<コラム>アフターコロナ時代の日中ビジネス(1)「2か月遅れの全人代で示された政策」

松野豊    2020年7月8日(水) 12時40分

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年初から猛威を振るった新型コロナウイルスの感染拡大で開催が遅れていた中國の國會に相當(dāng)する全人代が5月28日、例年より約2か月遅れでようやく終了した。寫真は人民大會堂。

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年初から猛威を振るった新型コロナウイルスの感染拡大で開催が遅れていた中國の國會に相當(dāng)する全人代(全國人民代表大會)が2020年5月28日、例年より約2か月遅れでようやく終了した。

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今回の會議は、新型コロナ感染で世界経済の情勢が大きく変化したため、中國がアフターコロナを見據(jù)えてどのような政策を打ち出すかに注目してみた。

日本のメディアの報道で強(qiáng)調(diào)されていたのは、GDP成長率の數(shù)値目標(biāo)が示されなかったことである。しかし筆者が「政府工作報告」や関連の記者會見などを見た限りでは、基本的な経済?産業(yè)政策は従來からのものと大きくは変わってはいない。

中國の経済政策は、これまで全人代前年の12月に開催される「中國経済工作會議」で概ね方向性が決められてきた。コロナ問題発生前の昨年12月の當(dāng)會議では、今年が中國の國家目標(biāo)である「小康社會完成」の目標(biāo)年であることと、第13次五か年計(jì)畫の最終年であることが強(qiáng)調(diào)され、そのために設(shè)定されてきた経済?社會の目標(biāo)値をクリアしなければならないと示されていた。

今世界の経済環(huán)境は大きく変化したが、今回の全人代でもこれらの目標(biāo)は同じ扱いだ。GDP成長率の數(shù)値目標(biāo)が示されなかったのは、小康社會完成の定量的指標(biāo)とされてきた「2020年のGDPを2010年から倍増させる(當(dāng)初は國民所得の倍増)」という目標(biāo)が達(dá)成できない可能性が高くなったからであろう。

GDPについては、全人代の記者會見で財(cái)政科學(xué)院長が「財(cái)政赤字の対GDP比率から逆算すると、名目成長率5.4%前後、実質(zhì)成長率2~3%と推測される」と述べている(在中國日本大使館経済部「中國経済週報」)。要するに2~3%成長を目標(biāo)にするということだ。

小康社會完成とみなすために重要な「貧困撲滅」や「社會の安定」については、従來からの政策スローガンである「六つの安定(雇用、金融、対外貿(mào)易、外資、投資、予測)」を?qū)g行するために、今回新たに「六つの保障(雇用、國民生活、市場主體、食糧?エネルギー、産業(yè)?サプライチェーン、行政運(yùn)営基盤)」に注力すると示されている。

もうひとつ政府工作報告で李克強(qiáng)首相が強(qiáng)調(diào)していたのは、「雇用」である。過去から中國政府が最も重視してきたのは、物価と雇用だ。今回も新規(guī)雇用900萬人失業(yè)率6%以下と、こちらは明確な數(shù)値目標(biāo)を定めている。中國語では「就業(yè)」と表現(xiàn)されるこの言葉は、長い両會の歴史上でも最頻度のワードであったのだそうだ。

中國の政策スローガンは、文字?jǐn)?shù)が多くて冗長に感じるだろう。これでも今年は検討時間が充分に取れず、字?jǐn)?shù)は例年の半分だということだ。一般の人は、上記のような政策スローガンを見てもあまりにマクロ的な言い方ので、興味を持てないだろうと思う。

しかし中國の特に政府筋の人たちは、政府文書を穴が開くほど読み込んで、具體的な政策を考える。日中ビジネスに攜わるビジネスマンとしては、スローガンはいいから、具體的に落とし込まれる政策の中身を知りたいと思うだろう。

さてこのコラムでは、最近の全時代や関連會議で提示された中國政府の政策が今後の日中関係にどういう影響を與え、どういう日中ビジネスが有望なのかについて數(shù)回にわたって筆者の考えをお伝えしていく。

筆者がビジネスの観點(diǎn)から今回の全人代で打ち出された政策で注目したのは、以下の3點(diǎn)である。

第一は、米中貿(mào)易摩擦への対応についてである。名指しで具體的な政策は示されていないものの、「市場開放」という言葉が隨所に出てくる。中國は改革開放政策以來、継続的に市場開放を続けてきているが、現(xiàn)在は米國から指弾されている保護(hù)的政策について、外商投資法の改正などで対応していこうとする姿勢が示されている。

第二は、貿(mào)易不均衡問題への対応である。コロナ前までの貿(mào)易政策では、抽象的な表現(xiàn)ながら貿(mào)易の質(zhì)的向上や量的拡大が強(qiáng)調(diào)されてきたが、今回は「収支均衡」、「世界貢獻(xiàn)」、「産業(yè)?サプライチェーンの保持」といったいわゆる守りを固める表現(xiàn)に変わっている。

第三點(diǎn)は、中國経済の成長原動力である資本投資である。中國は近年、景気対策のために公共事業(yè)を拡大させてきたので、いわゆる「限界資本係數(shù)」が顕著に上昇してしまった。これは資本投資効率が低下したことを示している。

そこで政府は今回、「新型基礎(chǔ)設(shè)施建設(shè)(新基建)」と呼ぶ新型インフラ建設(shè)への注力を打ち出した。內(nèi)容は「デジタル経済インフラ」のことである。従來は「戦略性新興産業(yè)」という全方位型の産業(yè)政策であったが、今回はデジタル社會の高度化で新たな経済成長を目指すと明確化した點(diǎn)は注目してよいだろう。

さて、今回中國政府が打ち出した政策の実行で、我々日本企業(yè)にはどのようなビジネスチャンスがもたらされるのであろうか?次回以降のコラムで「産業(yè)構(gòu)造転換」、「新型インフラ建設(shè)」、「サプライチェーン緊密化」、「日中企業(yè)グローバル連攜」の4つの視點(diǎn)から、アフターコロナ時代の日中ビジネスを考えていきたい。

■筆者プロフィール:松野豊

大阪市生まれ。京都大學(xué)大學(xué)院衛(wèi)生工學(xué)課程修了後、1981年野村総合研究所入社。環(huán)境政策研究や企業(yè)の技術(shù)戦略、経営システムのコンサルティングに従事。2002年、同社の中國上海法人を設(shè)立し、05年まで総経理(社長)。07年、北京の清華大學(xué)に同社との共同研究センターを設(shè)立して理事?副センター長。 14年間の中國駐在を終えて18年に帰國、日中産業(yè)研究院を設(shè)立し代表取締役(院長)。清華大學(xué)招請専門家、上海交通大學(xué)客員研究員を兼務(wù)。中國の改革?産業(yè)政策等の研究を行い、日中で講演活動やメディアでの記事執(zhí)筆を行っている。主な著書は、『參考と転換-中日産業(yè)政策比較研究』(清華大學(xué)出版社)、『2020年の中國』(東洋経済新報社)など。

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