17年前、私が大學(xué)院でマスメディア専攻を勉強(qiáng)していた頃に取り組んだ修士論文のテーマは「中國マスメディアにおける批判力の『量』と『質(zhì)』」であった。主にSARS報道を例として、中國マスメディアの姿勢を分析した。

長期間にわたって、「宣伝機(jī)器」であった中國マスコミの実態(tài)を痛感し、一センチずつ言論自由の空間を開拓していくジャーナリストたちの信念に感銘をうけていた私は、SARSが流行していた期間中、かつてないほどマスメディアの発した「情報公開」、「知る権利」に対する要求の強(qiáng)さを見て、修士論文のテーマを決めた。さらに、現(xiàn)代中國におけるマスメディアの批判力と政治民主化の過程をさらに詳細(xì)に検証することは、私には一生のテーマになると考えた。

17年前の數(shù)カ月間、私はSARS報道を研究。最初政府が情報隠蔽をした。その時、大膽なメディアが現(xiàn)われた。雑誌「財経」および新聞「新快報」、「中國青年報」、「南方週末」などマスメディアが情報公開に消極的な當(dāng)局の姿勢を批判した。メディアが客観的な立場で報道を行い、政府?権力の立場ではなく、中立的な立場で客観的に権力に対して批判を行い、一斉に情報公開と政治體制改革を求めていた。

17年前、一人の英雄がいた。軍隊の退職醫(yī)師蔣彥永さんがSARSの事情を書いてアメリカの週刊誌「タイムズ」に投書した。そして、蔣さんが「タイムズ」の取材を受け、感染者隠しの実態(tài)を証言した。「タイムズ」の特ダネ記事は中國語に翻訳されてネット上に流れ、中國國內(nèi)でも広く知られることとなった。

殘念ながら、17年経った今、政府の隠蔽體質(zhì)は変わっていない。17年前と同じ、「社會の安定」を理由に言論統(tǒng)制を徹底する。17年前のSARSを忘れたのだろうか。政府が相変わらず情報を隠す。今回、新型肺炎の感染拡大は完全に「人災(zāi)」だと言える。その代価はあまりにも高い。2月2日の時點で、新型肺炎の感染者數(shù)が2003年5327名のSARS患者を大幅に超え、14000人あまりになった。

2019年末に湖北省武漢市で新型肺炎の集団感染が発覚した直後、市の公安當(dāng)局が「デマを流した」として市民8人を摘発した。その後、8人全員が現(xiàn)地の醫(yī)師であったことが判明した。「デマ」とされた內(nèi)容とは醫(yī)師同士がグループチャットで事態(tài)の深刻さに警鐘を鳴らすものであった。17年前と同じ、責(zé)任感の強(qiáng)い醫(yī)師が情報を発信した。しかし、今回は「8人の蔣彥永」が出ても、弾圧された。WeChatのモーメンツでは人々の恐怖と怒りが噴出しているにもかかわらず、マスメディアは沈黙している。時代が後退したのではないか、と慨嘆せずにいられない。

何故、いまだに政府の役人が現(xiàn)場の醫(yī)者たちの聲に耳を傾けようしないのか?？茖W(xué)精神に基づいて、判斷を下すべきだろう。人を権力で拘束しても、ウイルスを拘束することはできない。言論コントロールの力をウイルスのコントロールに使えればいい。感染の蔓延を防ぐ、社會の安定を保つ、政府の信用を維持する、パニックを防止する、人心を引き留めるというさまざまな視點からも、大衆(zhòng)に関わる危機(jī)が現(xiàn)われたら、政府は直ちに正しい情報を公開するべきである。

この十?dāng)?shù)年間、中國は急スピードで経済発展してきた。お金持ちの人が急増している一方、貧富の差が凄まじい勢いで拡大した。先日、日本の番組で、「今回は旅行のためではなく、自分と家族の健康のために、すみません、日本にきました」空港で取材に応じた中國人観光客がこういうふうに話した。健康のために日本に來るとは、現(xiàn)在中國は安全な場所ではないこと。お金持ちになっても、暮らし環(huán)境には、不安がたくさんある。ただし、この時期日本に來たら、日本に迷惑をかけるだろう。経済力アップに伴い、中國人の海外旅行者の數(shù)が年々増加していく。日本旅行者も年間1000萬人までに迫ってきた。國境を越える人たちがウイルスをもグローバル化した。勿論、個人を責(zé)めるつもりはないが…。

経済発展を続けてきた中國は多くの國と人々に経済的な恩恵をもたらしたかもしれないが、今回、世界中に多大な恐怖と混亂を撒き散らしてしまった。最も言いたいことは、ウイルスが中國政治體制の欠點を完全に暴露させた。伝染病と同じように、政治的感染癥とはすなわち報道規(guī)制と獨裁政治である。今回の「武漢肺炎」の教訓(xùn)は中國の政治體制改革を喚起させるだろうか。

YouTube上の武漢現(xiàn)地にいる中國人公民記者の報道によると、現(xiàn)在、封鎖されている武漢では、病院がたいへん混雑しているため、大勢の患者が治療すら受けられない?！刚lか、彼らを助けてください」と叫びたい。一刻も早く事態(tài)が収まり、病に襲われた人たちに一日も早く平穏な日々が戻ってくることを願うばかりである。

■筆者プロフィール：黃 文葦

在日中國人作家。日中の大學(xué)でマスコミを?qū)煿イ?、両國のマスコミに従事。十?dāng)?shù)年間マスコミの現(xiàn)場を経験した後、2009年から留學(xué)生教育に攜わる仕事に従事。2015年日本のある學(xué)校法人の理事に就任。現(xiàn)在、教育?社會?文化領(lǐng)域の課題を中心に、関連のコラムを執(zhí)筆中。2000年の來日以降、中國語と日本語の言語で執(zhí)筆すること及び両國の「真実」を相手國に伝えることを模索している。

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