「中國(guó)発のこの1冊(cè)」シリーズの第1弾として『素筆珠山』をご紹介しよう。日本でもよく知られる「陶磁器の街」の景徳鎮(zhèn)を紹介する1冊(cè)だ。どのような歴史的経緯をたどって現(xiàn)在に至ったのか。どのような姿勢(shì)で作品作りに取り組んできたのか。陶工が成し遂げた「?jìng)I(yè)」と現(xiàn)代に伝えられる「息吹き」とは……。本書をひもとけば、歴史ある景徳鎮(zhèn)の街をつぶさに歩いて回る気分にも浸れるはずだ。以下、版元の許諾を得て、本書の一部の日本語(yǔ)訳を掲載する。

----------

景徳鎮(zhèn)は世界的な陶磁器の都だ。この街に行けば、どの場(chǎng)所からも「龍」の姿を目にすることになる。市街中心部の珠山の頂上に「龍珠閣」という建物があるのだ。龍珠閣は1922年までに荒れ果ててしまっていたが、1949年に宿泊施設(shè)として利用されるようになった。そして1987年には明代の建築を模した建物として生まれ変わった。現(xiàn)在の正式名稱は「景徳鎮(zhèn)官窯博物館」だ。

龍珠閣で陳列されている器は、いずれも石膏を用いて破片を修復(fù)したものだ。官窯で制作される磁器は皇室専用であり、品質(zhì)管理が厳格だった。わずかな瑕疵があっても、打ち砕かれる運(yùn)命が待っている。膨大な資源があった古い時(shí)代の中國(guó)にとって、このような方式は皇室の豪華さと威厳の象徴だった。

しかしこの方式は同時(shí)に、景徳鎮(zhèn)の人々にとって、たゆむことなく完全さを追い求める審美の習(xí)慣を育む要因になった?，F(xiàn)在に至っても、窯を開いて取り出したばかりの作品を一つひとつ點(diǎn)検し、少しでも問(wèn)題があればただちに打ち砕いてしまう職人の姿を見ることができる。だが、不完全な美を受け入れないということは、巨大な浪費(fèi)と制約に直面することでもある。

デザイナーである私の友人は、不完全であるとして砕かれた器を低価格で販売することにした。砕かれた器の日用品としての価値を掘り起こしたわけだ。この種の方法は、浪費(fèi)を減少させるとして、多くの人の賛同を得た。

龍珠閣で陳列されている官窯で制作された「正統(tǒng)青花龍紋大缸」は景徳鎮(zhèn)の地下にあった。このような「青花龍紋大缸」の破片は、まるで山のように存在する?！该魇贰工斡涊dによれば、當(dāng)時(shí)の皇宮では防火のために日常的に、このような「龍紋大缸」に水を入れて配置していた。

そのために、景徳鎮(zhèn)の珠山には「龍紋大缸」を?qū)熼Tに制作する官窯が32カ所あり、後には徐々に減らされて16カ所になった。「龍紋大缸」の製造が困難であることは言うまでもない。あまりにも巨大であるため造形が困難であり、その後の作業(yè)でも変形や彩色の変化など、制御不能な要因は実に多い。最終的な成功率は5％前後だ。今に殘されている「龍紋大缸」にも、真に完全無(wú)欠と言えるものはほとんどない。

現(xiàn)存する「龍紋大缸」は多くの場(chǎng)合、博物館で陳列されている。ガラス越しに見ることはできるが、陶磁器には茶葉と似た面があり、実際に手で觸れることで初めて、その微妙さを體得できる。しかし、実際に手で觸れることは博物館の規(guī)則で禁止されている。そこで一人のコレクターが、何年もかけて「龍紋大缸」の破片を収集し、長(zhǎng)い時(shí)間をかけてつなぎ合わせて修復(fù)することで、完璧な「正統(tǒng)青花龍紋缸」を作り上げた。

彼は2018年に、修復(fù)が完成した「正統(tǒng)青花龍紋缸」を、5月18日の國(guó)際博物館の日を選んで景徳鎮(zhèn)中國(guó)陶磁博物館に寄贈(zèng)した。寄贈(zèng)にあたっての唯一の要求は、この「正統(tǒng)青花龍紋缸」の陳列ではガラス壁を用いずに、見學(xué)者が觸れることで表面の質(zhì)感やつなぎ合わせた部分の感觸を確認(rèn)できるようにすることだった。

【DATA】

書名：『素筆珠山』（江蘇鳳凰美術(shù)出版社 2020年2月）

著者：劉［女朱］● （●はさんずいに瑩）/ 挿絵：宿利群

プロフィール

?劉［女朱］●：雑誌「三聯(lián)生活週刊」のコラムニストとして活躍。茶文化など関連する著作や活動(dòng)も多い。

?宿利群：北京市で1961年2月に生まれる。一族は遼寧省瀋陽(yáng)の出身。環(huán)境蕓術(shù)デザインなどを手掛ける。清華大學(xué)が設(shè)立した北京清尚建築設(shè)計(jì)研究院（清華工美）で高級(jí)エンジニアを務(wù)める一方、その他の蕓術(shù)活動(dòng)に取り組んでいる。（翻訳?編集/如月隼人）