インドネシアのバリで、APEC（アジア太平洋経済協(xié)力）首脳會(huì)議が開(kāi)かれる前日の10月6日、中國(guó)の習(xí)近平?國(guó)家主席は臺(tái)灣の蕭萬(wàn)長(zhǎng)?前副総統(tǒng)と會(huì)談した。習(xí)近平は溢れんばかりの笑みを振りまいて蕭萬(wàn)長(zhǎng)と握手した。臺(tái)灣は「臺(tái)北」としてAPECに正式加盟しているが、それでも「一つの中國(guó)」を唱える中國(guó)は臺(tái)灣総統(tǒng)の首脳會(huì)議への參加を認(rèn)めて來(lái)なかった。しかしここに來(lái)て、風(fēng)向きが変わりつつある。來(lái)年北京で開(kāi)催されるAPEC首脳會(huì)議に臺(tái)灣の馬英九総統(tǒng)を招聘することを習(xí)近平は示唆したのだ。

【その他の寫(xiě)真】

▼北京政府に寄り添う馬英九

2005年4月29日、臺(tái)灣の國(guó)民黨主席であった連戦が訪中し、當(dāng)時(shí)の胡錦濤國(guó)家主席と北京の人民大會(huì)堂で対面している。1949年、中華人民共和國(guó)誕生に伴い國(guó)民黨が臺(tái)灣に逃亡してから56年の年月が経っていた。中國(guó)はこの會(huì)談を「國(guó)共（國(guó)民黨?共産黨）第三次合作」として、大歓迎。ちょうど反日デモが激しく燃え上がっていた時(shí)期だ。憎しみに歪みながら日本罵倒を叫ぶ若者の顔と、「熱烈歓迎！」と手を振りながら國(guó)民黨主席を迎える若者の笑顔は、不快なほどの対象を成していた。

このとき、1992年に互いに「一つの中國(guó)」などに合意した「92コンセンサス」を再確認(rèn)し明文化した。それからというもの、臺(tái)灣の経済が中國(guó)なしには成り立たないほどの優(yōu)遇策を、中國(guó)は臺(tái)商（臺(tái)灣商人）に提供し、大量の臺(tái)商を大陸に誘致。

その結(jié)果、2008年の総統(tǒng)選では、臺(tái)灣獨(dú)立派である陳水扁（民進(jìn)黨）が敗北し、獨(dú)立を主張しない國(guó)民黨の馬英九が総統(tǒng)に選ばれた。馬英九はもっぱら北京政府に寄り沿って臺(tái)灣経済を中國(guó)に食い込ませ、中國(guó)を喜ばせた。

しかし中國(guó)への依存度に反比例するかのように、馬英九の臺(tái)灣における支持率は激減している。今年9月に入ってからの臺(tái)灣の「年代テレビ局（ERA）」の民意調(diào)査によれば、馬英九の支持率は遂に一桁臺(tái)の9．2％にまで下がったという。黨內(nèi)問(wèn)題も抱えているとは言え、果たして來(lái)年のAPECまで持つかどうかさえ疑わしい。それでもなお中國(guó)としては経済だけでなく政治面においても本格的に乗り出し、臺(tái)灣を「中國(guó)から抜け出せないスパイラル」へと誘い込み「両岸（中臺(tái)）統(tǒng)一」に持って行くつもりだろう。

▼中國(guó)に嫌われたくない経済界

このたび臺(tái)灣に行き、中國(guó)の臺(tái)灣経済への食い込み方には、ただならぬものがあるのを感じた。

筆者は中華人民共和國(guó)が誕生する前の國(guó)共內(nèi)戦（革命戦爭(zhēng)）を中國(guó)吉林省長(zhǎng)春市で體験している。1948年、國(guó)民黨が支配する長(zhǎng)春市は中共軍に食糧封鎖された。數(shù)十萬(wàn)の長(zhǎng)春市民が餓死。筆者の家族もその中にいる。長(zhǎng)春を脫出するときには二重になっている包囲網(wǎng)「●（上下を縦に重ねる）子（チャーズ）」の中に閉じ込められ、死體の上で野宿した。中共軍側(cè)の門(mén)が閉ざされたままだったからだ。筆者は恐怖のあまり記憶を失った。その原體験をまとめた『●（上下を縦に重ねる）子（チャーズ）――出口なき大地』を1984年に出版し中國(guó)語(yǔ)に翻訳。何とか中國(guó)で出版しようと試みてきたが、言論規(guī)制により未だ許可されていない。

