前回のコラムで觸れた中國の「新シルクロード経済ベルト」に関して、もう少し詳細(xì)にご紹介するとともに、それがなぜウィグル族弾圧へとつながるのかを見てみよう。

【その他の寫真】

◆「新シルクロード経済ベルト」構(gòu)想とは

　1991年12月に舊ソ連が崩壊すると、ソ連邦の中に組み込まれていた「カザフスタン、キルギス、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタン」が分離獨(dú)立して中央アジア5カ國となった。舊ソ連と対立していた中國は、1992年になると直ちに中央アジア5カ國と國交を樹立。以來、貿(mào)易を始めとした様々な交流を深めるようになる。

まず2001年に「中國、ロシア、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、ウズベキスタン」の6カ國による多國間協(xié)力組織である「上海協(xié)力機(jī)構(gòu)」を設(shè)立し、その後「國際テロ、民族分離主義、宗教過激主義」への共同対処を決定（トルクメニスタンは中立を宣言し客員參加に留めている）。

この6カ國の中で圧倒的に経済を牽引しているのは中國だ。ロシアは別としても、中央アジア5カ國は何としても中國を頼りに経済的に這い上がりたいと思っている。というのも、中央アジアは、西側(cè)のEU経済圏と勢(shì)いを増す東側(cè)のアジア太平洋経済圏の狹間で、「経済窪地」になっていたからだ。

　一方この中央アジア5カ國には、中國が喉から手が出るほど欲しい石油、天然ガス、レアメタルなどの地下資源が豊富に眠っている。まだ開発途上であるということはすなわち無限の潛在力を持っていることを意味する。ここは世界で最も高いポテンシャルを持つ黃金の経済ベルトと中國は睨んだ。

誰がいち早くこの地に手を著けるか。中國は作戦に出た。

2004年7月に中國石油天然ガス勘探開発公司（CNODC）とカザフスタン國家石油運(yùn)輸株式會(huì)社（KTO）が共同で「中哈管道有限責(zé)任公司」（KCP）を設(shè)立して、全長2798キロのパイプラインを敷設(shè)し、年間2000萬トンの原油輸送を可能にした（哈＝カザフスタン）。2006年5月に開通?！∈键c(diǎn)はカザフスタンのアタスで、終點(diǎn)は新疆ウィグル自治區(qū)のイリ?カザフ自治州にある阿拉山口（アラサンコウ）だ。今では年間5000萬トンの原油を輸送している。

またトルクメニスタンなどからは天然ガスのパイプラインを敷設(shè)し、2009年末から2013年8月までに累計(jì)600億立方メートルの天然ガスを輸送している。これは中國の2010年の総生産量の半分に匹敵する。巨大中継點(diǎn)は新疆ウィグル自治區(qū)のコルゴス。全長1833km、年間輸送量300億立方メートルに及ぶ。

中國國內(nèi)ではウィグルを起點(diǎn)として上海や広東省など、電力消費(fèi)の最も多い東海岸に送られ、経済活動(dòng)を支えている。

今年9月3日から13日にかけた習(xí)近平の中央アジア諸國訪問では、道路建設(shè)を含め投資提攜額は500億ドルに上るという。カザフスタンとは2015年までに貿(mào)易額を400億ドルに、トルクメニスタンとは天然ガス輸送量を今年中に550億立方メートルにまで引き上げる締結(jié)を交わした。

◆経済が発展すればするほどウィグル族が虐げられる構(gòu)図

　これらを可能にするために新疆ウィグル自治區(qū)にはカシュガル経済特區(qū)やイリ?カザフ自治州経済特區(qū)など、経済開発特區(qū)が設(shè)置されている。それによりウィグル族が幸せになったかというと、まったく逆だ。

　たとえば漢民族が投資して現(xiàn)地入りした開発企業(yè)が社員を公募する場(chǎng)合、まず中國語（漢族）を話せなければ採用されない。ところが改革開放前に育ったウィグル族は、ウィグル語しか話せない者が多い。だからウィグル族は失業(yè)率が高いし、就職できても賃金が極端に低い。今は漢語で學(xué)校教育を行っているが、それは同時(shí)にウィグル語とウィグル文化の消滅を招く。

　また2001年に起きたアメリカの9?11同時(shí)多発テロ以來、イスラム教徒と聞くと、すぐに「テロ」と結(jié)びつける傾向にある。だから経済特區(qū)に入植してくる漢民族経営者はイスラム教徒を採用したがらない。不平等に対して抗議を表明したり暴動(dòng)を起こしたりすると、たちまち逮捕されたり、時(shí)には慘殺されたりする。

そういう弾圧から逃げようと隣接する中央アジア諸國に亡命すると、そこで待っているのは當(dāng)該國による中國政府への通報(bào)だ。なぜなら上海協(xié)力機(jī)構(gòu)加盟國は「テロ、民族分離、宗教過激主義」に関して互いに協(xié)力し合うことを約束しているからだ。こうして中國が新シルクロード経済ベルトを強(qiáng)化すればするほど、ウィグル自治區(qū)にいるウィグル人は行き場(chǎng)を失うのである。

　これがウィグル自治區(qū)の経済が発展すればするほどウィグル人が虐げられる構(gòu)図だ。

◆政府に対する抗議行動(dòng)を「テロ」と斷定する中國の意図

　宗教に関しても憲法ではその自由が謳われているものの、実際は制限が多い。たとえば18歳未満の者や學(xué)生などはモスクに立ち入ることが禁止されているので、イスラム教を教える地下學(xué)校に通うしかないが、見つかれば違法行為として逮捕される。子供といえども容赦はしない。

　また懐妊可能な年齢の女性の一部を中國の東海岸に移住させてウィグル自治區(qū)におけるウィグル族が増えるのを防ごうともしている。どちらを向いても行き場(chǎng)がないのである。

　もちろん漢民族の黨幹部におもねって昇進(jìn)していく者もいる。その結(jié)果內(nèi)部差別も生じてくる?？棺h運(yùn)動(dòng)が起きない方がおかしい。

中國政府がこの抗議行動(dòng)を「テロ」と位置付けるのは、新シルクロード経済ベルトを形成する中央アジア5カ國が主としてイスラム教の國だからである?！弗匹怼工蛉·昃啢盲皮い毪韦扦ⅳ盲啤Qしてイスラム教徒を弾圧しているのではないという形を取りたい。

　しかしそれでイスラム教徒の反感を抑えることができるのだろうか？

　ウィグルが獨(dú)立すれば中國は崩壊する。だからいかなる手段を採ってでも中國がそれを阻止するのは確かだ。

　イソップ物語ではないが、中國はこうして「北風(fēng)」を続けるのか、それとも「太陽」になる勇気を持ち得るのか。北風(fēng)でいる限り、悪のスパイラルと報(bào)復(fù)の連鎖から抜け出すことはないだろう。

（＜遠(yuǎn)藤譽(yù)が斬る＞第7回）

遠(yuǎn)藤譽(yù)（えんどう?ほまれ）

筑波大學(xué)名譽(yù)教授、東京福祉大學(xué)國際交流センター長。1941年に中國で生まれ、53年、日本帰國。著書に『ネット大國中國―言論をめぐる攻防』『チャイナ?ナイン―中國を動(dòng) かす9人の男たち』『チャイナ?ジャッジ毛沢東になれなかった男』『チャイナ?ギャップ―噛み合わない日中の歯車』、『●（上下を縦に重ねる）子（チャーズ）―中國建國の殘火』『完全解読「中國外交戦略」の狙い』など多數(shù)。