<巨竜を探る>中國の狙いは“未來の核融合資源”―「月面開発競爭」で米露を出し抜く!

八牧浩行    2013年12月17日(火) 6時30分

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宇宙開発競爭といえばかつての冷戦時代は米ソ二大國がしのぎを削っていたが、今、中國が主役の座に躍り出ようとしている。月の資源獲得を視野に宇宙権益を確保する狙いがある。寫真は月面に接近する中國探査機(jī)。

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宇宙開発競爭といえばかつての冷戦時代は米ソ二大國がしのぎを削っていたが、今、中國が主役の座に躍り出ようとしている。

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2013年12月15日、中國の月探査機(jī)「嫦娥(じょうが)3號」が月面に軟著陸し、搭載していた無人探査車「玉兎(ぎょくと)號」による活動が始まった。無人探査機(jī)による月面著陸に成功したのは、舊ソ連と米國に続いて世界で3番目。実に37年ぶりである。中國は宇宙開発大國をアピールして國威発揚(yáng)を図るとともに、月の資源獲得を視野に宇宙権益を確保する狙いがある。

探査車は、レーダーや撮影裝置を備えており、約3カ月間、地球からの遠(yuǎn)隔操作で月面を走行しながら月の地形や地質(zhì)構(gòu)造のデータを収集する。4臺のカメラを備え、ロボットアームによる月面掘削も可能という。嫦娥3號は著陸地點で約1年間にわたり、宇宙観測を続ける。

宇宙開発で大きく先行していた米國、ロシア両國は財政難や優(yōu)先順位の変更などで大きく後退。米國の宇宙開発ではNASA(米航空宇宙局)のスペースシャトル計畫はすでに終了しており、スペースX社など民間企業(yè)の比重が増しているのが実情だ。

中國は2020年をめどに有人宇宙ステーション建設(shè)計畫を推進(jìn)。少なくとも國家主導(dǎo)の宇宙開発分野では中國がトップに立つ可能性が大きい。中國がこの間に宇宙開発に費(fèi)やした費(fèi)用は500億元(約8000億円)に達(dá)する。貧困層が依然多い中國では、「宇宙開発事業(yè)に金を使い過ぎだ」との批判がネット世論を中心に飛び交っており、中國の指導(dǎo)者は國民に、宇宙開発への中央政府の巨額の支出を正當(dāng)化する必要に迫られている。

それでも宇宙開発は國家の威信を高揚(yáng)させ、技術(shù)力が向上するとの見方も根強(qiáng)く、「今やらなければ中國は將來、宇宙の支配権を失うことになる」と開発を支持する意見も多い。

中國は今回の探査機(jī)月面著陸に続いて、2020年にも米國に続く有人月面著陸を計畫している。さらに30年以降には長期の有人滯在を可能にする月面基地を建設(shè)する構(gòu)想を立案している。

中國が月面著陸にこだわるのは何故か。核融合反応から未來エネルギーを取得しようという國家計畫を推進(jìn)するためである。

 

現(xiàn)行の原子力発電はウランの核分裂反応を利用したもので、壽命が半永久的な放射性廃棄物を排出し、処理が非常に困難。これに対し月に豊富にあるヘリウム3を使用した核融合反応は、有害な廃棄物をほとんど出さない。もちろん溫室効果ガスの発生もないため、環(huán)境問題が深刻化している中國にとっては理想の未來型エネルギーとなる。

 

地球の上空には磁気圏があり、宇宙線の直接の侵入を防ぎ人體を守っているが、ヘリウム3は磁場に妨げられて、地球上にはほとんど存在しない。核融合爐の技術(shù)はまだ確立されていないが、將來可能となる見通しで、中國政府は2017年までにヘリウムの採取を目指している。このほかウラン、チタンなど、地球では希少な資源が大量に眠っているとされる。

◆未確定の宇宙資源利用ルール

2011年9月に発表された「中國の平和発展」と題された白書は、「中國は人口が多く、基盤がぜい弱で、世界人口の20%に相當(dāng)する國民を世界のわずか7.9%の耕地と6.5%の淡水資源で養(yǎng)っている。経済発展の成果は13億人の國民によって享受されていなければならないはずだが、常に多くの庶民の生存とニーズを満たすような発展は困難を極めている」と指摘。中國はエネルギー源を求め長期的なプロジェクトとして宇宙への進(jìn)出を狙っていることが分かる。

 

宇宙開発の憲法ともいえる「宇宙條約」では、月を含めた天體には領(lǐng)有権を主張できないが、資源の利用についての規(guī)定はあいまいだ。月の資源の所有を禁じた「月協(xié)定」が1984年に発効したが、日本をはじめ、宇宙活動を展開する國々の多くは批準(zhǔn)せず、実効性はない。中國の資源調(diào)査は、月の資源利用のルール作りを主導(dǎo)する意図もあるとみられる。

今後、このままでは月の資源をめぐって激しい奪い合いになるのは必至。中國がその権益を國際ルールができる前に確保しようとする強(qiáng)い意思も見え隠れする。

<「巨竜を探る」その38>

<「巨竜を探る」はジャーナリスト八牧浩行(Record China社長?主筆、元時事通信編集局長)によるコラム記事。著書に「中國危機(jī)―巨大化するチャイナリスクに備えよ」(あさ出版)など>

■筆者プロフィール:八牧浩行

1971年時事通信社入社。 編集局経済部記者、ロンドン特派員、経済部長、常務(wù)取締役編集局長等を歴任。この間、財界、大蔵省、日銀キャップを務(wù)めたほか、歐州、米國、アフリカ、中東、アジア諸國を取材。英國?サッチャー首相、中國?李鵬首相をはじめ多くの首脳と會見。東京都日中友好協(xié)會特任顧問。時事総合研究所客員研究員。著?共著に「中國危機(jī)ー巨大化するチャイナリスクに備えよ」「寡占支配」「外國為替ハンドブック」など。趣味はマラソン(フルマラソン12回完走=東京マラソン4回)、ヴァイオリン演奏。

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