中國(guó)が民主化すれば言論の自由も得られるだろうが、その日まで生きていられるのかが疑わしい年齢になってしまった。そこで昨年リライトして出版した『●（上下を縦に重ねる）子（チャーズ）――中國(guó)建國(guó)の殘火』を改めて中國(guó)語(yǔ)に訳し、やむなく臺(tái)灣で出版することを決意した。臺(tái)灣の出版社と交渉が成立したのだが、協(xié)力してくれた人物の言った言葉に愕然とした。その人は筆者に「臺(tái)灣で出版する本には、どうか自分の名前を出さないでほしい」と言ったのである?！袱胜激胜榇箨懁趣谓灰驻ⅳ毪韦?、中共に不利な史実を殘すことに加擔(dān)したと思われたくない」というのだ。

▼臺(tái)灣にもやがて愛(ài)國(guó)主義教育が？

共産黨軍と戦って敗北し臺(tái)灣に逃亡した國(guó)民黨政府は、1987年になってようやく軍事體制下の戒厳令を解き中國(guó)反攻を諦めている。それでも90年代にはまだ中共への敵対的ムードが殘っていた。それが今「中共に嫌われたくない」という時(shí)代に入っている。これではまるで臺(tái)灣は精神的に「中國(guó)」に吸収されているようなものではないか。

雙十節(jié)（「中華民國(guó)」建國(guó)記念日）の10月10日、馬英九総統(tǒng)は中國(guó)大陸との関係は「國(guó)際的関係ではない。同じ中華民族だ」と言った?！竾?guó)際的関係でない」ということは「國(guó)と國(guó)の関係ではない」ということだ?！敢护膜沃袊?guó)」を認(rèn)めるということにつながる。

習(xí)近平は10月6日の會(huì)談で「両岸問(wèn)題を後の世代に殘したくない」として、あたかも習(xí)近平政権內(nèi)に両岸統(tǒng)一を成し遂げるような発言をした。

しかし北京政府に付き従う馬英九の異常なほどの支持率低下は、臺(tái)灣の國(guó)民が「統(tǒng)一」に「ノー」を突き付けていると見(jiàn)るべきだろう?！附y(tǒng)一」は力関係からいけば「吸収」だ。

その一方で「中共に嫌われたくない」という経済界の思惑。

また一つ、言論規(guī)制の地域が増えていくことになるのだろうか。

尊厳と精神性が勝つのか、実利と経済が勝つのか。

一國(guó)二制度だろうと、吸収されれば香港と同じように、反日的で共産黨を禮賛する愛(ài)國(guó)主義教育を強(qiáng)要される臺(tái)灣がやがて訪れる。今はまだ世界で最も親日的な臺(tái)灣。しばらく臺(tái)灣問(wèn)題から目が離せない。?。ǎ歼h(yuǎn)藤譽(yù)が斬る＞第5回）

遠(yuǎn)藤譽(yù)（えんどう?ほまれ）

筑波大學(xué)名譽(yù)教授、東京福祉大學(xué)國(guó)際交流センター長(zhǎng)。1941年に中國(guó)で生まれ、53年、日本帰國(guó)。著書(shū)に『ネット大國(guó)中國(guó)―言論をめぐる攻防』『チャイナ?ナイン―中國(guó)を動(dòng) かす9人の男たち』『チャイナ?ジャッジ毛沢東になれなかった男』『チャイナ?ギャップ―噛み合わない日中の歯車』、『●（上下を縦に重ねる）子（チャーズ）―中國(guó)建國(guó)の殘火』『完全解読「中國(guó)外交戦略」の狙い』など多數(shù)。