米中の次世代覇権爭(zhēng)いが激化している。これまで経済規(guī)模で中國(guó)が米國(guó)を抜くのは10年後の2030年頃との見(jiàn)方が有力だったが、新型コロナウイリス感染の拡大を受けて、米中の國(guó)內(nèi)総生産（GDP）が急接近。6月に相次いで発表された世界銀行、國(guó)際協(xié)力開発機(jī)構(gòu)（OECD）、國(guó)際通貨基金（IMF）の最新経済予測(cè)を分析すると、米中逆転が早まり中國(guó)が20年代半ばに最大の経済大國(guó)になるとの見(jiàn)方が有力だ。

◆米大統(tǒng)領(lǐng)選至上主義、裏目に

世界銀行のGDP成長(zhǎng)率予測(cè)によると、2020年に米國(guó)がマイナス6．1％、これに対し最初に感染が拡大し経済再開も早かった中國(guó)が1．0%のプラス成長(zhǎng)を確保する（7．1ポイント差）。2021年は中國(guó)が6．9％増。米4．0％増（2．9ポイント差）となる。

OECDの予測(cè)は20年の成長(zhǎng)率は感染が再拡大しない場(chǎng)合で、米國(guó)はマイナス7．3%、中國(guó)はマイナス2．6%と予測(cè)した（4．7ポイント差）。中國(guó)の経済成長(zhǎng)の落ち込みは比較的小さい。もう一つの、世界の感染が再拡大するとの厳しい予測(cè)では、20年の経済成長(zhǎng)率は、米國(guó)がマイナス8．4％、中國(guó)はマイナス3．7％（4．7ポイント差）。米國(guó)では第2次感染の恐れがあり、その場(chǎng)合はマイナス幅がさらに拡大する。21年について、米國(guó)はプラス1．9％、中國(guó)はプラス4．5％（2．6ポイント差）に転じ、この傾向は続くと予想されている。

IMFの20年の予測(cè)では、米國(guó)はマイナス8．0％となり、19年のプラス2．3％から大幅に悪化する。大恐慌後の1932年のマイナス12．9％や、第二次世界大戦直後の46年のマイナス11．6％に迫る景気後退になる。中國(guó)は、プラス1．0％と主要國(guó)で唯一プラスを維持。米中の差は9．0％に拡大する。21年には米國(guó)が4．5％のプラスと好転するが、中國(guó)も8．2％とプラス幅を拡大する（3．7ポイント差）。

コロナ禍前のここ數(shù)年、米國(guó)のGDP成長(zhǎng)率は2～3％、中國(guó)が6％臺(tái)で推移しており、米中の差は3％程度だったが、コロナ後はおおよそ4～9ポイント差になる。米國(guó)の黒人差別反対デモや感染拡大などは織り込まれておらず、差は今後さらに拡大する。

経済規(guī)模は名目GDP成長(zhǎng)率（実質(zhì)GDP成長(zhǎng)率プラスインフレ率）で示される。2018年の名目GDPは米國(guó)が20兆5802億ドル、中國(guó)が13兆3680億ドル。インフレ率は米中共に平均すると2％前後で推移しているので、三つの有力國(guó)際機(jī)関のGDP予測(cè)を勘案すると、名目GDP が逆転するXデーは2025年にも到來(lái)する見(jiàn)通しだ。

◆一帯一路、デジタル人民元、AIで切り込む

中國(guó)のGDPは2014年に、実際の経済力に近い購(gòu)買力平価（PPP）で米國(guó)を追い抜き、世界1位になった。その後も2位米國(guó)との差は開くばかりだ。中國(guó)は14億人の人口パワーを背景に世界最大の消費(fèi)生産市場(chǎng)に発展、自動(dòng)車販売臺(tái)數(shù)は年間約2800萬(wàn)臺(tái)と米國(guó)の約1500萬(wàn)臺(tái)、日本の約500萬(wàn)臺(tái)を大きく凌駕している。パソコン、スマホ、鉄鋼、石化油製品をはじめ大半の品目で世界最大の製造消費(fèi)國(guó)でもある。

