それは、ある暖かい春の日の晝下がりだった。

【その他の寫真】

電話も鳴らず、當(dāng)社の社員たちは黙々とそれぞれの仕事をしていた。その靜寂を破ったのは、突然、當(dāng)社に入ってきて何も言わずに會(huì)議室の椅子にどっかと腰を下ろして「おい、責(zé)任者出せや！」と言い放った、屈強(qiáng)な5人組の男たちだった。

私は最初、ヤクザが當(dāng)社に難癖をつけてタカリに來たのかと思ったのだが、話を聞いてみると彼らはある役所の役人だった。彼らは當(dāng)社の財(cái)務(wù)資料などを次々に要求、3時(shí)間にも及ぶ重箱の隅をつつくような査察の末、當(dāng)社の営業(yè)に條例違反の部分がある、という理由で巨額の罰金を言い渡した。

私たちがその罰金の金額の大きさに驚いていると、今度ははっきりとは言わないものの「そちらの出方によっては、本日の査察はなかったことにしてやっても良い」というような內(nèi)容のことを話し始めた。相手はヤクザではなかったが、「當(dāng)社に難癖をつけてタカリに來た」という意味では、私の直感は當(dāng)たっていたのだ。

中國(guó)に進(jìn)出している日本企業(yè)は、こうした事態(tài)に陥ったらどう対処するべきなのだろうか？

答えは「きっぱりとお斷りする、しかし、丁重に」だ。一度こうした要求に応じてしまうと、一度では終わらない可能性があるし、特に日本企業(yè)はコンプライアンス上の問題があるので、絶対に賄賂を渡してはいけない。そして、その日はお引取り頂いて、翌日からその役人の上司につながる人脈を全力で探すのだ。

當(dāng)社も後日、うまく人脈をたどることができ、交渉した結(jié)果、言い渡された金額の1/10の罰金を支払うことで話がついた。日本ではありえない話だが、中國(guó)ではモノやサービスだけでなく、罰金も値切れるのだ。

中國(guó)ではなぜこんなことが起こるのか？

それは、中國(guó)では法治國(guó)家化が進(jìn)んでいるといっても、まだまだ非常に曖昧だったり、逆に非現(xiàn)実的に厳しすぎたりする法律が多く、その法律を「解釈」する権限が現(xiàn)場(chǎng)の役人に與えられているせいだと私は思っている。場(chǎng)合によっては、この會(huì)社が法律に違反しているかしていないか、罰金を1萬元にするか10萬元にするかは、役人の胸ひとつで決められるのだ。

そんな大きな権限を持っている中國(guó)の役人だが、「為人民服務(wù)（ウェイレンミンフーウー、人民の為に奉仕する）」を黨是とする中國(guó)共産黨の黨員なので給料は安い。すると、中には「この大きな権限を、うまく現(xiàn)金化できないか」と考えて、タカリに走る輩が出てくるのだ。

こうしたタカリ役人を根絶するためには、中國(guó)は法律をより現(xiàn)実的なものにして、現(xiàn)場(chǎng)の役人から法律を「解釈」する権限を剝奪、日本のように役人を「法律を厳格に執(zhí)行するだけの存在」にする必要があると思う。

しかし、中國(guó)がそうした理想的な狀態(tài)になる前に、會(huì)社にタカリ役人が來てしまったら、賄賂は丁重にお斷りした上で、合法的なあらゆる手段を使って罰金を値切るのが、現(xiàn)実的な対処法なのではないかと思う。

■筆者プロフィール：柳田 洋

永豊有限公司 総経理

1966年東京生まれ。早稲田大學(xué)商學(xué)部卒業(yè)後、丸紅で石炭貿(mào)易に従事。1996年より5年半にわたり丸紅北京支店に駐在するも、起業(yè)の志捨て難く、2001年丸紅を退社。そのまま北京に留まり駐在員事務(wù)所代行サービス會(huì)社を設(shè)立。その後、クロネコヤマトの海外引越代理店として物流事業(yè)を立ち上げる?，F(xiàn)在は中國(guó)での會(huì)社経営経験を生かし、中國(guó)に積極展開しようとしている日本企業(yè)の社員を?qū)澫螭恕⒅v演、助言などのサポート活動(dòng)を行う。著書に「起業(yè)するなら中國(guó)へ行こう！」（PHP新書）。