新型肺炎のもたらした「宅経済化」は、中國人のオンライン依存をより一層深めた。これまでの傾向に拍車がかかっている。テレワーク、オンライン教育、オンライン問診、無人オペレーション等が、新たな突破口から普及を加速させている。そしてネット通販も変貌を遂げつつある。

■もう1つのネット通販

中國のネット通販は、日本とは異なる進(jìn)化の道を歩んでいる。1．共同購入化、2．生鮮（買菜）化、3．直播（ライブ）化である。防疫體制は、2と3を爆発させた。2は、店舗の有無などさまざまなタイプがあるが、スタイルはどうあれ、この生鮮デリバリーの力により、防疫體制下、都市の秩序は保たれたといってよい。ここでは3のライブ化、中國語で言う「直播電商」を取り上げる。

中國のテレビ番組は基本的につまらない。そのためスマホ時(shí)代となって、ネット動(dòng)畫視聴アプリが急速に発達(dá)した。彼らは正規(guī)の版権を取得し、偽DVDの放逐にも貢獻(xiàn)した。しかし版権には莫大な資金が必要なため、現(xiàn)在はIT巨頭系の「愛奇蕓」「騰訊視頻」「優(yōu)酷」に集約されている。

もう1つの主役は、投稿シェア型ショートビデオである。「抖音（海外名TikTok）」「快手」、それに複合アプリ「小紅書」等だ。これら投稿型は、若者の創(chuàng)作意欲を刺激した。

こうしたネット動(dòng)畫視聴と、ショートビデオ投稿の拡がりを背景として、網(wǎng)紅（インフルエンサーまたはKOL「Key Opinion Leader」）にビジネスが開花した。

■網(wǎng)紅の影響力

化粧品メディアの「聚美麗」は、昨年「中國化粧品KOL社交內(nèi)容営業(yè)調(diào)査報(bào)告」というレポートを提出した。その中に、化粧品會(huì)社がKOL（網(wǎng)紅）を使う場合、どのアプリを利用？という調(diào)査項(xiàng)目がある。それによれば

小紅書…24．1％、Tik Tok…18．3％、微信（Wechat）…14．8％

淘寶直播…13．0％、微博…11．9％、B站…7．8％、快手…7．5％

という順になった。これはそのまま中國ネット界の主役たちである。出自は以下の通り。

小紅書…越境Eコマースと口コミの複合アプリ、女性から圧倒的支持。

Tik Tok…短視頻（ショートビデオ）首位、ユーザー數(shù)4億突破。

微信（Wechat）…テンセントの國民的SNS、ユーザー數(shù)11億以上。

淘寶直播…ネット通販?zhǔn)孜弧?a target='_blank' href='http://www.wenhuatang.com/search.php?filter=アリババ'>アリババのライブプラットフォーム。

微博…ミニブログまたは中國版ツイッターと呼ばれるSNS。

B站…若者に人気の動(dòng)畫共有サイト

快手…短視頻2位、ユーザー數(shù)3億突破。

出自の異なるさまざまなアプリで、網(wǎng)紅たちのパフォーマンスが繰り広げられている。どこもやることが同じになってきたのだ。

■網(wǎng)紅の影響力

「淘寶直播達(dá)人総合影響力ランキング」という網(wǎng)紅の分析データがある。

1位 薇婭 viya 1430．8萬（ファン數(shù)以下同じ）

2位 李佳［王奇］ Austin 1686．8萬

3位 張大奕 eve 1157．2萬

4位 雪梨　Cherie 1317．6萬

5位 列兒寶貝 350．7萬

6位 林珊珊 Sunny 924．7萬

7位 陳潔 kiki 271．7萬

8位 恩佳N 134．5萬

9位 柯柯 baby 169．9萬

10位 小僑 Jofay 188．3萬

ファンの數(shù)だけでなく、サービス評(píng)価、內(nèi)容消費(fèi)指數(shù)、商業(yè)転化指數(shù)などを、総合化している。上位の4人は、全國的な知名度を誇るスターだ。

第2位の李佳［王奇］は、化粧品に強(qiáng)く、“口紅キング”という異名をとる、最も有名な男性インフルエンサーだ。2019年10月、いつも彼の製品紹介ライブ中にトラブルが発生した。商品は、焦げ付き防止機(jī)能付きの鍋だったが、パフォーマンスの過程で、卵が何度もこびりついてしまった。たったこれだけのことが、1カ月以上もネット空間を騒がせた。某ネットメディアの“2019年ネット界10大事件”にも選ばれている。

■まとめ

こうした彼らの強(qiáng)い影響力と、生來の商売好きという中國人の持つ屬性が、すべての有力アプリをネット通販に変えつつある、ともいえるだろう。

例えば、ショートビデオの雄、快手は、2011年の設(shè)立、GIF畫像のシェアから始まり、ショート動(dòng)畫シェアへ移行、さらにライブ放送の「快手直播」ネット通販の「快手電商」「快手小店」の展開と、次々にプラットフォームを拡充していった。

一方ネット通販大手は、アリババの「淘寶直播」、京東の「京東直播」に加え、拼多多も「多多直播」をスタートさせた。高速大容量の5Gは、動(dòng)畫の世界といって間違いない。今後あらゆるプラットフォームが動(dòng)畫を配信し、セールスに勵(lì)むのだろう。日本の通販サイトは舊態(tài)依然に見えてしまうが、多少は変わるのだろうか。

■筆者プロフィール：高野悠介

1956年生まれ、早稲田大學(xué)教育學(xué)部卒。ユニー株（現(xiàn)パンパシフィック）青島事務(wù)所長、上海事務(wù)所長を歴任、中國貿(mào)易の経験は四半世紀(jì)以上?，F(xiàn)在は中國人妻と愛知県駐在。最先端のOMO、共同購入、ライブEコマースなど、中國最新のB2Cビジネスと中國人家族について、ディ－プな情報(bào)を提供。著書：2001年「繊維王國上?！箹|京図書出版會(huì)、2004年「新?繊維王國青島」東京図書出版會(huì)、2007年「中國の人々の中で」新風(fēng)舎、2014年「中國の一族の中で」Amazon Kindle。