今回は3月3日に北朝鮮の「ウリミンジョクキリ」＝「わが民族同士」という黨の機(jī)関紙で「青瓦臺(tái)の低能な思考方式に驚愕する」というタイトルの金與正（キム?ヨジョン）の談話として掲載された?jī)?nèi)容をそのまま日本語(yǔ)に翻訳してお送りする。

金與正は最近、黨の宣伝先導(dǎo)部から「組織指導(dǎo)部」という黨一番の中樞部に人事になり、そこの第1副部長(zhǎng)の地位についた。第1副部長(zhǎng)とはいうけれど実質(zhì)上はその部署のトップである。部長(zhǎng)は金正恩でその次という位置だから。

北朝鮮は今內(nèi)部で大きく何かが動(dòng)いているようだ。具體的にはわからないけれども、大きな変化のあることは確かのようだ。そんなことも含めて、わかる範(fàn)囲でのコメントを、また別の號(hào)でお送りしたい。

「青瓦臺(tái)の低能な思考方式に驚愕する」

火におどろくと焚き火を見(jiàn)るだけで驚くということばがある。7日（北で）行われた人民軍前線砲兵たちの火力戦闘訓(xùn)練に対する南朝鮮大統(tǒng)領(lǐng)府（青瓦臺(tái)）の反応がそうだ。我々は誰(shuí)かを脅すための訓(xùn)練をしたのではない。國(guó)の防衛(wèi)のために存在する軍隊(duì)が訓(xùn)練するというのは當(dāng)然の業(yè)であり自衛(wèi)的行動(dòng)である。

ところが韓國(guó)の青瓦臺(tái)から「強(qiáng)い遺憾」だの「中斷要求」だのといった聲が聞こえてくるのは、我々としては実に不可思議である。あまりにも僭越なる振る舞いだ。もっとも、大統(tǒng)領(lǐng)府や國(guó)防部が留守番電話のようにいつも暗記し繰り返される聲ではあるけれど。他人の家で、訓(xùn)練しようが休息しようが何の関係があるというのか。なんで言うべき言葉と言ってはいけない言葉を區(qū)別することなく吐きすてるように言うのか。

私（金與正）は、韓國(guó)側(cè)も合同軍事演習(xí)をかなり楽しむ方だと承知しており、先端軍事裝備の購(gòu)入にも熱を上げるなど見(jiàn)苦しい遊びをしていると聞いている。隠れかくれ密かに引きまわしている先端戦闘機(jī)が、いつでも我々（＝北）を攻撃しようという目的があるのだろうし、まさかそれらで農(nóng)薬をまこうと準(zhǔn)備してるわけではないだろう。

3月に強(qiáng)行しようとした合同軍事演習(xí)も南朝鮮に蔓延している新型コロナウイルスが延期させたものであり、平和とか和解とか協(xié)力といったことになんの関心もない大統(tǒng)領(lǐng)府の住人たちの決心によるものでないということは、世の中のみんなが知っている事実だ。

我々が韓國(guó)側(cè)に、そんなにやりたい合同軍事演習(xí)遊びを朝鮮半島の緊張緩和の努力に役立たないからとして中止するよう要求するなら、大統(tǒng)領(lǐng)府はどう答えるというのか。戦爭(zhēng)練習(xí)遊びにあれほど熱中する人々が、他人の家で軍事訓(xùn)練をすることに対してあれこれ言うのはそれこそ「盜人猛々しい」にもほどがある。

要するに、南は軍事的に準(zhǔn)備されなければならず、私たち（北）は軍事訓(xùn)練をするなという話だが、このような強(qiáng)引な主張をする人を誰(shuí)が正常な相手と言うだろうか。大統(tǒng)領(lǐng)府のこのような非論理的な主張と言動(dòng)は、個(gè)別的な誰(shuí)かはさておき、韓國(guó)側(cè)全體に対する我々の不信と憎悪、軽蔑だけを増幅させるだけだ。我々は軍事演習(xí)をしなければならず「お前たちはしてはならない」という論理に帰著する大統(tǒng)領(lǐng)府の非論理的で低能な思考に、強(qiáng)い遺憾を表明するものである。

心はひどく傷つくかもしれないが我々（北）としては大統(tǒng)領(lǐng)府の行動(dòng)が、3歳の赤ちゃんとたいして違っては見(jiàn)えない。強(qiáng)引で意地を張ることが好きなところを見(jiàn)ると、まるで米國(guó)にそっくりだ。「同族」よりも「同盟」を重視してくっついてきているのだから、似ていくのは當(dāng)然のことだが。我々と対立するなら、強(qiáng)引な姿勢(shì)ではなくもっと勇敢で正々堂々と立ち向かうことはできないのか。本當(dāng)に遺憾で失望させられるが、大統(tǒng)領(lǐng)の直接的な立場(chǎng)表明でなかったことだけは幸いなことと思ってはいる。どうして吐き出す一言一言、言い草の一つ一つがそんなにも具體的かつ完璧に馬鹿なのか。本當(dāng)にすまない比喩だが、「怯える犬がもっと吠える」という話がある。ちょうど誰(shuí)かさんのようにね…。

ここまでの內(nèi)容。2018年2月の平昌オリンピックの時(shí)の金與正がこんな激烈なことを言うのか。そう思われた方も多いだろう。あのときの金與正は、女らしい優(yōu)しささえ放射していたのに。しかし事実はそうなのだ。

いろいろの部分でおもしろいというか、笑わせる文章があるけれど、たとえば「どうして吐き出す一言一言、言い草の一つ一つがそんなにも具體的かつ完璧に馬鹿なのか」なんていう部分はどうだろう。すごいというしかない。

最後の「『怯える犬がもっと吠える』という話がある。ちょうど誰(shuí)かさんのようにね…」という部分も笑わせる。誰(shuí)かさんって、誰(shuí)なの？トランプ？それとも文在寅（ムンジェイン）？わからない。歴史にも殘るだろうこういった談話文に、「誰(shuí)かさんのようにね」なんていう表現(xiàn)を使うのか。內(nèi)容は過(guò)激だけれど、表現(xiàn)は隨所隨所、稚拙さが目立つ。

この談話の翌日、金正恩から「心のこもった暖かい親書(shū)」が韓國(guó)?青瓦臺(tái)に送られてきたという。いったいどうなっているのか。わかる範(fàn)囲になるけれどこのあたりについては、また別の號(hào)で書(shū)いてみたい。

■筆者プロフィール：木口 政樹(shù)

イザベラ?バードが理想郷と呼んだ山形県?米沢市出身。1988年渡韓し慶州の女性と結(jié)婚。元三星（サムスン）人力開(kāi)発院日本語(yǔ)科教授、元白石大學(xué)校教授。趣味はサッカーボールのリフティング、クラシックギター、山歩きなど。著書(shū)に『おしょうしな韓國(guó)』、『アンニョンお隣さん』など。まぐまぐ大賞2016でコラム部門(mén)4位に選ばれた。

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