2013年10月17日、河南省鄭州市で“重癥精神障害者発見割り當(dāng)て”が科されていたことが明らかとなった。この社區(qū)（団地）からは40人、あちらからは50人と決められた數(shù)の重癥精神障害者を見つけ出さなくてはならないというもの。ノルマを達(dá)成するために無理やり重癥精神障害者に仕立て上げる行為まであった。

【その他の寫真】

問題となったのは2012年9月に鄭州市衛(wèi)生局が布告した「2012年鄭州市重癥精神疾病管理治療項(xiàng)目任務(wù)分配表」だ。人口1000人あたり2人の重癥精神障害者を登録することを目的としたもので、8324人のノルマを市內(nèi)の各區(qū)?県に割り當(dāng)てた。

各區(qū)?県は社區(qū)などの下級(jí)自治體にさらにノルマを分配しており、「＊＊団地で50人」といった重癥精神障害者探しが進(jìn)められていたという。頭を打ってから物忘れがひどくなったというだけで重癥精神障害者として登記されていた事例も報(bào)じられている。

中國メディアがこの問題を報(bào)じた後、鄭州市當(dāng)局は強(qiáng)制的なノルマではなく目安だったと弁解しつつも、妥當(dāng)な手法ではなかったと認(rèn)めている。

▼數(shù)値目標(biāo)は中央省庁発

ただしこのノルマは鄭州市に限ったものではないようだ。2012年7月、國家衛(wèi)生?計(jì)畫生育委員會(huì)は「重癥精神疾病管理治療業(yè)務(wù)評(píng)価プラン」を通達(dá)した。精神障害関連のリーダー會(huì)議を設(shè)置しているか、各自治體に関連醫(yī)療機(jī)関があるのかなどの項(xiàng)目を點(diǎn)數(shù)制でチェックするもので、鄭州市で問題となった重癥精神障害者の検出率も數(shù)値目標(biāo)に組み込まれている。

中國新聞週刊によると、2012年の検出率は2．5％がノルマであり、ノルマを0．5ポイント下回ると東部地區(qū)で4點(diǎn)、中部地區(qū)で3點(diǎn)、西部地區(qū)で2點(diǎn)の減點(diǎn)となる。パブリックコメント稿では他にも登記された重癥精神障害者が決められた管理に従っているか、病狀は安定しているかなどの項(xiàng)目も數(shù)値目標(biāo)とされており、數(shù)字に応じて減點(diǎn)措置が科されることになっている。

重癥精神障害者を軟禁するようなことは盛り込まれていないが、この制度の主眼は治療と同等以上に治安維持にあるようだ。2013年10月の國家衛(wèi)生?計(jì)畫生育委員會(huì)定例記者會(huì)見で●海華（デン?ハイホア、●は登におおざと）報(bào)道官は、重癥精神障害者が有効な治療と管理を受けなかった場合には、その10％がなんらかの事件を引き起こすと述べている。

2013年3月時(shí)點(diǎn)でチベット自治區(qū)以外の30省?市にある226市を重癥精神障害者管理?治療業(yè)務(wù)はカバーしており、353萬8000人の患者を登録している。重癥精神障害者検出率は目標(biāo)値の2．5％を上回る2．62％に達(dá)しているが、全患者の登録にはほど遠(yuǎn)く、今後登録率を高める方針を示した。

中國では精神障害者への支援が遅れていると言われ対策が進(jìn)められてきたが、気づけば精神障害者の支援ではなく、“精神障害者から他の人を守る“ための施策が、一つの柱となっていることがなんとも殘念だ。

▼官僚主義の極致か、それとも必要悪か、非合理的すぎる數(shù)値目標(biāo)あれこれ

それと同時(shí)に上意下達(dá)のノルマ割り當(dāng)てがきわめて非合理的なものになっていることにもあぜんとする。統(tǒng)計(jì)的に精神障害者が一定割合で存在することは間違いないが、統(tǒng)計(jì)には偏差があり、「この団地から50人」といったノルマでは、でっち上げをしないかぎり數(shù)字を満たすことはできない。

もっともそうした非合理なノルマは何も今回の件に限ったことではない。上述中國新聞網(wǎng)記事はさまざまな中國式ノルマの実例を紹介している。

よく知られているのが一人っ子政策絡(luò)みのノルマ。中絶手術(shù)＊件、女性向け不妊手術(shù)＊件、男性向け不妊手術(shù)＊件などとノルマを課された結(jié)果、未婚の女性をかっさらってきて不妊手術(shù)を受けさせたり、いい年のおじいちゃんがパイプカット手術(shù)を受けたりというありえない話が伝えられる。

他にも火葬ノルマという不思議な話もある。2005年、河南省では全人口の0．6％にあたる件數(shù)の火葬を?qū)g施せよというノルマが通達(dá)された。しかし小さな村では死者が少ない都市には全人口の0．6％もお亡くなりにならないケースが十分にありうる。ある鎮(zhèn)では仕方なく、2年前に土葬した遺體を掘り起こして火葬したという。

こうした不思議な指標(biāo)はいくらでも存在する?！腹\(zhòng)トイレのハエは2匹まで」「生理中の女性労働者は消費(fèi)カロリー1萬1304キロカロリー以上の重労働をさせてはならない」というものも一例だ。

官僚主義の極致とも言える、この種の非合理的な數(shù)値目標(biāo)を見ると、「さすが中國、最古の官僚制國家よ」とたたえたくなるのだが、その一方で無意味に見える數(shù)字がこれほどあふれていると、なにか目的があるのではないかとも勘ぐりたくなる。例えば、面従腹背で言うことを聞いてくれない地方政府にちゃんと仕事をさせるためには、この種のやたらと細(xì)かい數(shù)値目標(biāo)が必要不可欠……ということも考えられるのではないか。

火葬を普及せよと地方政府に命じるも無視されるほうがいいのか、それともきつい數(shù)値目標(biāo)を與えて墓を掘り起こす茶番劇を演じたほうがいいのか。中央政府の悩みは深い。広大な中國の統(tǒng)治は一筋縄ではいかないということだろう。

●高口康太（たかぐち?こうた）

翻訳家、ライター。豊富な中國経験を活かし、海外の視點(diǎn)ではなく中國の論理を理解した上でその問題點(diǎn)を浮き上がらせることに定評(píng)がある。獨(dú)自の切り口で中國と新興國を読むニュースサイト「KINBRICKS NOW」を運(yùn)営。