習(xí)近平政権は2017年の黨大會(huì)で、2050年までに米國(guó)に並ぶ最強(qiáng)國(guó)になると宣言し、経済インフラやハイテク、軍事増強(qiáng)に巨額の資金を注ぐ。広域経済圏構(gòu)想「一帯一路」構(gòu)想でアジア、アフリカ、南米、中東などの新興國(guó)に影響圏を広げ、サイバーや宇宙でも米國(guó)主導(dǎo)の秩序を切り崩しにかかっている。

國(guó)家目標(biāo)「中國(guó)製造2025」の下、量子コンピューター、AI（人工知能）、バイオ、通信技術(shù)、電気自動(dòng)車、グリーンエネルギーなど幅広い分野で優(yōu)位に立つことを追求。技術(shù)力でも世界のトップクラスに躍り出た。超音速ミサイルを配備するなど、軍事大國(guó)化も推進(jìn)。金融面でも、デジタル人民元を発行して世界通貨をつくり上げようと畫策している。

一方、米國(guó)は新型コロナウイルスによる感染者が230萬(wàn)人以上に達(dá)し、死者も12萬(wàn)人を突破。早すぎる経済再開によりパンデミック第2波の危機(jī)に直面している。失業(yè)率がかつてない水準(zhǔn)に達(dá)し、無(wú)保険で醫(yī)療費(fèi)を賄えない者と、高額の報(bào)酬を得る者が併存し、人種差別と所得格差は、都市部での暴動(dòng)を誘発し混迷が続く。アリゾナ、テキサス、フロリダ、カリフォルニアなど多くの州で新規(guī)感染者數(shù)が過(guò)去最大となり、入院者が急増している。トランプ大統(tǒng)領(lǐng)は11月の大統(tǒng)領(lǐng)選勝利を至上命題に短期的な対策を講じるが、戦略に欠けほとんどが裏目に出ている。

◆対中デップリング策、掛け聲倒れ

トランプ政権肝いりの対中デップリング（引き離し）策も掛け聲倒れだ。かえって米産業(yè)金融界やグローバル企業(yè)の収益にダメージを與え、景気の足を引っ張っている。EUは米國(guó)より穏健な路線を目指し、獨(dú)仏伊や東歐諸國(guó)などは中國(guó)との経済関係を重視している。ドイツの通信大手?ドイツテレコムは最近、中國(guó)ファーウェイ（華為技術(shù)）などと第5世代移動(dòng)通信システム（5G）に関する契約を締結(jié)した。さらにファーウェイは英國(guó)に研究?製造拠點(diǎn)を建設(shè)すると発表。10億ポンド（約1300億円）を投入するという。

新型コロナの感染拡大の勢(shì)いはすぐに止まりそうもない。中國(guó)でも北京の市場(chǎng)を中心に感染者が続出しているが、管理が厳格な中國(guó)に比べれば、米國(guó)のリスクが高いのは明らか。新型コロナウイルスによるダメージは、米國(guó)の方が數(shù)段大きい。実際、米國(guó)ブルッキングス研究所が6月に分析したコロナ被害によるGDP損失額を人口対比で見(jiàn)ると、米國(guó)は中國(guó)より甚大である。新型コロナウイルスのパンデミック（世界的大流行）により、世界のパワーバランスが変化するのは避けられない。

2012年に世界銀行と中國(guó)國(guó)家発展改革委員會(huì)がまとめた共同研究報(bào)告書『中國(guó)2030―近代的で調(diào)和のある生き生きした高所得社會(huì)の構(gòu)築』は、「最も重要な地球的メガトレンドは中國(guó)の臺(tái)頭であり、今後の20年間、中國(guó)以外の他のいかなる國(guó)も世界経済に大きな影響力を與える準(zhǔn)備はできていない。世界最大の経済力を誇る國(guó)として米國(guó)を追い抜くだろう」と2030年初頭の米中逆転を予測(cè)した。この長(zhǎng)期シナリオが早まるのは確実。日本としても早い段階から戦略的に対応していく必要があろう。（八牧浩行）