4月下旬、中國各地で學校再開のニュースが世を賑わせた。同時に経済、金融の重要ニュースも駆け巡った。ブロックチェーンとデジタル人民元である。いずれも中國と世界のアフター?コロナに、大きな影響を與える內(nèi)容を含む。一般の日本人は、どのように理解すればよいのだろうか。まずブロックチェーンから見て行こう。

■國家の動向－BSN

2019年10月、習近平主席は、ブロックチェーン技術(shù)開発を推進する発言を行った。ブロックチェーンとは、管理者不要の分散型トランザクション処理システムだ。中央集権の中國政府が、なぜその研究を促すのか。それは構(gòu)想、BSN（Block-chain-based Service Network）があるからだ。ブロックチェーンの典型は暗號資産だが、金融、不動産業(yè)界、サプライチェーン、トレーサビリティ、行政など応用範囲は拡い。これらを根こそぎまとめてしまおうというのである。

BSNは2018年8月、國家情報センターと北京大學、大連理工大學が設(shè)立した“ブロックチェーン技術(shù)応用実験室”に始まる。スマートシティとデジタル経済の実現(xiàn)に向け、現(xiàn)実的なソリューションを提供しようという構(gòu)想だ。2019年10月、內(nèi)部テストを開始する。電信キャリアの中國移動や、銀聯(lián)カード等の企業(yè)が參加し、400社、600人の開発者に無償版を提供した。そして當初予定の通り2020年4月から、商用提供を開始したのだ。

■民間の動向、投資は量から質(zhì)へ

民間の動きを見てみよう。IT巨頭テンセント創(chuàng)業(yè)者?馬化騰は「ブロックチェーンとは、生産要素としてのデータをより合理的に共有し、かつ分配可能にする技術(shù)だ。そのデジタル変革はあらゆる業(yè)界?業(yè)種に革新とひらめきをもたらす。一方、同技術(shù)はまだ発展途上で、解決すべき、挑戦すべき課題は多い」と述べている。

4月中旬、IPRdailyの「2019年世界ブロックチェーン特許ランキング」が発表された。首位はアリババ2314件、2位テンセント1296件、4位中國平安765件、6位微衆(zhòng)銀行396件と中國勢ばかりである。6位の微衆(zhòng)銀行はテンセント系ネットバンクだ。アリババとテンセントはダントツだ。

一方、投資はすでに調(diào)整期に入っている。2019年、中國のブロックチェーン投資は244億元（3700億円）、前年比40．8％減少した。投資傾向は初期投資から、買収合併、戦略投資へ向かっている。

そして中國では2萬6089社（2020年1月）のブロックチェーン企業(yè)が登録されている。その46％は資本金5000元以下の小企業(yè)で、未だに新規(guī)の設(shè)立も活発だ。しかし、すでに投資家は量より質(zhì)へ向かい、資金集めのハードルは高い。今年の投資動向が注目される。

■世界のブロックチェーンを統(tǒng)括

BSNは、いわばブロックチェーンのプラットフォームだ。企業(yè)や開発者は、BSNに接続すれば、ブロックチェーンベースのアプリケーション開発が容易となる。企業(yè)や公的機関等が、獨自のブロックチェーン環(huán)境を構(gòu)築する場合、年間のコストは10萬元（153萬円）以上かかるとされる。これがBSNを介せば、2000～3000元（3～4．5萬円）ほどで、ブロックチェーン技術(shù)を利用できる。これによって新しいビジネスの成長を促し、ブロックチェーン技術(shù)の発展と普及を図る。

アリババの通販プラットフォームに出店した業(yè)者のようである。アリババに情報が集中するように、BSNに情報が集まるだろう。データセキュリティーは萬全と強調(diào)しているが、実際はどうなるのだろうか。

そんな疑心暗鬼の中、4月25日、商用バージョンと國際バージョンがスタートした。現(xiàn)在國內(nèi)76都市にノード（ネットワーク上の結(jié)節(jié)點）があり、さらに44カ所を建設(shè)中だ。海外にも8つのノードを展開している。

■まとめ

馬化騰の言うとおり、ブロックチェーン技術(shù)はまだ発展途上で課題は多い。BSNはプラットフォームに參加した上で、課題解決を図ればよい、というスタンスだ。とにかく管理者不要の分散型システムのブロックチェーンに、専用のプラットフォームが誕生した。BSNの先行きについて正確に見通せる人は、ほとんどいないだろうが、確かなことは、中國には戦略がある、という一點だ。研究は活発に行われ、民間投資は新しい段階に入っている。アフター?コロナ、中國をめぐる國際関係は厳しさを増す。BSNは順調(diào)に船出できるのだろうか。

■筆者プロフィール：高野悠介

1956年生まれ、早稲田大學教育學部卒。ユニー株（現(xiàn)パンパシフィック）青島事務(wù)所長、上海事務(wù)所長を歴任、中國貿(mào)易の経験は四半世紀以上?，F(xiàn)在は中國人妻と愛知県駐在。最先端のOMO、共同購入、ライブEコマースなど、中國最新のB2Cビジネスと中國人家族について、ディ－プな情報を提供。著書：2001年「繊維王國上?！箹|京図書出版會、2004年「新?繊維王國青島」東京図書出版會、2007年「中國の人々の中で」新風舎、2014年「中國の一族の中で」Amazon Kindle。