2013年11月13日、韓國(guó)の臺(tái)灣鯛バッシングをきっかけとして、臺(tái)灣で韓國(guó)に対する抗議が広がっている。韓流ドラマ?ボイコットを呼び掛ける議員も出現(xiàn)するなど、単なる抗議というよりもいわゆる「嫌韓」の様相を呈している印象だ。

【その他の寫真】

▼臺(tái)灣鯛は淡水で育つ？！

問題となったのは韓國(guó)テレビ局チャンネルAが2013年10月25日に放映した番組「食品XファイルA」。

韓國(guó)に輸入されている臺(tái)灣鯛が、

?タイといえば海水魚なのに臺(tái)灣鯛は淡水で養(yǎng)殖されている。つまりタイではない。

?きわめて劣悪な環(huán)境で養(yǎng)殖されている。近くに養(yǎng)豚場(chǎng)もあった。

?養(yǎng)殖場(chǎng)の近くでブタ用抗生物質(zhì)の空き瓶が捨ててあった。魚に投與されているのでは。

と批判している。

▼臺(tái)灣鯛はタイではない

確かに「淡水でタイを養(yǎng)殖」というのは驚かされる話。だが、ふたを開けてみればたいした話ではない。というのも臺(tái)灣鯛はタイではなく、品種改良したティラピアなのだ。ティラピアは肉質(zhì)がタイと似ており、日本でもイズミダイ、チカダイという名稱で流通していたこともあった。

ティラピアはシクリッド科に屬するが、シクリッド科のことを臺(tái)灣では「慈鯛科」と言うらしい。なので臺(tái)灣鯛という名稱には問題がないというのが臺(tái)灣側(cè)の主張だ。やや強(qiáng)弁にも思えるが、臺(tái)灣行政院農(nóng)業(yè)委員會(huì)のサイトでは「庶民の魚―ティラピア（臺(tái)灣鯛）」という、誤解の起きないタイトルで紹介している。

もっとも韓國(guó)の消費(fèi)者はそうは思っていなかったようだ。韓國(guó)向けの臺(tái)灣鯛輸出は刺身用切り身が中心。代用魚と明記せずにタイとして提供していたケースもあるという。

ちなみに臺(tái)灣鯛＝ティラピアということを知らなかったのは韓國(guó)人だけではない。中國(guó)本土のメディア?海峽都市報(bào)はこのニュースを報(bào)じる際に臺(tái)灣鯛＝マダイとして解説している。ティラピアは中國(guó)本土では羅非魚という名稱で流通しており、よもや臺(tái)灣鯛と同一品種だとは想像できなかったのではないか。

▼韓流ドラマ、韓流スターをボイコットだ？！

臺(tái)灣の報(bào)道によると、番組は韓國(guó)で大きな反響を呼び、10月26日以降、コンテナ15個(gè)分もの臺(tái)灣鯛の輸入が差し止められたという。臺(tái)灣鯛の価格も急落した。

事態(tài)を受け、養(yǎng)殖関係者ばかりか政府も抗議したが、チャンネルAは韓國(guó)國(guó)內(nèi)の悪徳業(yè)者を批判するのが主な目的だったと弁明し正式には謝罪していない。しかし東森ニュースは番組で映し出された「汚い養(yǎng)殖池」の場(chǎng)所を突き止め、現(xiàn)在は使用されていない養(yǎng)殖池を撮影していると批判した。また臺(tái)灣鯛は厳格な検査を受けており、品質(zhì)は認(rèn)められているとも反論している。

養(yǎng)殖関係者の抗議運(yùn)動(dòng)には「臺(tái)灣製品ボイコットを！」とのプラカードも見られたが、そこに追い打ちをかけたのが嘉義市の張秀華議員。「韓國(guó)製品、韓流ドラマ、韓流スター、韓國(guó)旅行」の四つのボイコットを唱えている。ケーブルテレビが発達(dá)し多チャンネル時(shí)代を迎えた臺(tái)灣では、安価で話數(shù)が多くそこそこ人気がある韓流ドラマはテレビ局にとって便利なコンテンツ。韓流ドラマ排斥を訴える聲は數(shù)年前から聞かれるが、いまだにボイコットの候補(bǔ)に上がる人気を保っているようだ。

▼食品安全報(bào)道は売れるネタ、だからこそ慎重さが必要

食品安全は引きの強(qiáng)いネタである。なんだかんだ言っても他國(guó)の政治問題よりも身近な食品のほうが気になるのは無理からぬところ。だが世に氾濫する「この食品が危ない」話は根拠が怪しいものが少なくない。

食品安全報(bào)道を読むリテラシーが必要だし、報(bào)道する側(cè)にも他の問題以上の抑制が求められるべきだろう。日本にもどうでもいいような話を針小棒大に報(bào)道する記事が絶えないが、臺(tái)灣メディアの報(bào)道を読む限り、「食品Xファイル」の報(bào)道も「臺(tái)灣鯛はタイじゃないよ」以外にはまともな情報(bào)が入っていないようだ。根拠のない報(bào)道で他人さまの商売のタネを奪うのは大罪と言うしかない。

■筆者プロフィール：高口康太（たかぐち?こうた）

翻訳家、ライター。豊富な中國(guó)経験を活かし、海外の視點(diǎn)ではなく中國(guó)の論理を理解した上でその問題點(diǎn)を浮き上がらせることに定評(píng)がある。獨(dú)自の切り口で中國(guó)と新興國(guó)を読むニュースサイト「KINBRICKS NOW」を運(yùn)営。