野上和月 2020年2月14日(金) 18時40分
拡大
中國を中心に感染が拡大している「COVID-19(新型肺炎)」をめぐって、2月5日、SNSで1本のボイスメッセージが香港中を駆け巡った。
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「政府の內(nèi)部情報によると、中國の多くの工場がすでに生産を停止したそうだ。生活必需品は數(shù)日內(nèi)に底をつく。特に紙製品。今すぐ買わないと」といった內(nèi)容だった。
私の攜帯にも香港人の友人からこのメッセージが転送されてきた。別の香港人の友人からは、スーパーで市民がトイレットペーパーの爭奪戦を繰り広げているビデオが送られてきた。そして翌日には、香港內(nèi)の多くのスーパーの棚から、トイレットペーパー、ティッシュ、漂白剤、コメなどの生活必需品がすっかり消えていた。マスクの品薄騒動に続き、今度は衛(wèi)生品やコメなどで買い占めが始まったのだ。
なぜこんな爭奪戦が起きたのか?
中國本土では感染拡大を食い止めようと各地封鎖狀態(tài)となり、工場の生産を危ぶむ聲が出ていた。そこに香港政府が、「2月8日から中國本土から香港に入境するすべての人に対して14日間の強制検疫措置をとる」と発表した。このため、生産が止まるうえに、中國本土―香港間の物流関係者も隔離措置で身動きがとれなくなれば、中國からの物資が完全に途絶える――。そんな憶測に「內(nèi)部情報」といった尾ひれがついて、市民を冒頭のパニック買いに走らせたようだ。
香港政府は、「物流は止まらず、物資は安定的に供給される。ネット上やSNSのデマやうわさに惑わされず冷靜になって」と、火消しに躍起となった。
食品業(yè)界は、「香港內(nèi)で流通する中國米は全體の7.7%に過ぎない。タイ米やベトナム米が主流だ」と強調(diào)した。
大手トイレットペーパー?メーカーも「品薄狀態(tài)は一時的なもの。春節(jié)休暇が終われば中國工場は再開する」と、噂を否定した。
しかし、市民の警戒感は今も消えていない。地元大手スーパーは、「一人1商品は2點まで」といった數(shù)量制限の張り紙をして、毎朝一定量の商品を陳列しはじめているが、朝イチで來店した市民が制限いっぱいまで買い占めていくから、トイレットペーパーの棚は瞬く間に空っぽになる。それ以外の商品も同じだ。マスクやアルコール消毒液なども相変わらず品薄で、ドラッグチェーン店には連日、開店前から長蛇の列ができている。
こんな殺到買いに拍車をかけるのは、「怕執(zhí)輸」という香港人の価値観だ。他人が持っているのに自分が持っていないと不安や損した気分になる。だから、そうならないために、とにかく人と同じ行動を取りたがり、“人が人を呼ぶ現(xiàn)象”が起こりやすいのだ。
さらに昨年6月以降、香港政府への大規(guī)??棺hデモが続く中、市民の間で政府に対する信頼感は失墜。香港內(nèi)で感染者が増える中で、政府の発言よりも周りの動きを見て、「値段が高くても」と、先を爭っている。家が狹くて普段あまり在庫を持たないから、非常事態(tài)になって焦って買っている、ということもあるようだ。
一連の品薄狀態(tài)を通じて、あらためて、香港の日用品の中國製への依存度の高さに気づかされた。そして、 “戦利品”でいっぱいの買い物かごを見て、いかにも香港人らしいと思う一方で、これでは本當(dāng)に商品を必要としている市民に行き渡りにくいのではないかと、心配になってくる。(了)
■筆者プロフィール:野上和月
1995年から香港在住。日本で産業(yè)経済紙記者、香港で在港邦人向け出版社の副編集長を経て、金融機関に勤務(wù)。1987年に中國と香港を旅行し、西洋文化と中國文化が共存する香港の魅力に取りつかれ、中國返還を見たくて來港した。新聞や雑誌に香港に関するコラムを執(zhí)筆。読売新聞の衛(wèi)星版(アジア圏向け紙面)では約20年間、寫真付きコラムを掲載した。2022年に電子書籍「香港街角ノート 日常から見つめた返還後25年の記録」(幻冬舎ルネッサンス刊)を出版。 ブログ:香港時間インスタグラム:香港悠悠(ユーザー名)fudaole89
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