸前になっていた。

そこで、発想を転換した?！袱饯螭胜藗}(cāng)庫(kù)が足りないなら、貸す側(cè)に回ればいいじゃないか」。探す対象を倉(cāng)庫(kù)ではなく、空き工場(chǎng)にしたところ、すぐに8300平方メートルの舊木工工場(chǎng)が見つかった。當(dāng)社はこの舊木工工場(chǎng)の建物を倉(cāng)庫(kù)に改裝し、1600平方メートルを自社で使用、殘りの6700平方メートルを貸し出すことにした。

しかし、時(shí)はおりしも北京オリンピック開催直前。北京市內(nèi)には厳しい交通規(guī)制がしかれ、北京の物流はほぼストップした。物流がストップしているときに、倉(cāng)庫(kù)を借りる人はいない。改裝を終えた倉(cāng)庫(kù)は、何カ月もの間開店休業(yè)狀態(tài)となり、土地と建物のオーナーに支払う家賃だけが流出していった。

その後もリーマンショックを発端とする金融危機(jī)などで物流の量が減少したが、倉(cāng)庫(kù)は徐々に埋まり始め、3年後、ようやく満室となった?！袱丹?、これから倉(cāng)庫(kù)の改裝費(fèi)用と、開店休業(yè)狀態(tài)のときに出した赤字を取り戻すぞ」というときに、土地と建物のオーナーから賃料の大幅な値上げ通告があった。

そんな値上げを受ければ全く利益が出なくなってしまうし、契約書にも書いていない値上げだったので、當(dāng)社は當(dāng)然のように斷り続けた。しかし、何度目かのお斷りの翌日、倉(cāng)庫(kù)に地元の役人が來て、重箱の隅をつつくような査察を行い、巨額の罰金を言い渡していった。

偶然か、とも思ったが、北京市內(nèi)でも郊外では中國(guó)の田舎と同じで、政府の役人も企業(yè)オーナーも警察もヤクザもみんなグルになっておいしい汁を吸っていると聞く。今回は役人だったが、地元のヤクザが來て、倉(cāng)庫(kù)に放火されたり、當(dāng)社の社員に危害を加えたりされたらたまらない。

この完全にアウェーの地で、何をされるかわからない強(qiáng)烈な恐怖感から、悔しいながらも當(dāng)社は土地と建物をオーナーに返卻、後には取り戻せなかった巨額の赤字だけが殘った。

完全に向こうの契約違反なので、裁判に訴える手もあったと思うが、彼らが裁判官に後ろから手を回して、公正な裁判が行われない可能性もあったし、たとえ勝訴して値上げ撤回を勝ち取っても、アウェーの地で何をされるかわからない恐怖は続いたであろう。

この事件から學(xué)んだのは、中國(guó)でビジネスをする場(chǎng)合には、なるべく田舎ではなく、都會(huì)でやった方が良いということだ。中國(guó)は法治國(guó)家化が進(jìn)んでいると言われているが、田舎にはまだまだ既得権益層である政府の役人、企業(yè)オーナー、警察、ヤクザなどがみんなでグルになっておいしい汁を吸っている無法地帯のようなところがあるように思う。

今後、中國(guó)に進(jìn)出する日本企業(yè)が、彼らの餌食にならないことを祈るばかりである。

■柳田洋

永豊有限公司　総経理

1966年東京生まれ。早稲田大學(xué)商學(xué)部卒業(yè)後、丸紅で石炭貿(mào)易に従事。1996年より5年半にわたり丸紅北京支店に駐在するも、起業(yè)の志捨て難く、2001年丸紅を退社。そのまま北京に留まり駐在員事務(wù)所代行サービス會(huì)社を設(shè)立。その後、クロネコヤマトの海外引越代理店として物流事業(yè)を立ち上げる?，F(xiàn)在は中國(guó)での會(huì)社経営経験を生かし、中國(guó)に積極展開しようとしている日本企業(yè)の社員を?qū)澫螭?、講演、助言などのサポート活動(dòng)を行う。著書に「起業(yè)するなら中國(guó)へ行こう！」（PHP新書）。